軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2次領有宣言 ⑫

採掘場場でのブートキャンプを経て心身共に強くなったサーシャさんたちは、もはや日光など敵にしていない。

色素の関係で日差しの下では眩しそうにしているけど、それだけだ。

そう言えば、サングラスを作ってくれる工房を探さないとな。

「驚いたな。そんなことが有り得るのか」

「・・・現に、そうなっていますし」

感心というか、驚嘆というか、衝撃を受けてる様子のバルトロイさんに、心の中で「現実を受け入れろ~!」とエールを送る。

「そのようだな? ―――、ああ、いやいや。考えるのはよそう。常識だと思っていたことが通用しなくて頭が混乱してきた」

「・・・常識なんて、ただの思い込みです。受け入れてしまえば楽になりますよ?」

こめかみを揉みほぐしながら首を振るバルトロイさんにヤレヤレと真理を説く。

通“常”の認“識”で「常識」だからね。

色即是空、空即是色。

常識に決まった形なんてない。

多数派の認識が「常識」で、常識なんてものは移ろいゆくものだよ。

お経の一節だけど、私もネット掲示板の書き込みで解説を読んで感銘を受けたことが有る。

要するに、「常識に囚われるな! 可能性は無限大で、そのときどきでトレンドは変化する! 乗るしかない! このビッグウェーブに!」って意味でしょ? 違ったっけ?

「ああ、うん。そうだな? 君は本当に5歳なのか?」

「・・・私だっていつまでも5歳じゃ有りませんよ。もう6歳になりました」

「新年を迎えたからな」

ヨシ。勝った。

バルトロイさんも苦笑しているから私の勝利だろう。

サングラスかあ・・・。

メガネ自体は存在してるんだよね。

ウォーレス領で見掛けることは少ないけど、レーテさんがメガネを掛けていたから存在は証明されている。

レーテさんといえばテレサが王都から連れて来たのだから王都ならメガネが手に入る?

でも、王都で見掛けた人のメガネ率はウォーレス領と変わらなかったように思うんだよね。

つまり、メガネを掛けている人が記憶に残るほど居なかった。

「・・・うーん」

でも、メガネ率が高くてメガネを見慣れている元日本人の意識には残らなくて見落としている可能性も有るよね。

日本で道を歩いていて見掛ける人のメガネ率なんて気にしないだろう。

日本という国はそのぐらいメガネ率が高くてメガネを見慣れていた。

ガイジンがステレオタイプな日本人を絵に描くと、必ずメガネを顔に描き込むぐらい日本人とメガネのイメージは強く結びついていた。

本体がメガネを掛けているのかメガネが本体なのか分からないぐらいに、メガネと日本人を結びつける絆と運命の糸は太くて頑丈なものだった。

日本人のことは、もうどうでも良いや。

今はメガネのことだ。

メガネを専門に製造する工房が有るとは考えにくいから、レーテさんのメガネも特注品だったんだろうなあ。

「フィオレ。どうした?」

「・・・えっ? いえ。どこでメガネを買えるか考えていただけです」

思考の沼に片足を突っ込み掛けている私を引き留めたのはお母様の声だ。

いけない、いけない。

深く考えずに考えていたことを答えると、首を傾げているみんなの視線が私に集まっている。

いち早く思考が復帰して口を開いたのはドネルクさんだ。

「メガネ? そんなものをどうするんだ?」

「・・・サーシャさんたちって瞳の色が薄いから陽の光が眩しいんですよ。ね?」

傍に立つサーシャさんを見上げると、穏やかに目を細めたサーシャさんが頷く。

「はい。眩しいだけですから、日常生活に支障が有るわけではないのですが」

「メガネと眩しさに何か関係が有るのか?」

サーシャさんと私を見比べたバルトロイさんが首を傾げる。

実のところ、日向で直射日光を浴びると私も少し眩しく感じるんだよね。

森の中で暮らして居た頃は気付かなかったけど、日本人だった頃よりも強い光に対して眩しさを感じる感覚は強い。

欧米人がサングラスを掛けるのは、日本人よりも瞳の色が薄いのが理由と聞いたことが有ったはず。

日本人でも加齢でお年寄りになると瞳の色が薄く変化する人が居るって聞いたことが有るんだけど、そっちは実例を知らないから本当かどうかは分からない。

この眩しさ問題を、まさか我が身で体験することになるとは想像もしていなかったけど、自分の瞳の色が変わってみれば確かに眩しいと実感した。

こんなの体感の問題だから平気な人には分かんないよね。

「・・・メガネのガラスに暗い色を付ければ眩しさも少しはマシになるかなと」

だから、欲しいのはサングラス。

私でも眩しいと感じることが有るのだから、サーシャさんたちは今でももっと眩しい思いをしているはず。

「ガラスか。先日、王宮御用達のガラス職人からギルドに推薦状が来ていたな。頼まれていた特注の遮光メガネを送るから推薦する冒険者に渡してやってくれ、と書いて有ったが」

「・・・遮光メガネ!? そのガラス職人を紹介してください!」

ガラス職人で遮光メガネって、アレだよね!?

溶接メガネみたいなヤツ!

溶接メガネはすごく色の濃いサングラスみたいのものだけど、そこまでガラスの色を濃く着色する技術が有るなら、適度に薄めた色のガラスだって作れるはず!

勢い込む私に目を丸くしたドネルクさんが、どう、どう、と手で抑える。

「待て待て。俺も会ったことが無いから紹介できるような間柄ではないんだ」

「・・・そうなんですか」

なぁんだ。

サングラスを作れるガラス職人が居るのは分かっても、王宮の御用職人と言われてしまうと手出ししにくくなっちゃった。

王様にお願いして注文させて貰うしかないかな。

小さなことでも王様に借りを作りたくないんだけどなあ。