軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2次領有宣言 ⑪

「敵を知ることは戦略と戦術に影響する。フィオレよ。それは誇るべきものだぞ」

「それに、あの探知の術式も大したものだ。単純な理屈にして効果は抜群。体内保有魔力量が多く有能な者ほど簡単に探知される。事前に察知されては伏兵も暗殺者も意味を為さん。今回の出兵で兵員の損耗を防ぐことができたのは、あの術式に因るところが極めて大きい」

くっそう。ハインズお爺様とバルトロイさんにフォーローを入れられたら、ドネルクさんを追及しにくくなっちゃったじゃない。

ハインズお爺様は孫子の兵法みたいなこと言ってるし、バルトロイさんはベタ褒め。

お母様と肩を並べるほどの人たちに認めて貰ったら、さすがの私も嬉しくなってきちゃう。

仕方ないな。お爺様と叔父様の顔に免じて追及は諦めるか。

「・・・あの辺りの術式はテレサや王妃様に教えるものなので、広めないでくださいね」

「私が用いる分には構わんのだろう?」

魔法オタクのバルトロイさんが存在を知った以上、試行錯誤の末にいつかは解明される可能性が高い。

それなら教えることで恩を売って釘を刺した方が良いだろう。

「・・・それはもちろん。アンリカさんを悲しませるような結果にならないように、しっかりと覚えてください」

「承知した」

フッと目元を緩めてバルトロイさんが頷く。

真面目なバルトロイさんのことだから約束は守ってくれることだろう。

お目付役でアンリカさんが付いているのだから、テレサや王妃様の不利に働かないようにバルトロイさんをコントロールしてくれるはずだ。

私たちの遣り取りを見ていたドネルクさんが納得顔で頷く。

「なるほどな。これは陛下が心配するわけだ」

「オーグストがどうした?」

は? 王様? ハインズお爺様も慮外の名前が出て来て怪訝な顔になる。

「フィオレ嬢の身辺に危険が迫らないように護衛の状況を見に行けと言われてな。エゼリア嬢の件でどのみちウォーレス領へ赴くのだから、サッサと行けと尻を蹴り上げられた」

「予定よりも来訪が少し早かったのは、そういうことか」

ハインズお爺様は納得して頷いてるけど、大事なのはそっちじゃないよね!?

私、命を狙われてるの!?

お母様も私と同じように受け止めたみたいで目を鋭くする。

「フィオレの身辺に危険というのは?」

「現状ではそういった情報は入っていないそうだが、いつ西方から暗殺者が送り込まれてもおかしくないとお考えのようだ」

「ま。それはそうだろうな」

納得しちゃったよ!

お母様も私が狙われると思ってたの!?

何だか不穏な流れになってきたと戦慄していると、ドネルクさんが私に真っ直ぐ目を向けてくる。

「陛下は手の者を送り込んで有ると言っていたが、心当たりは?」

「・・・来てますよ? 今のところ5人」

王様って言うか、宰相さんだよね?

宰相さんだと教えずに王様が送り込んだことにしたのかな?

あの王様と宰相さんのことだから、世を欺く秘密主義の一環なんだろう。

私の答えが意外だったのか、ドネルクさんが首を傾げる。

「随分と具体的だな。手の者というぐらいだから密偵だと思っていたんだが」

「・・・まあ、密偵ですね。ドネルク叔父様も食事時に顔を合わせていましたよ」

正確には忍者なんだけど。

内輪の話なんだから隠すことないよね?

「“魔の森”への遠征にまで密偵を連れて行っていたのか」

「・・・王家に疑いを持たれたく有りませんから」

「陛下に伝えておこう」

どうせ別ルートの密偵も送り込まれているんだろうし、筒抜けなのは承知の上だよ。

変に隠すよりも情報を正しく伝えて貰って信用を得る方がリターンは大きいだろう。

あっ。そうだ! これって渡りに船じゃん!

「・・・陛下にお伝えいただけるなら、一族丸ごとください、とお伝え願えませんか?」

「一族丸ごと?」

ドネルクさんは気付いて居なかったみたいだし、これじゃあ伝わらないかな?

ウォーレス家は全てを分かった上で隠し事をする気が無いとアピールする機会にもなるし、ドネルクさんも巻き込んじゃえ。

一緒に帰ってきたんだし、まだ勤務時間中だからと姿を探せば、丁度お茶の替えを持ってきてくれたようだ。

「・・・サーシャさんサーシャさん」

「はい」

手招きすれば気付いて私の傍まで来てくれた。

1週間近くも毎日何度も顔を合わせていれば、ドネルクさんじゃなくても相手の顔に見覚えは有るだろう。

「君は遠征中に食事の配給を担当していたな」

「・・・このサーシャさんたちが、陛下が私に付けてくださった人員の一人です」

ドネルクさんと一緒に、じーっとサーシャさんの顔を見つめていたバルトロイさんが、徐に剛速球を投げてくる。

「君はもしや、吸血種か?」

「はい」

バルトロイさんって、私との初対面のときにも同じようにストレートな訊き方をして来たよね。

レティアの領主館ではサーシャさんたちも出自を隠していないので、アッサリと頷く。

「てっきりエクラーダ人だと思い込んでいたんだが、まさか吸血種だったとは」

目を丸くしていたドネルクさんが唸る。

サーシャさんの答えを聞いたバルトロイさんは記憶を探るように眉根を寄せながら天井を見上げている。

どうしたのかとバルトロイさんと見ていると、ハッとする表情を見せたかと思えば一転して怪訝な顔で首を傾げる。

「んん? ちょっと待て。吸血種は陽の光が苦手と聞いたが、君らは陽の光の下で普通に過ごしていなかったか?」

「フィオレ様のお陰で、すっかり平気になりました」

百面相を披露したバルトロイさんにサーシャさんがニコリと笑い返した。