軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

心配だから

「リク!」

サイラスも思わず立ち上がって、後を追おうとした。

「サイラス」

静かな導師の声に、サイラスは一旦立ち止まり、振り向かずに答えた。

「わかっています。導師。リクのせいではあるけれど、リクだけのせいではない。だが、この状況で一人にするのは危ないから」

そして急いで部屋を出て行った。ハルがまたうつむいた。

「なにか、別の言い方ができなかったかな」

導師は立ち上がると、ハルの肩にそっと両手を置いた。

「ハル、それは無理だった。ハルのあの話の持って行き方が最善だった。リクは自分で悟らなければならなかった。つらい役目をさせたな」

「いいえ、大丈夫です」

深森一行は、自分たちがリクの大地を癒すやり方に興味を持って、ついやりすぎたことが原因だと全員がわかっていた。

一人ひとり、出来事の経緯を思い返していくと、何が問題だったかよくわかるのだ。

リクが直接大地に魔力を注いだことで、魔物の注意を引いたこと。それだけだったら、時間がたてば注意はどこかにそれていただろう。しかし、その後にショウも導師も同じように魔力を注いでしまった。

その時点で、近くの魔物の注意を完全に集めてしまったのだ。

狩人として気配を悟ったファルコとレオンは、その理由を悟る前に対策に飛び出した。

ハルは、魔物の注意を集めた原因を正確に理解して草原に走った。

ショウと導師は、やはり少し遅れてそれを悟ったが、リクに説明している余裕はなく、やはり草原へと走るしかなかった。

「ほんとは、リクだけでなく、私と導師の魔力も合わせて、ハネオオトカゲの注意をひいてしまったんだよね。だから今回のことは、私たちのせいでもある」

ショウの言ったことは、皆がわかっていた。

「だが、その始末も自分たちでつけた」

だからそれでいいとファルコが割り切っていることはショウには伝わっている。おそらく、導師もレオンも同じだ。

「そう。そしてこのことをわざわざ町の人に言うつもりもない」

導師がそのように言うのは、責任逃れをしたいからではない。

この出来事のおかげで、町が実際に襲われるかもしれないという覚悟を町の人に持たせることができる。それに、自分たちがうっかり引き起こさなくても、いずれ起きていたことなのだ。しかもその時に狩人の守りはないかもしれない中でだ。

「偶然とはいえ、この町の人たちにとっては、最も幸運な状況で起きた、魔物の大量発生と言える。ファルコの言う通り、その始末もわれらでつけた。問題はない」

「っていうところまで聞いて行けばよかったのに、リクは……」

ショウはドアの方を眺め、小さくため息をついた。

この一週間余り、リクに詰め込みすぎたのはわかっている。お互いの事情を話す余裕もなかった。そんな中で、よくやっていたとは思うが、経験が違いすぎたのだ。

「あれ、ハル。私たちって、意外と波乱万丈な生活を送ってる?」

「ショウ」

ハルはあきれたように首を振った。

「私以上に、ショウはいろいろなことを経験してるよ」

「普通に暮らしてただけなんだけどなあ」

導師がそっと目をそらした。

「導師?」

「すまん。そういう巡り合わせだったとしか言えぬ」

そういえば、導師が最高の治癒師だったからこそあちこちから頼られて依頼が来るのだし、ショウが転生者だからこそ、新しい治癒のやり方を考えられた。

「巡り合わせ」

幸運だったのは、ファルコと出会えたことだけではないのだ。

ショウはレオンを見た。この陽気な人と出会えたから、治癒の技も覚えられたのだし、ハルを救うこともできた。

ショウは導師を見た。この尊敬できる人に出会えたからこそ、いろいろな経験ができた。

そしてショウがいたからこそ、導師もいろいろな取り組みを考えることができたのだ。

ショウはハルを見た。ハルはにっこり頷いた。ハルももううつむいてはいない。

「リクにとって、私たちが」

「いい巡り合わせになるように」

そういうことだ。

「私たちも」

「追いかけてきます」

ショウはハルと共に部屋を飛び出した。

「やれやれ、行っちまったか」

レオンが頭の後ろで両手を組んだ。

「追いかけるか」

「いや、むしろ食堂に下りようぜ」

ファルコにそう答えると、レオンは立ち上がった。

「ハルもショウも、そしてリクも今や町の人にとっての英雄だろ。俺たちが下でおとりになろうぜ」

「めんどくせえが、そうするか」

話すのが苦手なファルコも、黙ってその場にいるだけで「無口な狩人」として勝手に盛り上がってくれるだろうことは、この一週間の滞在でわかっていた。

「導師もだぞ」

椅子に腰かけくつろいでいる導師に、レオンがあきれたように指摘した。

「私もか」

「むしろなんで自分だけさぼろうとしてんだよ」

「いや、私はちょっと落ち着いたらむしろ子どもたちがどう折り合いをつけるのか見学に行こうかと」

ファルコとレオンは今度こそ本当にあきれて導師を見つめた。

「そりゃ俺だって見たいけど、そこは大人として我慢すべきだろ」

ファルコが大真面目に説教している。

「ファルコ……」

冷たい目のレオンを無視し、導師がファルコに甘い言葉をささやく。

「それならばもういっそのことみんなで見に行かないか」

「……」

固まってしまったファルコは、それもいいかもなどと思っているのに違いない。

「惑わされてる場合じゃないだろ、ファルコ」

レオンは思わずびくっとしたファルコの肩を押して部屋の入口へ向けた。

「さ、導師も行こうぜ」

「仕方がない」

やっと立ち上がった導師にやれやれと思いながら、三人は階下に向かった。