軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

422 決勝進出

四百二十二

つつがなく終了した決勝トーナメント二日目。本日の解説も好評のうちに終えたミラは今、王城の一室にきていた。

その部屋は研究室として九賢者用に貸し出されている場所であり、ミラ以外にも現在ニルヴァーナ城に滞在している九賢者達の姿もあった。緊急招集と称して、ミラが集めた結果だ。

なお決勝トーナメント中のメイリンは、公正を保つために欠席だ。

それというのも、集めた理由に関係する。

「──と、どうにも、どこかしらで戦ったような覚えがあるのじゃが、思い出せなくてのぅ。どうじゃろう、心当たりはあるか?」

招集した理由はトムドッグの正体について追及するためだった。ミラは皆が揃うなり早速、試合中に感じた事も含めて話した。

「あー、確かに凄く強そうだったけど、ちょっとわからないかなぁ」

トムドッグという選手はトッププレイヤーの一人であり、どこかしらで出会った気がするのだが、はて誰だっただろうか。

更には幾つかの資料も加えられた問いに対して、一番に答えたのはカグラだった。

とはいえ、その内容は見当もつかないというもの。幾らか考えてみたがトムドッグの戦闘スタイルに見覚えはないそうだ。

「うーん、ごめんなさいね。記憶にないわ」

「見たところ、まあまあ特徴的だったからなぁ。出会っていれば多少は思い出せそうだが、さっぱりだ」

アルテシアとルミナリアもまた、そう答えた。これといって戦った覚えはないそうだ。

となれば、何かしらで共闘したりした事のある者だろうか。

または、戦争の際に相対したプレイヤー達に紛れていたか──と、ミラが次の可能性を探ろうとしたところである。

「俺も、どこかで見覚えがあると思ってた。だが、同じくどこでだったか微妙に思い出せない」

ここまで考え込んでいたソウルハウルが、そんな事を口にしたではないか。

しかも、それだけでは終わらない。

「そう言われてみると、だ。確かにあの戦い方といい、どこかで見た……いや、やり合った事がある気が……」

ラストラーダもまた、思い返したところで記憶のどこかに引っかかると言い始めたのだ。

それこそ戦闘スタイルが、昔出会った誰かに近かったと。

「そうじゃろう!? やはり、どこかしらで会っているのじゃよ!」

気のせいではなかった。共感を得られたミラは、やはりどこかで会った事があると確信をもって、ゲーム当時の出来事をあれやこれやと思い返していく。

まず一つ、戦争の際にという線は薄そうだ。

敵にしろ味方にしろ、戦争時に出会っていたなら多少なりとも記憶に残るはずだが、ルミナリアとカグラ、アルテシアは、出会った事すらない様子である。

対して、ミラとソウルハウルにラストラーダは覚えがあった。

三人で何かをしていた時だろうか。それとも他に接点などがあるのだろうか。

「どこじゃったかのぅ……」

「うーん、誰だったか」

「なんかこう……思い出そうとすると熱い感情がこみ上げてくるな」

三人で考えていたところ、ラストラーダがどことなく正義が震えると言い始めた。

それはもしや、出会った時の感情も記憶に残っているのでは。

何か思い出すきっかけになるかもしれないと、ミラ達はその可能性について追及していった。

当時も今も正義に燃えるラストラーダは、この世界においても似たような行動をとっていた。

つまりは正義の味方として、パトロール染みた事をしていたのだ。

彼の正義を震わせる事。それは、悪と対峙した時。

「悪というと、悪魔か魔獣か盗賊か……」

悪と言っても、そのあり様は様々だ。ただ、それがプレイヤーだった場合、状況は幾らか絞り込める。

そして、ようやく考える方向性が定まって来たところで、三人は遂にその答えに辿り着いた。

「そうか、レヴィアードじゃ!」

「レヴィアードだな」

「ああ、レヴィアードだった!」

そう三人が揃って口にした名前。それは、プレイヤー達の間でも特に有名な人物であった。

レヴィアード。何と言っても彼は、最強のプレイヤーキラーとして大陸中に名を馳せていた実力者だ。

その強さは本物であり、数多くのトッププレイヤーを中心に標的としていた事でも有名だった。

かの十二使徒や名も無き四十八将軍の中にも、彼に負けた事がある者がいるほどだ。

道理で覚えがあるはずだ。そう三人は納得する。なぜならば、他のトッププレイヤーと同様に襲われた事があったからだ。

「出会った時は、ギザギザした鎌を持って、もっと禍々しい恰好をしておったからのぅ」

ミラもといダンブルフの頃に出会った結果は、勝利に近い引き分けだ。軍勢による長期戦に持ち込んだ末、音を上げたレヴィアードが逃走するという結末である。

「遭遇時のインパクトが強過ぎた。直ぐに気づけというのが無理な話だ」

ソウルハウルもまた引き分けと言っていいだろう。巨壁による守りで攻め込む隙を与えなかったが、同時に出られなくもなったためだ。

「あの時と比べれば、イメージがまったく重ならないからな!」

ラストラーダは、この中で唯一勝利していた。自国、そして同盟国のプレイヤーの被害を止めるために立ち上がった彼は、その通りに正義を執行したわけだ。

とはいえ、激戦に次ぐ激戦の末での勝利である。

そんな、九賢者ともまともにやり合えるレヴィアードは、それこそ死神とでもいった呼び方が相応しいと思えるほどの服装をしていた。

その時のイメージしかない三人は、直ぐに気づけないのも無理はないと声を揃える。それほどまでに、大会での見た目の印象が違っていたのだ。

「レヴィアードといえば、確かヴァレンティンさんも襲われたとか言ってたような」

ミラ達が、そうだったそうだったと確認しあっていたところで、ソウルハウルがそんな事を口にする。

「あー、そうじゃったのぅ。大魔獣ラーヴァリグスとのレイド戦前じゃったか」

そういえばと当時の出来事を思い返したミラは、その点において、ちょっとした笑い話になっていたとほくそ笑む。

「あ、確かその人に負けてデスペナ喰らって、一週間前からの予定が流れたんだっけ」

カグラもまた思い出したのか苦笑気味に、だがそれでいて懐かしむように笑う。

「そんな事もあったなぁ。で、後から来たレイヴン達に全部かっさらわれたんだったな」

あの時は傑作だったと大いに笑うルミナリアは、「結局、次の予定を立てる前に終わっちまったんだよな」と、ぽつり呟いた。

そのように当時の出来事について、今となっては笑い話だと語らうミラ達。

ただ一人、アルテシアだけは「あらあら、笑っては可哀想よ」とヴァレンティンの肩を持つ。

魔物や魔獣の類において、滅法強い退魔術。ただその反面、対人戦は得意ではない術種でもあり、それを専門とするプレイヤーキラーとの相性はすこぶる悪かった。

しかもレヴィアードともなれば、プレイヤーキラーの中でも最強と称されていた人物だ。尚更、ヴァレンティンが勝てる要素は薄いというものだろう。

「よもや、対人の専門家も来ておったとはのぅ」

「こりゃあ、結果がわからなくなってきたな」

どうにも無差別級の結果が予想出来なくなったとミラが苦悶を浮かべるのに対して、ルミナリアはどこか楽しむような笑みを浮かべた。

最強のプレイヤーキラーのレヴィアードが登場した事で、このままメイリンが順当に優勝で終わりというわけにはいかなくなった。

順調に勝ち上がれば、両者が出会うのは決勝戦だ。

人や魔物を問わず強い相手を求めて各地を巡るメイリンと、対人戦に特化したプレイヤーキラーのレヴィアード。

そんな二人の戦いは、どれほどのものとなるのだろうか。

決勝は非常に荒れそうだと確信したミラは、ブルースの影が薄くなりませんようにと、ただ祈るばかりであった。

決勝トーナメント三日目。今日の日程は無差別級の準決勝に加え、各部門の決勝。

そしてもう一つ。招待選手として特別に組まれた、ゴットフリートとサイゾー、エリュミーゼによる模擬戦も残っていた。イラ・ムエルテとの決戦において『 名も無き四十八将軍(ネームレスライン) 』の戦力を借りるための方便として組んだ模擬戦だ。

そんな理由とはいえ、今日の闘技大会において盛り上がる事間違いなしのスケジュールだ。

まず始まったのは無差別級の準決勝。

メイリンは、かの地下闘技場王者、ザッツバルド・ブラッディクリムゾン・キングスブレイド唯一のライバル、エルヒース・ゲインとの闘いを制し決勝へと駒を進めた。

(……あ、そういえば、メイリンに負けたのがきっかけで司祭になったという話じゃったのぅ)

エルヒースのライバルとして、ザッツバルドの話を解説に挟んでいたミラは、そこでふと、その本人に出会ったいつぞやの事を思い出す。

ソウルハウルと共に古代地下都市より地上に戻ってきた際、その出口となっていた教会の司祭が、そのザッツバルド・ブラッディクリムゾン・キングスブレイドであったと。

そして、メイリンに感謝している事を伝える約束をしていたなとも思い出したミラ。

(まあ、試合後でも構わぬか)

これが終われば時間は幾らでもある。そう考えたミラは解説に気を戻し、舞台上の無邪気なメイリンを見つめ、あれの何がどう影響したのだろうかと眉根を寄せた。

続く準決勝もまた、予想した通りだ。

最強のプレイヤーキラーと名高い、レヴィアード。彼もまた優勝候補とされていたレヴォルド・ガイザーを破り、決勝へと進んだ。

結果、決勝はメイリン対レヴィアードで決まる。

人だろうと魔獣だろうと、強い相手と戦い続けてきたメイリン。対するは、対人戦の専門家といっても過言ではないレヴィアード。

(しかしまた、どのような決着になるかのぅ)

これはなかなか予想のつかない一戦となりそうだ。

だが、召喚術の未来のため、初戦で敗北したブルースのためにもメイリンに勝ってほしいと祈るミラだった。

無差別級決勝は明日。今日の続きは各部門の決勝戦であり、こちらもまた無差別級に負けず劣らず素晴らしい試合が展開されていた。

「おっと、どうしたのか。ローガイン選手の速さが突然失われてしまった!」

「あれは酸欠状態じゃな。それとわからぬように展開された術式によって、周囲の酸素濃度が下げられておる。言わば二人は、高い山の上で戦っているような状態じゃ。そこであれだけ動き回っておれば、こうなるのも無理はないのぅ。対してギュルド選手は最小限の動きしかしておらぬ。完全にこの状況を狙っておったというわけじゃな」

術士部門の決勝にて、選手のギュルドが舞台上に張り巡らせた結界。それを見破るばかりか刻まれている術式をも読み取り効果まで把握していたミラは、ここでもまた絶好調に解説役をこなしていた。

特に術士の手の内ともなればミラに見抜けぬものは、ほぼないといっても過言ではない。本来ならば知られるはずのない術式の秘密までも容易に解き明かしていく。

試合後、色々と解明されてしまったそれらに選手達は愕然とするのだが、それはまた別の話だ。

そのようにして、試合は順調に進んでいった。

十五歳以下、戦士、術士、ペア、チーム他色々。各部門の決勝では、無差別級とはまた違う試合展開なども多く繰り広げられて、こちらもまた大盛り上がりとなった。

部門ごとの優勝者が一人、また一人と決定する。

十二歳という若さで、トーナメントを制した剣の天才。様々な流派の猛者達を制した、我流剣士。緻密な戦略と戦術を駆使した傭兵チームなど。

有名無名問わず、真の実力者が脚光を浴びる闘技場。

そんな彼らを、そこで巻き起こるドラマを見ながら、その舞台に飛び込みたいという衝動を抑えて解説役を全うしたミラ。

だからこそというべきか。ミラの解説も既に大会にはなくてはならないものとなっていた。