軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

俺のせい

昼食をとって、疲れた体を休めた一行は、誰が言うともなしに、昼寝から覚めると順に導師の部屋に集まってきた。

「さて」

本当は面倒だなと思いつつも、皆導師の声に姿勢を正した。

「皆わかっていると思うが、今回の問題はハネオオトカゲが大発生したことではない。そもそも、数は増えていたとはいえ大移動するほどの数は発生していなかったはずだ」

導師はレオンとファルコに確認した。

「確かに、見回りした時に、数は多いとは思ったが、今すぐに何かが起こるほどとは思っていなかったから、驚いたぜ」

レオンが頷いた。

ショウは今回のことがなぜ起きたかわかっていた。ショウがハルのほうを見ると、ハルは少しうつむいている。ハルはもちろん、わかっているのだ。わかっているからこそ、草原に飛び出して、魔物を自分に引き付けたのだから。

それでも、魔物を引き付けるということが、湖沼時代の嫌な気持ちを思い出させやしないかとショウは心配してはいた。ハルの顔をよく見ると、うつむいてはいるが、表情が暗くないことに安心した。単に疲れているんだろう。

ショウは今度はリクのほうを見た。そして導師の話に今一つピンと来ていないその顔を見て、なぜ導師がこの話を始めたのか理解した。

「ハル」

ハルはショウの声に、はっとして顔を上げた。

「なんで魔法を撃ったか、説明してあげてくれない?」

「そうだよ! ハル、あんなすごい魔法が撃てるなら、早く教えてくれればよかったのに!」

大きな声を上げるリクの気持ちはショウにもわかる。何と言っても、魔法が使えるというのは転生して一番というくらい楽しかったことなのだから。もっとも、ショウは実用に使うだけで満足していたが。

「あんな大きい魔法、町の人にばれずに使うことなんてできるわけないでしょ。人のいないところに行ったら見せてくれるはずだったと思うよ」

ショウはハルの代わりにリクに説明した。

「それもそうか。ごめん」

ハルはにっこりして首を横に振った。気にしなくていいということだろう。そして、リクのほうを見ながら言いにくそうに話し始めた。

「この話をすると少し長くなるけど、聞いてくれる?」

「もちろん。でもなんで俺に? ああ、俺たちだけ事情を知らないのか」

リクは一人で納得してハルのほうを見た。

「私はね、転生した時、湖沼の魔術院の前に落とされたの。だから最初、自然に魔術師になる訓練をしていたの」

ハルは、その間の経緯を省いて簡潔にリクに説明を始めた。

「その中で、初めて狩りの実戦に出された時、魔物が近くに来るのが怖くて、思わず最大限の炎の魔法を撃ちこんでしまった」

リクは夢中で聞いているが、サイラスは眉をひそめた。実戦に出されたということは、リクと同じ年なわけだから、つまり年少なのに実戦に出されたということである。それがおかしいということは、聞くものが聞けばすぐにわかることだ。

「そうしたら、その魔力に引かれて魔物がいっせいに集まってきたの」

「すげえ。それはハルの魔力が魔物にとって魅力的だっていうことなのか?」

そんな、自分の魔力にだけ魔物が懐くなどという都合のいい話があるわけはない。ハルはまた首を横に振った。

「それで初めて、魔物を大きい魔力で集められることがわかったの。それからは狩りの最初に大きな魔法を撃ちあげて、魔物を集めるのが私の仕事になった」

サイラスは痛ましげに、そして隠しきれない怒りを込めて首を左右に振った。年少組の子どもを狩りに参加させること自体がおかしいことなのだ。

しかし、リクはポカンと口を開けて、それからはっと何かに気づいたような顔をした。

「だからあの時草原に出て魔法を撃ったんだ。町に魔物が行かないように、町を守るために。自分に魔物を引き付けるために」

半分正解だ。リクはこの先まで考えられるだろうか。ショウもハルもそのまま何も言わずにリクを見守った。リクは自分に問いかけ、自分で答えていった。

「でも、そうだ、でも。ハルが草原のほうに走って行った時、魔物はハルの方ではなく、俺たちのほうに向かってきていなかったか。そうだ、そう。ハルと入れ違いになるように。何匹も、何匹も」

リクがその時のことを顔をしかめて必死に思い出している。

「そうだ、ハルの魔法で、丘に集まっていた魔物もハルのほうに移動したんだ。つまり、最初は魔物はすべて丘に向かっていた……」

リクの体が細かく震え始めた。

「魔物は魔力に引かれて集まってくるって言ったな。それって魔法にじゃなくて、魔力にってことは、つまり」

やっぱりリクは気がついた。

「俺が、大地に魔力を注いだから。だから、集まってきたのか」

「リク……」

サイラスが思わず伸ばした手を、リクは払いのけ、立ち上がった。

「俺のせい、俺のせいで!」

「リク、違うよ。状況を全部思い出してみて!」

「俺のせいだ!」

リクはショウの言葉など耳に入らないかのように叫ぶと、部屋を飛び出した。