軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

薬草

「駄目です」

「え?」

しかし、ショウは冷たくそれを止めた。

「え。なんで? 俺、あんた」

「落ち着いて。ロビンって言った? あなた薬師なんでしょ。聞きたいことがあるの」

「聞きたいこと? なんだよ」

ロビンは少し目が覚めたようだ。たとえ年少組とはいえ、もうすぐ見習いの年になる女の子の前では多少格好をつけたいものだ。いくらかしゃっきりした。

「ポーションは足りてるの?」

「足りてねえよ……」

それが問題なんだよというように、青年は椅子にだらりと寄り掛かった。

「もともと薬師なんて、治癒師と同じように義務として町に一人は必要だからいるようなもんで、時々ポーションを作るだけで十分だったんだよ、俺が見習いだった頃はさ」

昔話をするじいさまかとショウは心の中で突っ込んだ。

「それが何年前からか、スライムやトカゲが急に増えやがって、トカゲはまあいいんだが、スライムの酸で怪我する奴が増えてな。もちろん薬師だから、ポーションを用意するのはぜんぜんいいんだ。だけど、ただでさえ見つけにくい薬草を探して、それで見習いと二人でポーション作るのは大変なんだよ……」

「薬草って少ないの? 深森には山ほど生えてるけど」

「平原は農地が多いからさ。薬草って木の側に生えるだろ」

「なるほど」

確かに北の森にはたくさん生えていた。

「うちのほうは年少さんがお小遣い稼ぎに薬草を採ったりスライムを狩ったりしてるよ」

「こっちの年少さんはそんなことしないんだよ」

そう言えば、岩洞でも最初は薬草を採るのさえちゃんと教えなければならなかったか。ショウは導師のほうを見た。

「いいぞ」

「そうします。すみません、町長さん」

「オークスでいいよ、小さい治癒師さん」

「オークスさん」

ショウは確かめるように言い直した。町長はにっこり笑い、それをナイジェルとロビンが信じられないものを見たかのように見ている。

「明日一日、ロビンを貸してください」

「ちょっと待って! 俺の意思は? それに明日もポーションを作らないと」

「わかった。何か考えがあるのだろう。よろしく頼む」

「待って! ねえ待って」

何か言っているが、ショウはてきぱきと明日の朝の待ち合わせを決めてしまった。

「そして私の願いだが」

「そうだった。導師、何をしたらいい?」

「明日、試しの儀のやり直しを行う。幼いころ治癒の適性があったもの、それにもう一度試しの儀をしたいというものをすべて集めてくれ。短期間で体調をチェックできるレベルの治癒師を育成してみる」

「それは大人を、ということか?」

「もちろん、子どももだ」

途方もないことを言われた町長は、少し戸惑ったが、導師が何か、自分の期待以上の事をしてくれようとしていることはわかったようだ。

「五日間。まずは試してみよう」

導師もショウも、やるべきことはわかっていた。大きい町カナンに行く前の、これはお試しの絶好の機会なのだ。

導師が予想したとおり、いや、それ以上のことが起こっている。依頼を出してきていない町も、どこも治癒師不足で悲鳴を上げているに違いない。幸い、スライム程度の魔物しか出ないのなら、やりようはある。

二人の戦いが始まった。

次の朝、導師は一人教会に向かった。一方、ショウとハルは眠い顔だが遅れずにやってきたロビンと顔を合わせていた。ファルコとレオンは、ショウが何も言わなくても町の周りの探索に出ている。実際どのくらいの魔物が発生しているか調べるためだ。

「で、俺を一日借りるってなんだよ」

ロビンが面倒くさそうに言った。

「本当に薬草がないか、ちゃんと調べてみようと思って。地元の案内役が必要でしょ」

「俺、道案内? そんなことのためにポーションづくりを休むの?」

大声を上げたロビンはショウがじっと見つめると静かになった。

「ロビン」

「はい」

力関係をわかってくれたようだ。

「主にどこで薬草を採りますか」

「あの丘のところだ。こんもりと木が茂ってるだろ。町にも近いし」

「じゃあ、まずあそこから。さあ、行くよ」

「俺が案内人なんだけど」

ぶつぶつ言いながら、麦畑の間を通っていく。しかし、丁寧に整地されていると言っても、間に入っている道は馬車が通れるくらい広いし、ところどころに草地もある。まっすぐに丘に向かおうとするロビンを、ハルが止めた。

「待って」

「なんだよ」

ロビンは驚いたようだ。ハルは道の横の草地を指さした。

「だから何、それ」

「薬草だよ」

「まさか、こんな近くに……」

ヨモギのようにギザギザして葉の裏の白いそれは、割と見間違いようもなく、確かに薬草であった。

「ほら、そんなところに立ってないで、こっちに来てしゃがみこんでみて」

ハルに連れられて薬草の側でしゃがみこむと、そこにはショウが初めて薬草を採った時のように、丈の高い草の下にびっしりと薬草が生えていた。

「ばかな。俺だって年少組の時にはここらへんだって薬草を探してみたりしたんだ。その時はこんなに薬草は生えていなかったはずだ」

「そうなんだ。ロビン、ちょっと下がって」

ショウは冷静にそう言うと、ロビンの襟もとを後ろに引っ張った。

「なんだよ。え、それ」

「スライムだね」

「た、大変だ! 町の人を呼ばないと」

「何言ってるの?」

ショウは慌てるロビンを一瞥すると、剣を抜いてさっとスライムを切り裂いた。

「うわっ」

「はい。魔石」

「ま、魔石」

ロビンはこわごわとそれを受け取った。

「なんなの? もしかして、平原の人って成人してもスライムを狩ることができないの?」

「できる訳ないだろ! 鉈やナイフを持ち歩いている人ならできるかもしれないけど、それだってスライムは酸を飛ばすから危ないだろう」

「あきれた」

ショウはハルと目を合わせて、首を左右に振った。ハルは仕方ないというように笑っている。自分だってスライムの取り方を覚えたのはショウに教わったからであって、人のことは言えないのだった。

「これは、久しぶりにスライム棒の出番かなあ」

「ちょ、ショウったら、持って歩いてたの」

ショウがポーチからスライム棒を出すと、ハルがあきれたように指摘した。

「もちろんだよ! いつ小さい子に教えることになるかわからないでしょ。ハルは捨てちゃったの?」

「ううん。持ってるけどさ」

ハルもポーチからスライム棒を取り出した。

「何なら桶も箸もあるけど」

「だよね」

何が嬉しいのか棒を持って笑う二人の子に、ロビンは途方にくれるのだった。しかし、途方にくれている暇はなかった。変わった棒を持たされて、スライムを見つけたら倒すよう強要される。かと思うと、町の周りを一日中歩かされ、薬草の生えている場所をチェックさせられる。昼を食べる頃には、もうへとへとになっていた。