軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交流会・開会式編  1

あっという間に迎えた、ハートフル学園VSパーフェクト学園の交流会当日。

いつも通りユリウスと共に登校した私は、校舎裏にあるグラウンドを見て息を呑んだ。

「えっ、何あれ」

「すごいよね。相当な金がかかってると思うよ」

そう、そこには巨大なドームのような建物があったからだ。昨日の放課後にはなかったし、一夜にしてあれほどのものが建つなんて信じられない。

「あれ、普段は別の空間にしまってあるんだって」

「あんなに大きな建物をしまう……すごすぎない?」

まだこのファンタジー世界には不思議がいっぱいだと思いながら、感嘆の声を漏らす。

ユリウスはそんな私を見てくすりと笑うと、ぽんと頭を撫でてくれた。

「着替えてから集合だと思うから、また後でね」

「うん! 頑張ろうね」

笑顔で手を振って別れ、まずは更衣室へと向かう。

『絶対に二度とその話はしないで』

──あの日、夕食時に顔を合わせたユリウスは驚くほどいつも通りで、あれは夢か何かだったのではないかと思えたくらいだった。

正直かなり気になるし、呪いについてベルマン先生にもっと聞きたい気持ちはあるけれど、あんなユリウスを見てしまった以上、言う通りにしようと思う。

「おはようございます!」

「レーネ、おはよう。今日も元気いっぱいね」

「ああ、おはよう」

教室に入ってすぐ、体育着姿のテレーゼと吉田の姿を見つけた。

参加する選手以外は制服のままのため、二人の姿は教室内でもかなり目立っている。

「二人で何を見てたの?」

「今回の競技ドラゴンのリストよ。パートナーを選手が選べるそうだから」

どうやら三日目に行われる地獄のドラゴンレースについて、打ち合わせをしていたらしい。

ちなみになぜ地獄かと言うと、ドラゴンの最高速度は500キロほどだそうで、振り落とされないようにするだけでも至難の技なんだとか。速すぎてもうよく分からない。

「気性が荒い方がスピードは出るらしいんだけど、他のドラゴンと戦闘になってしまった場合は時間のロスになるから、パートナー選びも気を付けなきゃねって話していたの」

「難易度壊れてない? 学生にさせる競技じゃないと思うんですけど」

その上、ドラゴンの性格にはかなり個体差があるらしく、気性が荒いもの同士は競技中に戦闘になってしまうことも少なくないそうだ。

それに比べると、去年私が参加した体育祭での障害馬術は、遊園地のアヒルレースくらいのゆるさに思えてくる。アーノルドさんとの触れ合い練習を含めると尚更だった。

「とにかく二人とも、怪我をしないようにね」

「ああ。お前の魔の森での競技は明日からだろう、しっかり準備しておけよ」

「分かったよ、パパ」

「パパでもない」

そんな会話をしているうちにヴィリーや王子、ラインハルトも登校してきて、みんなで早速競技場へと向かうこととなった。

うちのクラスからの出場は私達六人で、同学年のクラスの中では最多だという。

「レーネちゃん、頑張ってね。たくさん応援するよ!」

「ありがとう! 少しでも得点、稼いでくるね!」

クラスメート達も激励してくれて、よりやる気が出てくる。

交流会は今日から全部で七日かけて行われ、その間は全校生徒、普通の授業は全て休みになる。

参加選手以外は応援に徹し、かなり盛り上がるイベントだそうだ。

「責任重大だし、頑張らないと」

「……あまり気負わなくていい」

「えっ」

ワクワクする反面プレッシャーも感じていると、隣を歩いていた王子に声を掛けられた。

いつも通り無表情だったけれど、その言葉からは優しさや気遣いが感じられ、胸を打たれる。

「セオドア、良いこと言うじゃん! ま、俺らもついてるしな」

「うん。せっかくみんなで出られるんだし、楽しいことも責任も全部分け合おうよ」

「そうね。二年に一度だから、私達は最初で最後だもの。たくさん思い出を作りましょう」

王子に続いてヴィリーとラインハルト、テレーゼも励ましてくれて、ぐっときてしまった。

どんな時でも友達というのは本当に心強くてありがたい宝物のような存在だと、実感する。

「み、みんな……! ありがとう、始まる前から泣きそうだよ」

「吉田も『その涙は閉会式で表彰されるまで取っておけ』ってさ」

「俺は何も言っていないんだが。……だが、何かあればすぐに言え」

適当なことを言うヴィリーに肩を組まれた吉田も、やれやれといった表情を浮かべながらもそう言ってくれた。困ったことがあったら一人で空回りせず、頼らせてもらおうと思う。

「ありがとう、吉田。お言葉に甘えて、泣く時は吉田の胸の中にするね」

「俺の話を聞いていたか?」

そんなこんなで競技場に足を踏み入れると、中は驚くほど広くて綺麗で、再び驚いてしまう。みんなも同じ反応をしていて、感動したように辺りを見回していた。

競技場の中心にはステージや大きなスクリーンがあり、数え切れないほどの観客席がそれらをぐるりと囲んでいる。魔の森や湖での競技の様子はスクリーンに映し出され、実況されるらしい。

「一般の観覧者も大勢くるから、観客席はいつも埋まるそうよ。騎士団のスカウトも来るみたい」

「そんなにも大勢の人の前でボコボコにされると思うと、逆にワクワクしてきた」

「レーネが追い詰められておかしくなっちまった」

初日である今日は開会式のみが行われ、実際の競技は明日からの五日間で行われる。

二日目がチーム湖の水竜討伐、三日目が魔の森の魔蝶捕獲、四日目がドラゴンレース、五日目と六日目が個人戦となっている。そして七日目が閉会式だ。

「でも開会式って、何をするんだろう」

「ただ並んで学園長とかの話を聞くだけだよ。三十分くらいで終わるんじゃないかな」

「ユリウス」

いつの間にか側へ来ていたユリウスによって、後ろから抱きしめられる。

その後ろにはツインテール姿のミレーヌ様がいて、あまりの可愛らしさに顔中の穴という穴から血を吹き出すかと思った。

「ミレーヌ様、すごく可愛いです! お姫様みたい!」

「ふふ、ありがとう。クラスの子に結ばれたんだけど、そう言ってもらえて嬉しいわ」

「えー、レーネちゃん、本当にそう思ってる? 痛々しくないかな」

「お前も痛々しい姿にしてやってもいいのよ」

「あはは、意味が違わない? って痛たた」

失礼なことを言うアーノルドさんの顔を殴りながら、ミレーヌ様はにっこりと微笑む。

以前から思っていたけれど、この二人は喧嘩するほど仲が良いという感じの関係らしい。

「お前ら、うるさいよ。閉会式は表彰とかもあるから、結構長いんだけどね」

開会式はあっという間に終わるそうで、その後は競技場を使って練習をしていいんだとか。

「個人戦はあのステージを上手く利用することが大事だから、少し練習していく?」

「ありがとう! ユリウスが良ければそうしたいな」

「了解。すぐに埋まるから先に予約してくるよ」

ユリウスは片手を振り、アーノルドさんやミレーヌ様と共に人混みの中へ消えて行った。

「お前の兄ちゃん、マジ頼れる男だよな。かっけー」

「…………」

ヴィリーは魔の森での競技に向けた練習を通してユリウスに憧れ、かなり懐いているようだった。同意している王子も練習中はユリウスの言うことをしっかりと聞き、くっついて行動している。

ユリウスも言葉にはしていなかったけれど、そんな二人を可愛がっているように思う。

そんな中、辺りがざわっと騒がしくなったかと思うと、私達とは違う体操着を身に纏った大勢の生徒が綺麗な列を成し、競技場内に入ってくるのが見えた。

「お、パーフェクト学園の奴らが来たみたいだな。軍隊みてえ」

「なんか全員めちゃくちゃ強そうなんですけど……」

六十人の生徒はみんな、スタイリッシュな体育着に身を包んでいる。

私達とは色違いの同じデザインで、ランクの色が反映される点も同じらしい。やはりほとんどがSやAランクで、誰もがエリート感を醸し出している。

その強者オーラに圧倒されていると、そのうちの数人がこちらへ向かってきた。