軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交流会・開会式編 2

「よお、バカレーネ。お前はどうせランダム枠だろ」

「セシル! 夏休みぶりだね」

癖のある水色の髪と体育着の金色が眩しいセシルは腕を組み、勝気な笑みを浮かべている。

「まあ、今年は俺達パーフェクト学園が勝──」

「きゃーー! レーネちゃん、久しぶり! デビュタント舞踏会以来だね!」

ぐいとセシルを押しのけて現れたのは、続編のヒロインであるアンナさんだった。嬉しそうに私の手を取ってはしゃぐ姿は愛らしく、ハートフル学園の生徒達からの視線を集めている。

「アンナさん、それにディランも! 久しぶりだね」

その隣には吉田とパーフェクト学園に潜入した際に知り合った、ディランの姿もあった。

銀髪褐色イケメンの彼は、リアルハーレムが存在する遠く離れた国の第四王子だったはず。

「ああ、お前は変わってなくて安心したわ。イシダも久しぶりだな」

「イ……? はっ、石田!」

誰のことかと思ったけれど、パーフェクト学園では吉田に「石田」という偽名を使わせてしまったことを思い出す。ユリウス一行と遭遇するという大ハプニングもあり、訂正せずじまいだった。

「ごめんね、実は石田じゃなくて吉田なんだ……」

「吉田でもないんだがな」

「お前ら、相変わらず訳分かんなくて面白いな」

吉田もセシルやディランに再会し、なんだかんだ嬉しそうだ。

友人達にも三人を紹介し、時間があれば最終日なんかにみんなで集まりたいねと話をした。

「杏奈とレーネちゃんは二人で作戦会議もしなきゃだよね? お昼以降は自由時間もあるし、どこかでゆっくり話さない? ハートフル学園も見て回りたいな」

「もちろん、ぜひ! どうか知恵をお貸しください」

手紙でも相談したメレディスの呪いについて、詳しく知りたいと思っている。

「秘密の女子会だから、セシルは呼んであげられなくてごめんね?」

「呼ばれたって行きたかねえよ。いいかレーネ、アンナは本物のバカだから気を付けろ。本気で話が通じないし、俺もこれまで何度も手を出しかけた」

セシルはアンナさんに呆れを含んだ視線を向けており、相当苦労していることが窺えた。

勉強が苦手だとしても、アンナさんはハードモードの私とは違って卒業時にFランクでなければバッドエンドにはならないらしく、焦る必要もないのだろう。

するとなぜかアンナさんは小さな顔を両手で覆い、恥ずかしそうに頬をポッと赤く染めた。

「やだ、セシルのえっち! むっつりなんだから」

「は? は???????」

「でも杏奈には心に決めた人がいるから、セシルのものにはなれないんだ。ごめんね?」

うるうると目に涙を溜めるアンナさんを前に、会話の流れが全く理解できなかった私とセシルはしばらく「???」状態になる。

けれど必死に考えた末、アンナさんは「手を出す」という言葉を暴力ではなく、恋愛における意味だと受け取ったのだと気付いてしまった。

未だに困惑している従兄弟にそれを伝えると、セシルは怒りで震えながら固く拳を握りしめた。

「俺悪くないよな? 殴っていいか? いいよな?」

「お、落ち着いて!」

アンナさんの恐ろしい勘違いでむっつり扱いされた上、一方的に振られたセシルには同情を禁じ得ないものの、暴力はよくないと必死に腕にしがみつく。

そうしているうちに開会式が始まるというアナウンスが流れ、各校ごとに並ぶこととなった。

開会式が始まり、学園長や各校の先生の挨拶、そして競技の説明がされる。

前世での学生時代もそうだったけれど、どうしてこういう集まりは眠くなってしまうのだろう。

ヴィリーなんて立ったまま寝ていて、私も欠伸を必死に噛み殺していた時だった。

「──次に選手代表の挨拶、前回の優勝校であるハートフル学園、ユリウス・ウェインライト」

「はい」

名前を呼ばれ、凛とした声で返事をしたのはなんとユリウスで、驚いてしまう。選手代表の挨拶をするなんて聞いておらず、さっきまでの眠気は嘘みたいに吹き飛んでいた。

壇上で挨拶をするユリウスは堂々としていて、その姿に男女問わず誰もが見惚れている。先程まで眠そうにしていた生徒もこっそりお喋りをしていた生徒もみんな、目を奪われていた。

「今回の交流会を通して、学業だけなく──……」

ユリウスは異常にモテるとアーノルドさんが言っていたけれど、その理由も分かる気がした。

容姿が美しいのはもちろん、他者とは比べ物にならないほどの存在感がある。溢れ出る自信や存在するだけでその場を華やかにするオーラが、より周りを強く惹きつけるのかもしれない。

「…………っ」

そんなユリウスの視線は、ずっとまっすぐ私にだけ注がれていた。まるで他になんて興味が一切ない、とでも言うように。

ドキドキが止まらなくなる私を見てユリウスは満足げに笑うものだから、恥ずかしくなって顔を逸らす。いつも私ばかりが動揺させられて悔しいけれど、いつだってユリウスが上手だった。

すると視線を逸らした先には綺麗に整列したパーフェクト学園の生徒の列があり、みんながユリウスに見惚れている中、一人だけ暗い表情を壇上に向けていることに気が付く。

「…………?」

背丈や雰囲気的に、三年生だろうか。

輝く金色の髪をした男性は、横顔だけでもかなり整った顔立ちをしているのが分かる。すらりとした長身と引き締まった体躯も相俟って、モデルみたいだという感想を抱く。

体育着も金色で、Sランクのエリートであることが窺える、けれど。

ユリウスへ向けられているアメジストによく似た瞳には、明らかな敵意が込められていた。