軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ㉘

この状況を打開するには、もう一押し何かが必要になるだろう。

何が出来る?

ルナリアに加勢しようにも「手」が足りない。

現状、私の12本の「手」は“獰猛くん”による第2ラウンドに備えた押し戻し作業中でフル回転中。

力負けはしないけど、グイグイと押してくる超・超巨大蜻蛉を抑え込んで真っ直ぐに押し戻すには、文字通り「手」が抜けない。

「手」が足りていないなら、手を増やす?

そうだよ。ルナリアを追い込んでいるなら私も追い込まれるべきじゃないのか!

「・・・まだ出るまだ出るまだ出るまだ出るまだ出るまだ出る!!」

ピーシーズに倣って念仏を唱える。

やれる、やれる! 私だって出来る! 自分を信じろ!

昔、ネット掲示板に書き込まれていた情報では、窮地にメガネを掛けた口髭デブのゴーストが現れて耳元で囁くことが有るという!

諦めたらそこで試合は終了なのだと!

断固たる決意を持って「手」を増やせと!

よく覚えて無いけど、そんな話だったはずだ。たぶん!

「ふぬぬぬぬぬぬ!」

「・・・ぐぬぬぬぬぬぬ!」

ルナリアと2人で唸る!

それぞれに挑んでいることは違うけど、壁を乗り越えよとしているのは同じだ!

ところでだ。

ルナリアはルナリアで生み出した土をダンジョンに奪われたことが、すいぶんと腹立たしかったようで、細い1本足で支えた上に新たな土を生み出してデッカいキノコのようなものを作っている。

地面から少しでも土を浮かせてダンジョンによる浸食から守ろうと考えたのかな?

自分の身長よりも遙かに大きなキノコを作っているルナリアも大真面目にやっているのだろうから、何だソレ? と思ったことは黙っておこう。

その後、ルナリアが「取られた」と言わないってことは、意外なことに、ある程度の効果は有るっぽいし。

キノコの足の半ばまでは浸透されても宙に浮いた傘の部分までは上がってこないのかな?

興味深い現象なんだけど今は後回しだ。

ルナリアが何とか打開策を考え出して頑張ってるのに、私は新たな「手」を生やせないなんて不甲斐ない!

そんなものか!? どうしたフィオレ! 銃なんて捨てて掛かって来い! とまでは言わないけど、自分で自分を煽ってみる。

「・・・くぬううううううう!」

奥歯を噛みしめて踏ん張ってみるけど「手」は出て来ない。

踏ん張りすぎると別のものが出てきそうというか、本当におトイレへ行きたくなってきた。

拙い! 今はおトイレに行けるような状況じゃないよ!

意識してしまうと余計に行きたくなってしまうのがおトイレというもので、尿意とも戦う羽目になってしまった!

耐えろ! どっか行け! 今は呼んでないから引っ込んでて!

前門の魔獣と後門の尿意!

どっちも強敵だけど、後門だからといって便意じゃなかっただけマシか!?

くだらないことを考えている余裕が有るんじゃなくって、余裕が無いから気を紛らわしてるんだよ!

意識したら漏れる!

着替えのパンツは持ってきてるけど、何としても、そんな惨劇は避けなきゃいけない!

「・・・うごごごごご!」

踏ん張るのを止めても気を逸らしても、引っ込むどころか強くなってきた尿意で内股になってくる!

頑張れ! 私の8の字筋!

1人で勝手に追い込まれている私にルナリアの声が追い打ちを掛けてくる!

「あっ」

「・・・えっ!?」

間の抜けたルナリアの驚きの声に目線を向ければ、スローモーション映像のようにキノコが傾き始めているところだった!

細い1本足が肥大した傘の重さに耐えきれずポッキリと逝ったのだろうことは、本能的に理解した!

ルナリアのアイデアと苦労の結晶が!

このまま倒壊すれば地面と接触してダンジョンに制御を奪われるかも知れない!

そんなことになれば、時間的なロスが発生するだけじゃなく、二度にわたって生成物を奪われたルナリアの心が折れてしまうかも知れない!

おのれ、ダンジョン!

純真な幼女の心を傷付けるとは、なんて惨いことを!

まだ起こっていない未来の可能性だけど、可能性がある時点でギルティだ!

「・・・そうはさせるかああああああああっ!!」

まだ間に合う! と伸ばした「手」が両の手のひらで傘を受け止める!

手のひらの上で傘は崩壊したけど地面に零してはいない!

ルナリアが作った土はダンジョンなんかには渡さない!

「・・・せ、セーフ!! 間に合った!!」

両手が空いていればガッツポースを取ったのに、私の両手は魔力制御をイメージするために魔獣の方へ向けてるからなあ。

ふぅー。まあ、何にせよルナリアの頑張りを無駄にしなくて済んだ。

ルナリアもホッとした表情で胸を撫で下ろしている。

そこでようやく気付く。

「・・・お? おお・・・? ヨシ! 増えてる!」

「えっ? 何が?」

自分でも、ちょっとだけビックリした!

前後の脈絡がない私の声に、安心から気を緩めていたルナリアが首を傾げる!

もう大丈夫だよ! この膠着状態を打破できる!

「・・・手だよ、手! 魔力の手が増えたんだよ!」

「ええ・・・? また増えたの?」

勝ち筋が見えたのに嫌そうな顔をしない!

人間、追い込まれると本当に何とかなっちゃうものなんだなあ。

自由になる「手」が出来て、さらに言えば、驚いた拍子に尿意もどこかへ吹き飛んだ!

完全復活だよ!