軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㉛

「通り道を制限する方法は、障害物を置いて避けさせるアレですね?」

「・・・今回は両側に土魔法で壁を作って、壁の間にワナを設置するつもり」

質問に答えれば、猟師さんたちが怪訝な顔で首を捻る。

いつもなら獲物を警戒させる人工物を目立つように置いたりはしないからね。

違和感や警戒心を抱かせれば、野生動物というものは近付くのを止めて引き返したり迂回したりでワナに掛かってくれなくなる。

この点に関しては魔獣特有の警戒心の薄さに賭けるしかない。

個体の強さと剥き出しの凶暴性が警戒心を薄くさせるというのなら、強い個体や強い種ほど警戒心が薄いんじゃないかと予想した。

初めて目にすることになる私は“鋼毛熊”なる魔獣の平均的な体格を知らないけど、体長4メートルが小さい個体だとは思わない。

南下すれば南下するほど他の魔獣は小さく弱くなっていくわけだから、自分よりも大きく強い敵が居ないと察して油断していないものかと希望的観測に賭けている部分も有る。

希望的観測に頼らなきゃいけない時点で分の悪い賭けだと思うけど、寄せエサによる油断ブーストで少しぐらいは勝率が上がるんじゃないかと期待してもいる。

獲物の警戒心を高める可能性が高い人工物を障害物に用いる決断をした理由を、猟師さんの一人が推察する。

「壁を作るのは通らせたい経路以外は絶対に通さないため? ―――、違いやすね。獲物を外した矢や槍を回収しやすい形だと継続しやすくなるからですかい?」

さすがはプロの専業猟師さんだ。

必要経費を出来るだけ抑えたいのが理由だと分かってくれた。

他の猟師さんたちやピーシスガードも納得顔で頷いている。

矢も槍も刺さりにくいとか、狙うターゲットが特殊過ぎるんだよ。

「・・・正解。矢も槍も紛失すると勿体ないからね。本当なら木を削って尖らせただけの矢や槍を使いたいところだけど、少しでも刺さりやすいように金属製の鏃や穂先が付いているものを使うつもり」

「そりゃあ回収しないと高く付きやすね」

合意の形成を見て猟師さんたちと笑い合う。

これで認識の共有はできたかな?

「・・・さあ。そろそろ実際に作ってみてコツを掴む作業に取り掛かろうか」

「「「「「へい!」」」」」

返事を返した猟師さんたちが、真っ先に弓と鎗に手を伸ばして弦を引く重さや槍の重量を確かめ始める。

弓を引くための力や槍の重量こそがストッパーに掛かる荷重になるからね。

この荷重を上回るワナ本体の強度が要求されるんだよ。

プロだけ有って肝となる部分をよく理解している。

ピーシスガードの面々も先生役を務めていた猟師さんたちの言動をしっかりと見ている。

「・・・ここに杭を2本打ち込んでくれる? 弓を固定する杭だから、2本の隙間は矢羽根が触れずに通り抜けられる幅で」

「弓は水平に括り付ける、ってことで良いんですかい?」

芝生の地面を指して指示を出すと猟師さんから確認が入る。

「・・・うん。弓を引いた状態を維持しないといけないから、深く打ち込んでね」

「はい!」

頷いて返せば、木槌を握ったピーシスガードが杭を手にした仲間と協力して杭を打ち込み始める。

何のためのものかを伝えれば正答に至るということは、構造を理解するための想像力がしっかりと働いてるということだ。

2本目の杭を打ち込み終わったのを見届けて、平行移動した位置の芝生を指し示す。

「・・・弓から1メテル離れた場所にも杭を2本打ち込んで。こっちの2本は隙間を拳2つ分の幅で、片方の杭が弓を真っ直ぐに引いた位置に来るように合わせて」

「角度は直角ぐらいですね。こっちはトリガーを支える側ですかい?」

私が指示した位置の特徴を捉えて確認してくる猟師さんに頷いて返す。

「・・・そうだよ。弓側と同じだけの力が掛かるから、こっちも深く打ち込んでね」

「はい!」

猟師さんと一緒になって位置を確認し終えたピーシスガードが、カンコンカンコンと木槌を振り下ろして杭を打ち込む。

「・・・縄で弓を据え付けて、どのぐらいの力が必要か確かめてみて」

「据え付ける高さはどのぐらいに?」

「・・・20~30センチメテルで良いよ。あんまり高い位置だと目立つし、低すぎるとトリガーが働かなくなるから」

猟師さんとピーシスガードが協力して弓を杭に括り付ると、弦に手を掛けて弓の強さを確かめ始める。

弓を引くには結構強い力が必要になるからね。

キリキリと弦を引いて手を離すと、カンッ! と硬く甲高い音が鳴る。

猟師さんが私を返り見る。

「爪先を引っ掛けるか踏ん付けるか、でしたね?」

実際に矢を射ったときの射角を想像したのかな?

猟師さんが訊いて来たのは獲物に触れさせる縄―――、トリップワイヤーを張る高さだろう。

「・・・明日は蔓草を使うから今日は縄で代用するんだけどね。トリガーの縄を張る高さは地面ギリギリじゃなければ良いよ。ストッパーが外れてくれないとワナが作動しないだけだから」

「分かりやした」

今は仕掛けの構造と感触を覚えて貰うのが目的だから次へ行こうか。

矢が飛ぶであろう先へ移動して、少しだけズラした位置で芝生を指す。

「・・・この辺りに杭を1本打ち込んでくれるかな。それと、縄も持ってきて」

「はい!」

木槌を担いだ子と杭を担いだ子が指定された位置に深く杭を打ち込んでくれる。

この杭に括り付けた縄がトリップワイヤーだ。

トリップワイヤーの反対側の先端には、ストッパーの杭2本と同じ長さの小枝を取り付ける。

最後に弓を引き絞ったときにストッパーの杭に引っ掛ける縄を弓に弦に結びつけて、そっちの縄の先にも小枝を取り付ける。

これでワナの機構は完成だ。