軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

運命なんてない

「にしても、あの時転生させられた3人がこんなに早く揃うなんて」

ハルがぽつりとそう言った。

「偶然、なのかな」

何か女神に操られているような気がして、ハルは思わず腕をこすった。鳥肌が立ったような気がしたのだ。でも、そんな気持ちはショウが一瞬で否定した。

「偶然だね」

「ショウ……」

「偶然でないとすれば、ファルコとファルコのお父さんのところにわざわざ私たちを落としたところがそうなのかもしれない」

「確かにな」

リクが頷いた。

「サイラスに子どもがいたけどいなくなったってことは、町の人から聞いてなんとなく知っていたけど、どういう経緯で子どもがいなくなったかとか、どこにいるとかまったく知らなかったからなあ」

「そうなの?」

ショウは驚いた。だって、三年以上一緒だったのではないか?

「そういうこと、自分から話してくれない限り、聞くことじゃないだろ」

「確かに。私も詳しくは聞いたことなかったよ。というか、ファルコはそもそも事情をあまりわかってないと思う。お父さんの顔も名前も覚えてなかったからなあ」

ショウはうっかり伸び伸びと話をしていたが、ショウたちの話は耳に入っていたらしく、サイラスがちらりと後ろを向いた。

「あ、これは本人たちが話す問題だよね。私ったら余計なことを」

「俺もだ」

ショウはリクと目を見合わせて反省した。こうしてみると、リクはショウより少し背が高い。平原の容姿の男の子を見るのは初めてだが、深森の子どもたちより優し気な顔立ちのような気がする。男の子だけど目が大きめで、少し垂れているからだろうか。

女神の部屋で会っただけで、お互い顔も覚えていなかったけれど、3つの国に分かれて落とされた自分たちが、今ここに集まっている。

「ハル」

「なに? ショウ」

ショウはリクに向いていた視線をハルに戻した。

「あのね、偶然だよって言ったけど、こんなの偶然なわけないよねって思ってはいる」

「それなら」

なんで偶然だって言ったの、とハルは続けようとしたのだと思う。

「うん。偶然じゃないとしても、女神の導きによる運命だとは思いたくなかったから」

どういうことなのか。ハルとリクは同時にショウを見た。

「私はのんびり暮らしてる。リクは」

「俺もまあ、楽しく暮らしてる」

「私も今は楽しい」

「今は?」

リクがハルの言葉に怪訝な顔をした。

「ハルはね、世話人がもらえなくて苦労したんだよ」

ショウが端的に説明する。

「それはもう、苦労した。だから女神が私たち三人をいまさら引き合わせたのだとしても、女神の目的なんて考えてやらないんだから」

「ショウ、お前、ずいぶん女神に厳しいな」

「だって、毒にも薬にもならないって言われたんだよ」

リクはそうだったかなという顔をした。リクにとっては大して重要じゃなかったんだろう。

「毒にも薬にもならない人たちに、何をさせるために再会させたの? 思いやり? そんな人じゃないでしょ」

「確かに人ではない、うっ、ぐーでお腹を殴るのは止めてくれ」

リクはちゃかしたのをちょっと後悔した。けれども、遠慮ない喋り方と突っ込みにどこかで嬉しさも感じていた。まるで昔から友達だったような懐かしさを、よそ者ではない、自分を感じて。

「何か目的があって再会させられたとしたら、その目的のためになんて絶対に働きたくない。けど、私は治癒師として、やるべきことはやる。それが結果的に女神のやってほしかったことと一致したとしても、それは女神に操られたことにはならないと思うから」

そう言い切るショウの瞳はまっすぐで、女神の部屋でもこうしてしっかり自分の意見を言っていたことをリクに思い出させた。

そうだよ俺。チートで浮かれそうになってた自分と違って、生きるってことをちゃんと考えてたこの人のこと、尊敬してたのに。また再会で浮かれて、調子に乗るところだった。リクはちょっと反省した。

「もう町が見えてきたよ。ねえ、リク」

「なんだ?」

ショウはリクに話しかけながらもハルを見た。ハルもそれでいいかの確認のためだ。

「私たち、今この町でちょっとやらなきゃいけないことがあって。ほんとはいっぱい話したいことがあるんだけど、すぐには無理だと思うの」

「そうだよな。カナンの町に来るのが遅れてるくらいだものな。それにしても、ショウもハルも見習いだろ?」

リクの感覚では、13歳はお手伝いくらいの仕事しかしない年頃である。周りの皆も家業や農業の手伝いはしているが、あくまで手伝いで、ちょうど成人するころに一人前になればいいとみなされている。

今回だって、リクは単に、サイラスが親だからそれについてきただけだ。そんなリクにショウがちょっと厳しい目を向けた。

「そう言えば、リクはやっぱり治癒の素質があるんだね」

「やっぱりってなんだよ。ああ、治癒師にも成れるって言われた」

「やっぱり」

「だからやっぱりってなんなんだ」

リクはちょっとイライラした。

「とりあえず、治癒の素質があるならリクにも働いてもらうからね。ちょうどよかった。カナンの町に行く前に、カナンの町の治癒師に一人でも早く訓練ができるなら、それにこしたことはないからね」

「は? 俺、治癒師じゃなくて、治癒師見習い、しかも兼業希望だぞ」

しかしそんなのんきなリクにイライラしているのはショウも同じだ。

「ロビンもそうだけど」

ロビンが自分の名前が聞えてきたのでびくっとしてこちらを向いたが、知ったことではない。

「なんであなたたちは、自分たちの町のことなのに当事者意識がないの?」

ショウはうんざりして言った。

「魔物が増えているのは深森も同じこと。私達だって、自分たちの町をギリギリで回しているんだよ。それをわざわざ他の町のために出てきたのに、肝心のその町の人がみんな、人に頼ることばかり考えてるなんて」

「お、おう。すまん」

「とりあえず謝っとくとかやめてね。もう日本人じゃないんだから」

「す、すま、あ」

ショウもちょっと八つ当たりかなという気持ちはあったが、ロビンにしろリクにしろあまりにのんきでイラついたのは確かなのである。

「あ、もう町だね」

街道沿いに薬草を探していただけなので、町にはすぐにたどりついた。

「サイラスさん、同じ宿に案内するのでいいですか? それともどこかに泊まる予定が?」

「いや、一番導師が来そうな宿で待機ということだったので」

「じゃあ、私たちと同じでいいですね。ロビンもちゃんと来てね」

「なんで」

ショウはロビンをじっと見た。

「はい、行きます」

まったく仕方がない。リクはサイラスが口の端をちょっと上げたような気がしたが、錯覚かもしれない。馬を先に預けて、ショウが宿に案内した。これ、ロビンの仕事じゃないのと思いながら。

「ただいま戻りました」

「おう、小さい治癒師さんたち、お疲れ様。おや、狩人の兄ちゃん、もう一人の金髪の兄ちゃんはどうした」

宿の親父さんは自然にそう声をかけてきた。ショウたちは思わずサイラスを見た。少し困ったような、何かを期待したような顔をしている。ショウは思わずつぶやいた。

「やっぱりかっこいい」

「ショウ、ファルコが好きすぎるでしょ」

すかさずハルに突っ込まれるのだった。だって、会った時から本当はキャーキャー言いたくてたまらなかったのだ。ファルコと同じような顔が二つなんて、しかも若干渋くなった顔が見られるなんて、最高じゃない?