軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㉜

「・・・ルナリア。弓の真正面に土の壁を作ってくれる?」

「良いけど、何するの?」

お手伝いをお願いしたら、嬉しそうに小鼻を膨らませながらもルナリアに訊き返された。

「・・・ワナの弓を試射するから矢が飛んでいかないように壁が欲しいんだよ」

「分かったわ!」

新しいワナを触ってみたくてウズウズしながら待っているのは丸わかりだったからね。

触らせてあげたいけど、先ずはちゃんと機能するかを確かめる必要が有るからね。

土魔法の練習にもなるし、これで動作確認が終わるまでの間、ルナリアの気分を紛らわせられるだろう。

鈴なりになって興味深そうに見ているピーシスガードの子たちにも声を掛ける。

「・・・弓を引いてくれるかな」

「「「「「はい!」」」」」

押し合いへし合いの場所取り合戦の末、2人で弓を引いて1人が弦に結わえ付けた縄を持ってきてくれた。

ストッパー側の縄の先に付いた小枝を2本の杭の片側に引っ掛けて、トリガー側の縄の先に付いた小枝をもう片側の杭とストッパーの小枝の間で支え棒にする。

元に戻ろうとする弓の張力が、数十キログラムの引っ張り力に変換されてストッパーの小枝に集中する。

弓の弦に引っ張られて飛んで行こうとするストッパーの小枝を押し留めてるのは、トリガーの小枝1本だ。

転がって横へ逃げようとする引っ張り力をギリギリのバランスで中心に維持する。

バランスが崩れないように細心の注意を払いながら、私の傍で固唾を呑んで見守っているピーシスガードの子へ手を差し出す。

「・・・矢を1本くれるかな」

「フィオレ! 出来たわよ!」

用意された矢筒から抜き出された矢を受け取りながら、空いた手でルナリアを手招く。

「・・・こっち来て、ルナリア! ―――、みんなは弓の前を開けて!」

「どうすれば良いの!?」

パタパタと駆けていたルナリアにピーシスガードがら受け取った矢を手渡す。

「・・・この矢を弓の上へ載せて、 筈(はず) を弦に引っ掛けて」

「分かったわ!」

パッと表情を明るくしたルナリアが矢を握りしめてボートラップと向き合う。

「筈」っていうのは矢羽が付いた矢のお尻に刻まれた溝のことで、弦に引っ掛ける部分の名称だよ。

横向きに固定された弓に鏃側を載せるときは多少手荒でも構わないけど、弦はストッパーとダイレクトに繋がっているから手荒に扱われると誤作動してしまう。

だからルナリアの耳元で囁き続ける。

「・・・そーっとだよ。そーっと」

「う、うん・・・!」

注意喚起すれば理解できる子だしルナリアは私の一番弟子だからね。

デリケートな装填作業も無事にやり遂げられる。

「出来たわ! これで良い?」

「・・・じゃあ、試射してみようか」

スタンバイ状態のワナから槍を離れて拾い上げた槍をルナリアに手渡す。

「・・・矢の射線に入らないように作動させてみて」

「宙に浮いた縄を上から叩いても良いのよね?」

槍を手に私を見るルナリアに、ゴー!ゴー! とワナを指し示す。

「・・・やっちゃって、やっちゃって」

「行くわよ!」

両手に長く持った槍でルナリアがトリップワイヤーを軽く叩けば、カンッ! と弓が戻った音が鳴るのとほぼ同時にルナリアが土魔法で作った壁面で矢が跳ねる。

「「「「「おお~」」」」」

「ま! 当然よね!」

ワナの正常作動を見届けた観客の間からペチペチと拍手が上がって、ルナリアが反り返る。

弓から壁までの距離が10メートルほどと短いから壁まで届いたけど、やっぱり弾道軌道になるから着弾点の高さが低くなるね。

射程を伸ばすのに弓は上方へ向けて矢を放つものだし、射程が伸びれば命中率が下がるだけでなく矢の速度が落ちるものだ。

10メートルの距離でこれなら上出来かな。

問題なく動作確認を終えてホッとしていると猟師さんの手が挙がる。

「フィオレ様。槍の場合はどう作るんで?」

「“竹の鞭バンブーウィップ”の作り方は覚えてる? 槍の場合は“バンブーの木”か弾力の有る若木を使って槍の石突きを押すんだよ。トリガーやストッパーは、このボートラップと同じで良いよ」

トリガー部分とバネ部分の構造が分かれば猟師さんたちにも作れるはず、と考えたのだけど、それではまだ説明が足りなかったようで、フムフムと頷いていた頷いた猟師さんたちの間から次の質問が飛んでくる。

「寝かせた槍はどう保持すれば?」

「・・・杭を2本交差させて打ち込めば上に載せられるよ」

そう言えば、本体を固定して矢を飛ばすボートラップと本体そのものを飛ばすスピアーランチャーでは保持方法が違ったね。

完全に私の説明不足だった。

他にも質問が出るかと待ち構えれば、そこで質問は打ち止めになった。