軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㉚

いくらも待たない内にサーシャさんたちが兵士さんたちを引き連れて戻ってきた。

兵士さんたちはいくつもの木箱を抱えていて、物干し竿に使うには太すぎる竹や木杭の束を担いだ兵士さんも居る。

サーシャさんたちは槍や弓矢を両手で抱えて居たり肩に巻いたロープの束を担いでいたりだ。

私が用意して貰ったものはワナ作りの材料と水鉄砲作りの材料だからね。

あの木箱の中身はバンダースナッチ用のタマネギとお酢だろう。

ちゃんと杭を打ち込むための 木槌(きづち) と杭や竹を切るための 鋸(のこぎり) も持ってきてくれている。

芝生の上に運んできた弓や鎗を並べたサーシャさんが報告に来る。

「お待たせしました」

「・・・ううん。ありがとね」

労いを掛けるとサーシャさんたちがニコリと笑い返してミセラさんの後ろへ下がる。

並べられた材料を確認した猟師さんたちが普段使わないものに注目する。

「弓に槍ですかい」

「・・・本来は対人用のワナなんだけどね。大きな的なら中りやすいと思うから教えるよ。後は水鉄砲の材料だね」

木箱や竹を指した私に注目が移る。

「ミズデッポウということは、バンダースナッチが獲物ですかい?」

「・・・バイコーンとイエーティもだね」

ザワッと空気がざわついて、猟師さんたちだけでなくピーシスガードの間からも息を呑む気配が伝わってくる。

ターゲットの名前を聞いた猟師さんたちが眉間に皺を刻んで表情を険しくした。

深刻な声で私に念押しの確認を入れてくる。

「イエーティが南部の森に?」

「・・・縄張りを主張する痕跡は確認してきたよ」

事態の深刻さは伝わったようだ。

私の答えに、険しい表情のまま猟師さんの一人が首を傾げる。

「すると、バイコーンも?」

「・・・足跡を見付けたけど、南部の大きさじゃなかったよ」

「バンダースナッチがウォーレス領まで南下してくる時点で異常ですからね。今さらっちゃあ今さらですかねぇ」

私が頷いて返すと猟師さんたちが大きな溜息を吐いた。

この数ヶ月間で4桁にも上る魔獣を討伐してきた猟師さんたちは、怖じ気付くこともなく“次”へと思考をシフトさせる。

「どう対応されるんで?」

「・・・バンダースナッチはワナを仕掛ける場所のアタリは付けて来たから、いつも通りだよ。バイコーンは移動経路が特定できないから、一先ずは無視しようと思う」

納得顔で頷いた猟師さんたちが結論に達する。

「すると、イエーティ対策が対人用の罠ですかい」

「・・・そういうこと」

肯定で返せば猟師さんたちは互いに顔を見合わせ頷き合う。

良いね。

危険な仕事になることは理解しただろうに、それでも私の狩猟に付き合うつもりで居てくれているらしい。

猟師さんたちは足元に並べられた弓や鎗に目を向け直す。

「武器を使った罠を教わるのは初めてですね」

「・・・飛び道具は命中精度がそんなに高くないし、獲物を外した矢や槍が他のワナを起動させちゃう恐れも有るから教えてなかったんだよ。設置作業中も段違いに危険だしね」

ククリに較べて事故が起こる可能性が跳ね上がるから、飛び道具を使ったワナを教えるのは避けていた。

ククリの設置中にも誤作動は多いんだよ。

ワナというものはストッパーにトリガー引っ掛けて仕掛ける構造だから、トリガーの反応を敏感にしようとギリギリを攻めれば攻めるほど誤作動を起こしやすい。

誤作動の可能性に気付いて想像力を働かせた猟師さんたちが、嫌そうに渋面を作る。

誰だってワナの誤作動で怪我はしたくないからね。

「命中精度の問題には、何か妙案が?」

「・・・イエーティには寄せエサを使うよ。寄せエサを中心に置いて周囲をワナで埋める」

私の説明に猟師さんたちが納得顔で頷く。

「採掘場のバンダースナッチには寄せエサを使わずに済んでいやしたからね。罠の設置もやり方を変えるんですかい?」

「・・・獲物が通る場所を真っ直ぐ寄せエサに向かう経路に限定して、両側から挟み込む形で設置しようと考えてる」

真っ直ぐに伸ばした腕を獲物の通行経路に見立てて、通行経路の両側にワナの設置場所を点々と指先で示して見せる。

いつも使っているククリ罠だとトリガーの小枝を獲物に踏ませる形になるけど、今日教えるワナの場合はトリガーが蔓になって獲物の足を蔓で引っ掛ける、あるいは蔓を踏ませる形になる。

難しいのは、トリガーを支えるストッパーが立てた鉛筆の先を指先で押さえるようにバランスが不安定なことだ。

いつものワナならギリギリでストッパーに引っ掛かる凹凸の問題だから、1方向に掛かる荷重を支える凹凸の深さで調整すれば良いんだけど、今日のワナは左右の2方向へ逃げようとする荷重をピッタリ中心でバランスを取る精度が求められる。

結構難しいんだけど、このコツの違いは練習して体感で覚えて貰うしかない。