軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ㉗

「どんどん作れば良いのね!?」

「やっちゃって、やっちゃって!」

「任せなさい! ―――、て、あれ?」

馬鹿デッカい蜻蛉の顔をムギュッと押さえて穴の奥へと押し込みながらお願いすれば、ルナリアはヤル気マンマンでモコモコを始めようとした。

ところが秒でルナリアの顔色が変わる。

「つ、掴めないわよ!?」

「・・・あっ、ソレ。自分の魔力で生成しないと無理かも」

そりゃそうだよね。

私も穴を中心とした地面を先に掌握されちゃってて蓋を出来なかったんだから、複製しようにもコピー元となる地面の土もまた他者の制御下にあるはずだ。

「どういうこと!?」

「・・・穴の周りの地面を掌握されちゃって制御を奪えないんだよねー」

ルナリアは離れた場所に居たし、土に触れていなかったから分からなかったのだろう。

急にルナリアを呼んだのも私だし、私の伝達不足だな。

「先に言いなさいよね!!」

「・・・ゴメンゴメン。頑張って」

プンスコと怒りつつも即座に切り替えたルナリアが土の生成に取り掛かる。

全くの無から魔力だけを原料に土を生成するのは魔力の負担が大きいけど、何とか耐えて貰うしかない。

ルナリアの協力を得て、いまだ抵抗を諦めない蜻蛉へと意識を向け直す。

私は“獰猛くん”で抑え込んだ後の算段を考えておかなきゃ。

「くっ! むむむっ、土! ―――ふぇっ!?」

「・・・えっ!? 何!? どうしたの!?」

土の生成に取り掛かっていくらもしないうちにルナリアが素っ頓狂な声を上げた。

また何か不測の事態!?

「作った土を取られた!?」

「・・・取られたって、―――掌握されちゃったってこと!?」

うあー。そう来たかー。

何が起こったのかを即座に察する。

コピペ魔法で複製した土を私たちはポイッと手放してしまっている。

手放すということは、誰の制御下にもない状態ってことだよね。

それって私が地面に魔力を浸透させて掌握するときと同じじゃない?

所有者がいないから浸透されると他者の支配下に入ってしまう?

ダンジョンから漏れ出した魔力に浸透されて掌握された土は、ダンジョンの一部になってしまったのかも。

それが事実かどうかは分からない。

分からないけど、目の前で起こっている事象は受け入れた上で打開策を見出す必要が有る。

「何なの、コレ!?」

「・・・うーん。たぶん、迷宮?」

根源的な部分に対するルナリアの問いに私の見解を返す。

「ええっ!? 迷宮って本当にそうだったの!?」

「・・・たぶんだよ。たぶん。この辺りの地面と同じで新たに生み出した土も掌握されちゃうのかぁ」

憶測だと前置きしつつも私は確信を持って答えている。

フィクションでよく有る設定だと、「ダンジョンの構造体には手を加えられない」なんてものも有るよね?

でも、この蜻蛉たちは穴を押し広げたりしているのだから、その線は無い。

どうにかすれば手を加える方法は有るのだろう。

蜻蛉たちの行動がそれを証明している。

けれど、その方法の模索は安全を確保してからの話だ。

目の前の魔獣に気を取られて頭から抜け落ちていたけど、これが本当にダンジョンだとするなら、採掘場のシカと同じように今後も超巨大蜻蛉は湧き続けるものだと考えるべきだよね。

こりゃあ根本的な部分から向き合い方を考え直す必要が有るなあ。

今は安全確保―――、目の前の魔獣を討伐することに集中しよう。

先ずは動揺してしまっているルナリアを落ち着かせるところから、かな。

「どどどどうすれば良いの!?」

「・・・生み出した土の制御を手放さないで」

理屈上、生成した土がルナリアの制御下に在り続ければ、“他者の魔力には干渉できない”原理が働くはずだ。

私の体感的にもそのロジックは正しいし、それが正しいものなら干渉を拒めばいい。

「ええっ!? することが多くない!?」

結構な無茶振りをしている自覚は有る。

いきなり引っ張り出した土壇場で初めての挑戦を要求しているんだから、ルナリアが抗議するのも無理はない。

でも、追い込まれれば何とかなってしまうこともピーシーズから学んだからね。

チャレンジさせてみて成功すれば見付けものだし、ルナリアをその気にさせればやれてしまう気もする。

ルナリアをその気に、か。

ルナリア 専門家(マイスター) の腕の見せ所だな!

「・・・やれば出来る! ルナリアなら出来る! ルナリアすっごーい!」

「そ、そうよね! できるわ!」

背中を押して褒めあげてみれば脳筋血統のサラブレッドはその気になった。

チョロくて可愛いんだけど、気を付けておかないとキャッチセールスに引っ掛かって騙されそうだなあ。

ヤル気を復活させてチャレンジを始めたものの、ルナリアの顔色は決して良くない。

「むぐぐぐぐぐぐ! こ、これ、やっぱり難しい!」

「・・・やれる、やれる! キレてるキレてる! 魔力も喜んでるよ!」

ナイスポーズしているボディビルダーのごとく褒めあげてみたものの、子供チャレンジ中のルナリアが生み出す土の量は爆速とは程遠いもので、このままでは日が暮れるどころか夜が明けてしまう。