軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

プリンセス強襲 ⑪

アレだよね? ルナリアが最初、私を精霊だと思ったと言っていたファンタジーな存在。

でも、エルフ族って、本当にもう居なくなっちゃたのか・・・。見て見たかったな。

エルフ族がもう見られないのなら、精霊だけでも見てみたい。

けれど、お師様は首を振った。

「さあな。精霊を低位の神々と定義している書物も残っているが、今の時代に当時を知る人間は生き残って居ないし、長命な“龍種”なら真実を知っているかもしれんが、私たち、現在の人間にとっては精霊もエルフ族も伝承上の存在に過ぎん」

「・・・ドラゴンのことだよね? ドラゴンって話せるの?」

「人間と言葉を交わす個体も居るらしくてな。過去に“龍種”と遭遇した勇者には、人間と同等な種族として“龍族”と記述を遺している者も居る」

会話できる相手を食べる行為は・・・、ちょっとアレだな。

いや、待てよ?

牛や豚が話せたとして、この私が食べるのを躊躇うだろうか?

見てみたいなあ。ドラゴン。

でっかいんだよね? たぶん。

何年分の食料になるんだろうか。

爬虫類だったらあのヘビみたいに生臭みは有りそうだけど、熟成させたらアミノ酸成分が増えて美味しくなったりしない?

ちょっと涎が出て来ちゃったよ。

亡者系モンスターも居るって聞いたけど、動く死体よりも見たい。

動く骨なんて食べるところが無いしね。

うおおお! ヤバい! 楽しみになってきた!

「・・・ドラゴンに会うことって出来るの?」

目を輝かせる私に、お師様が表情を緩める。

「人類棲息圏から最も近い場所に居るのは、“黒龍山脈”に棲んでいると伝わっている漆黒の龍、“黒龍王”だな。会いに行くことが出来れば会えるだろうさ」

「・・・“黒龍山脈”って、どこに有るの?」

「行きたいのか?」

「・・・行けない?」

子供の夢を聞く表情で、お師様は楽しそうに笑った。

「お前が大陸最強の術師になれば、いつか行けるかも知れんな」

「・・・そんなに行くのが難しい?」

お師様は、こっくりと頷いた。

「王国から、ずっと、ずっと北方。強大なワイバーンやべへモスが跋扈する深い森を、数か月間も掛けて踏み越えた先に有るのが“黒龍山脈”だ。勇王国の勇王が国を興す前に“黒龍王”の討伐を目指して“黒龍山脈”へ向かったが、森を越えられずに逃げ帰ったと聞く」

「・・・勇王よりも強くならないと無理?」

「そうだな。一つの目安にはなるだろう」

「・・・分かった」

そうか。具体的な目標が有る方が、修行に身が入るしね。

今までの私には熊を絶滅させるぐらいしか野望は無かったけれど、私がルナリアと共に在り続けるのなら、いつか対決しなきゃならなくなる可能性はゼロでは無いかもしれない。

だって、こっちの世界では隣国が征服しようと攻め込んでくる侵略戦争は日常の中にある現実的脅威であって、ウォーレス家は常に、その侵略戦争に備えている一族だ。

いくつかの小さな国を挟んで勇王国という脅威も実在していて、夢でも幻でもない。

私たちの脅威になる可能性が有るのだったら、今から討伐目標の一つとして掲げておくのも悪くないな。

「・・・勇王、ね」

どうやって倒そう? 情報が無さ過ぎるな。

日本人だろうが、元・日本人だろうが、関係ない。

私自身が直接的な恨みを持っているわけではないけれど、私の糧となって貰おう。

今後の方針について考えていたら、ルナリアが怪訝そうに私を見ていた。

「ちょっと、フィオレ?」

「・・・なに?」

「なに考えてるの?」

お師様やテレサたちの視線も私に集まっている。

「・・・どうやったら倒せるかなって」

「勇王に挑むつもり?」

「・・・夢は大きく?」

だったっけ? 地球の某覇権国家の超巨大IT企業創業者や大統領も言っていた気がする。

私が首を傾げたら、お師様が、ブッと噴き出した。

レーテさんや騎士様たちは、あんぐりと口を開けて呆れ顔だ。

良いじゃん。

ドラゴン、見たいし。

隙あらば、食べたいし。

「そうね! 私も勇王より強くなるわ!」

「・・・うん。勇王、やっつけよう」

ルナリアって、勇者には敬称付きで敬意を持っているみたいなんだけど、勇王って人だけは敬称無しで、どうやら嫌いっぽいんだよね。

私はルナリアと、ガッシリと握手する。

私たちの握手の上へ、もう一つ、小さな手が重ねられた。

「テレサ?」

「そのお話、わたくしも乗りますわ」

笑っていない目の光のテレサが、ニッコリと一分の隙も無い笑みを浮かべる。

分かっちゃった。テレサも勇王が嫌いなんだ。

普通、勇者って言ったら、正義や力の象徴って感じで憧れたり好まれたりするものだと思っていたけれど、5歳の子供たちが揃って嫌うなんて、何やったの? 勇王。

べルーサー様が、勇王国との小競り合いが有った、って言ってたっけ?

じゃあ、やっぱり私たちの敵だ。

倒し方を考えなきゃいけないから、じっくりと調べて敵の弱点を探らないとね。

こうして5歳女児3人による勇王討伐同盟が、辺境地帯の最前線で密かに結成された。