軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ㉜

「・・・頭を押し付ける? ―――、これだ!!」

今の立ち位置では、“2号”の背後には包囲陣の一部を形成している新人さんたちが居る!

こっちはダメ! どっちなら!?

みんなを危険に晒さない十分な距離を取れる場所といえば、もう、あそこしか無い!

包囲陣の中心、穴の辺りだ!

平衡感覚が狂った私をそのまま体現したように、ヨタヨタと怪しい足取りで“2号”が回れ右をする!

「・・・食らえええええええええええええっ!!」

蜻蛉の腹を高く抱え上げ、胸を大きく反らせた“2号”が背中側へと倒れ込む!

衝撃で“2号”が崩壊してしまわないように、力任せに“2号”を構成する土の制御を握りしめる!

肩よりも高い位置に敵の上体を抱え上げた状態で、こちらも大きく上体を海老反らせて倒れ込めばどうなるか!?

岩石の体を持つ“2号”による“ 岩石落とし(バックドロップ) ”だ!

垂直に墜落する格好で、超・超巨大蜻蛉が頭から大地に突き刺さる!

そもそも“2号”は邪魔になる頭が無いからね!

超・超巨大蜻蛉は顔面から地面に突っ込んで、蜻蛉の頭どころか“2号”の両肩も地面に突き刺さる!

ドオオオオオオオオオオオオオオン!! と、この惑星が真っ二つに割れたんじゃないかと錯覚するような衝突音と共に、激しい砂塵と物理的に体が浮き上がるほどの振動が押し寄せる!

「・・・ふぎゃっ!?」

思い切り尻餅を突いて頭の芯に星が散って埋め尽くすほどの衝撃が脳天まで突き抜けたけど、絶対に“2号”の制御は手放さない!

拘束を維持できるかどうかにみんなの命が掛かっていると思えば、お尻が痛いぐらい何だ!!

「・・・ぐぎぎぎぎぎぎ!!」

負けて堪るか!!

真っ正面から砂塵を浴びているときに悲鳴を上げたから、口の中にまで砂が入ってジャリジャリする!

目にも砂埃が入ってポロポロと涙が出る!

それでも今は戦闘中だ!

余所見している暇も、被った砂を払い落としている暇もない!

お尻の痛みを堪え、震える膝を叱咤して立ち上がる!

異物が入った目の痛みと涙で目を開けて居られないんだけど、どうなった!?

敵は!? “2号”は!?

砂まみれになった目元を上着の袖で拭い、目の痛みを堪えて何とか瞼を開く!

「・・・えっ!? “2号”が居ない!?」

そんなはず無い!

私は“2号”の制御を手放していない!

あのデッカい“2号”の姿も敵の姿も、どこにも見えないなんて有り得ない!

私の前に広がっている景色は、武器を支えに立ち上がろうとしている包囲陣の面々と、地面に空いた大穴だけだ!

ん・・・? 大穴?

さっきまでほどの元気は無い感じだけど羽ばたきの音もどこかから聞こえてくる。

「・・・まさか!!」

大穴の直径は15メートルは有るだろうか。

蜻蛉の親玉が出てきたときよりも明らかに大きくなっている大穴の縁へと駆け寄って、眼下を覗き込んでみれば、ほんの1メートルほど下に見えるのは直径3メートル以上は有る2本の円柱の断面だった。

大穴の内壁に寄り掛かって斜めになっている、この円柱は―――、これはもしかしてアレかな?

「・・・“2号”の足の裏?」

魔力の手で繋がっている位置関係から考えても、これが“2号”で間違いないようだ。

超重量のバックドロップは、どうやら地下空間の天井をブチ抜いて崩落させたらしい。

この感覚・・・。

45度ほどの傾斜で仰向けに逆立ちしている“2号”は、胸にしっかりと蜻蛉の親玉を抱きしめたままのはずだ。

蜻蛉は? と姿を探してみれば、居た!

まだ敵も生きてる!

どう見ても弱っていて元気は無いけど、まだ羽ばたいているし、“2号”の拘束から逃れようと藻掻いている!

ハッ!! ボーッと見下ろしている場合じゃないじゃん!

みんな忘れてるっぽいけど、これだけ大量の死体が出ればラクネの急襲を再び受ける可能性も有る!

サッサと勝負を付けて次に備えておかなきゃ!

またフラグ?

フラグなんてものはこの世に存在しない!

忘れろ、私! 今は目の前の敵に集中しろ!

「・・・焼け―――ッ!!」

肺まで吐き出すつもりで叫んだ私の命令は、私と一緒になって大穴を覗き込んでいた全軍の耳に届いて覚醒させる!

呆気に居られていた新人さんたちもお母様たちもハッと我に返る!

「焼け焼け焼け焼け―――ッ!!」

「さっきは、よくもやりやがったな!!」

「死ねえええええええええっ!!」

超・超巨大蜻蛉が最後に放った電撃は、この場に居た全員に効いていたようで、青筋を立ててブチキレた全員が全員、口々に怒声を上げて攻撃を再開する!

“2号”の体表を這い、飛び越えた炎が雨あられと降り注ぐ!

大穴の底がオレンジ色に染まり、“2号”だけでなく蜻蛉の頭や胸部に攻撃が集中する!

なのに私は違和感を覚えていた。

「・・・んー? あんまり効いてない?」

竈の中で燃える薪のように、炎の明かりで半分潰れた蜻蛉の頭が照らし出されている。

“2号”のバックドロップは敵に十分なダメージを与えていて、大きな複眼が貼り付いた顔面は正面に亀裂が入って岩の破片も突き刺さっているように見える。

ボロボロになった4枚の翼にも炎が引火して、タンパク質が燃える臭いニオイが炎と煙に雑じっている。

間違いなくダメージが入っているはずなのに、炎の中で蜻蛉は元気に藻掻き続けている。

何か見落としてない?

答えは合っているはずなのに引っ掛かりを拭えない感覚は、試験問題の解答を書き込んだ答案用紙を自信が持てずに眺めている気分だ。

「・・・蜻蛉、蜻蛉・・・。蜻蛉かぁ」

昔、蜻蛉の話を聞いて驚いたことが有ったような?

ビタン! ビタン! と蛇のように長い腹を超・超巨大蜻蛉が“2号”の胸に叩きつけている。

腹? 尻尾? 遠い昔に得た知識が私の脳内に閃く!

思い出した!