軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出会い

「昼まで一緒かよ。勘弁してくれよ」

宿の食堂に連れてこられたロビンはぶつぶつ言った。

「いい? 私たちがあなたと一緒に食事をしたくてしているとでも思ってるの? 町に来てまだ一日もたっていない女の子に親切にしようという気持ちはないわけ?」

ないと言おうとしたのだとは思うが、周りの町の人の視線の圧力に負けて、ロビンはぶつぶつ言いながらお昼を一緒に食べ始めた。

ショウはちょっとあきれた目でロビンを見てしまった。午前中の観察で、ごく身近なところに薬草があるとわかったのだ。薬草がなくてポーションを作れないと言っていた悩みの半分はこれで解決したようなものではないか。何を文句を言っているのだろう。

「さ、丘のところまでは見たから、午後からは町の反対側だね」

「うえ、まだやんのかよ」

ショウは静かに呼んだ。

「ロビン」

「……はい」

その途端、食堂は爆笑に包まれ、ロビンが一層やさぐれたのは言うまでもない。一方、ファルコとレオンは、昼前に一旦戻り、急いで食事を済ませると、すぐにまた出かけて行ったということだった。

「さて、こっち側は丘じゃなくて街道沿いだから、畑地か草原ばっかりで木はほとんどないね」

「ロビンの言う通りだとすると、薬草はないはずなんだけど、探してみよう」

ショウとハルが、街道に出たところでそう声をかけあっている。

「さっきは丘の近くだから薬草も生えてたけど、さすがにこっちはないだろう。例えばこうしてしゃがんでみたらさ、ほら」

ロビンは先ほどのようにしゃがんで低い目線で改めて街道沿いを見てみた。そして思わずふうっと力が抜けた。

「あるし。ていうか薬草だらけだし」

「スライムは?」

「んー。いる」

ショウの問いかけにロビンは簡潔に答えると、自分の薬師のポーチから、先ほど丘のところで作ったスライム棒を取り出した。ちなみに、昼に一旦家に帰って自分用の小さいナイフを腰に差している。文句を言いつつ、素直にスライム棒とナイフを使って、スライムを倒す方法をあっという間に身に着けていたのだ。

「二回酸を吐かせる。そうしたらもう酸は吐かないから、ナイフで切り裂く。魔石を水で洗って回収っと。ふう」

そうして油断せずに、あたりを見渡してから、薬草を確認してみている。ショウとハルは顔を見合わせ、まあ、いいでしょうと言うように頷きあった。文句は多いがやることはやる。それでいい。もっともロビンはモテないだろうなと、ちょっと冷たいことも考えるショウであった。

街道沿いと言っても、めったに人は行き来しない。収納袋があるおかげで、物資は比較的大量に輸送できるし、年に二度小麦が収穫できるこの平原では、人々は一年中忙しいと言えば忙しいからだ。狩人と違って移動する必要はないのである。

その街道を町から外に向かって歩きながら、薬草の場所をチェックしていく。ショウは途中で立ち止まった。

「年少さんが薬草を採るとしたら、町からこのくらいまでが限度かなあ」

「おい、待て。お前、年少さんって言ったか?」

「お前じゃなくて、ショウ」

「し、ショウ」

なんで名前を呼ぶことが少し恥ずかしそうなんだ。ショウはあきれた。

「ロビンと薬師の見習いは明日からポーションを作ることで忙しくなるでしょ。そしたら誰が薬草を採るの?」

「俺と見習いの子で採るつもりだった……」

「そんなんじゃ追いつかないよ。今の、このスライムやトカゲの多い状況が落ち着くまでは、町の人一人一人が一本ずつポーションを持っているくらいじゃないと駄目だもの」

「まじかよ……」

どれだけのポーションを作るのかと絶望しているのはわかる。

「深森ではね、年少でも一人三つ、大人の狩人なら一人五つはポーションは持って歩いているから。薬師が薬草の現状を知らなければ話にならないから今日は連れて来たけど、ポーション作れるのがロビンしかいないんなら、明日からはそれで頑張って」

「まあ、少なくとも今日採った分で明日はがっつりポーションが作れる。薬草取りしなくていいんなら、だいぶ楽になるぞ」

やっと納得してくれたようだ。

「ショウ、向こうから人が来たよ。珍しいね。馬車じゃなくて、馬で来ているよ」

ハルがちょっと背伸びして街道の向こう側を見ている。手を後ろで組んで背伸びしているハルはショウが見てもなんだかかわいらしかった。口うるさいショウと違ってハルは静かで優しいような気がしていたロビンは、思わずつぶやいた。

「かわ」

「もう、ハルったら、かわいいんだから!」

しかしその声はショウの声に消された。ショウはそう大きな声で叫びながらハルにしがみついている。

「やだ、ショウ。道の向こう側を見ているだけじゃない」

「あー、癒される」

「もう」

ロビンの出る幕などないのだった。さすがにちょっと疲れていた一行は、これをきっかけに少し休憩することにし、道の端に寄って、ショウがてきぱきとお茶の準備を始めた。

「お前ら、外でお茶とか、本当に何と言うか」

「深森のやつらは変わってる?」

「そうだな。茶なんて、家に帰って飲むもんだろ」

「狩りや旅の途中ではそうもいっていられないからね」

「旅か」

平原の人にとって、旅をすることはあまり考えられないのだった。もっとも、導師に師事しているからこそショウだって他の人より旅が多いというだけなのだが。

お茶の準備ができた頃、馬に乗った旅人がちょうど通りかかった。

「止まれ」

それほど大きくない馬に乗った二人連れは、どうやら親子のようだ。自分たちと同年代の少年を興味深そうに眺めたショウとハルは、次にその父親に目をやり、思わず固まった。

「ファルコ?」

思わずと言ったように声が出てしまったのはハルだ。固まっているショウに、ロビンがこそこそとささやく。

「なあ、一緒に来たあの狩人そっくりだよな」

「うん」

それで動けるようになったショウだが、そうしてよく見て見ると、違いのほうが目についた。

「でも違う。ファルコより年上だし、少し背が低くて、がっしりしてる。でも目つきが」

そこで思わず自分で口を押えた。知らない人に目つきが悪いなんて聞こえたら申し訳ないではないか。

馬から降りた子どものほうは、きらきらした目でお茶の用意をしている三人を見ているが、父親らしき人のほうは、三人を順番に見ると、おもむろに口を開いた。

「ファルコ、と聞こえたような気がしたが」

ハルとショウは思わずひゅっと息を吸い込んだ。

「ああ、今この町に深森の一行が来てるんだけど、そのうちの一人にあんたスゲー似てるんだよ。それがファルコだよな。な?」

ロビンがペラペラと情報を漏らしていく。別に隠すことではないが、少なくとも、ロビンの口の悪さが自分たちに対してだけではないことが分かっただけでも収穫だとショウは皮肉な気持ちになった。

「なあ、あんたたち、ちょうど喉が渇いてたんだ。お茶、余ってたら分けてくれないか」

少年のほうが気さくに話しかけた。でもショウにもハルにもわかった。

明るく見せているが、緊張した空気を読んで、場を和ませようとしてくれている。少年なのに、ロビンよりずっと空気が読めるなんて。いや待て、空気が読める? まるで日本人ではないか。ショウとハルは目を見合わせ、ハッとしてその少年を見た。

面影は?

「ハル、ごめん、まったく覚えてない」

「私もだ」

「でも」

「うん」

二人は同時に少年を見た。

「「女神の部屋?」」

「え、なんで知っているの?」

ビンゴである。こうして、ショウとハルはあっさりと三人目の転生者と出会ったのだった。