軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談第21話 元町人Aは歓迎を受ける

夕方までかかってしまったが荷物の搬入も終え、どうにか仕事をしつつ暮らせるだけの環境を整えることができた。

「みんな、よくやってくれた。日当は村長から支払われるので、それぞれ受け取ってくれ」

俺がそう告げると、荷物の搬入を手伝ってくれた村人たちから歓声が上がった。するとクラウスが声を掛けてくる。

「アレン卿、村長より晩さん会の誘いを受けています」

「ああ、分かった」

俺はクラウスたちに連れられ、村長の家へと向かう。

村長の家といっても俺が錬成した洋館やヴィーヒェンにある建物とは違って木造ではあるものの、他の村人たちの家と違ってかなり大きい。

どれぐらい大きいのかというと、正面の幅はテニスコートの長辺くらいはある。そして村人たちの家は小さな平屋なのに対し、村長の家は二階建てで見張り用と思われる塔もある。

ちなみに村長の家が大きいのは別に村長が贅沢しているからではない。村長の家は村役場を兼ねており、さらに魔物が攻めてくるなどといった有事の際には村人たちの避難所としての役割もあるのだとという。

そんな余談はさておき、俺たちは村長の家へと到着した。建物の前では村長のハンスが出迎えてくれる。

「英雄様、おかえりなさいませ。準備は整っております」

「ああ、ありがとう」

「さ、どうぞこちらへ」

ハンスに案内され、俺は建物の中に入る。そしてエントランスを抜けて廊下を歩き、奥の一室に案内された。そこには長いテーブルがあり、それを囲うように席が設けられている。

「アレン・フォン・ラムズレット様がいらっしゃいました!」

村長がそう呼びかけると、席に着いていた参加者たちが一斉に立ち上がり、俺に向かって礼を 執(と) ってくる。

ざっと見渡した感じ、ほとんどの席は埋まっているようだ。どうやら俺たち以外の参加者はすでに到着していたらしい。

「さあ、どうぞこちらの席にお掛けください」

「ああ」

俺は促されていわゆるお誕生席に座り、ハンスが俺の左隣に、クラウスが右隣に着席した。するとすぐにワインの注がれたグラスが運ばれてくる。

「ご列席の皆様、我らがラムズレット王国をお救いくださった英雄にしてアナスタシア王女殿下の夫君であらせられるアレン・フォン・ラムズレット様に乾杯の音頭をいただきます」

え? ああ、それもそうか。聞いていなかったが、そりゃあ立場的にそういう役目は回ってくるよな。

俺はグラスを手に持ち、立ち上がる。

「みんな、よく集まってくれた。俺がアレン・フォン・ラムズレットだ」

そう言って俺は参加者の顔をぐるりと見回す。

なるほど。どうやら村人たちもそれなりに参加しているようだ。

「聞いているかもしれないが、これから俺たちは近隣の森の魔物の駆除と道の開削をする予定だ。冒険者が訪れ、商人が訪れ、ヴァイセンハーフェンはきっと豊かになっていくことだろう」

村人たちは希望に満ちた表情で俺の話を聞いている。とはいえ、長々と挨拶するのもどうかと思うので、早々に乾杯してしまおう。

「では、そんなヴァイセンハーフェンの未来に、乾杯」

「「「乾杯」」」

俺がそう言ってグラスを掲げると、参加者も一斉にグラスを掲げた。

俺は口をつける振りだけして着席した。するとハンスが目ざとくそれを見つけ、不安げな表情で声を掛けてくる。

「おや? 英雄様、私どものワインはお気に召さなかったのでしょうか?」

「いや、俺は酒はあまり飲まないんだ」

「なんと……!」

ハンスはそう言うと、やや残念そうな表情になった。

「せっかく用意してくれたのにすまない」

「いえ……よく調べずに申し訳ございません」

「いや、構わない。そもそも、そんな情報は伝わっていないだろうしな」

「申し訳ございません」

ハンスは恐縮しきっている様子だが、すぐに話題を変えてくる。

「ところで英雄様。これは私の娘でして、名はレーアと申します」

そう言ってハンスの後ろに立っているメイド服姿の若い女性を紹介してきた。

「ああ、そうか」

「どうでしょうか? レーアは親の私が言うのもなんですが、器量よしですし、村一番の美人と評判なのですが……」

「え? あ、ああ。そうだな。綺麗な娘さんだな」

俺にはアナがいるのでまるで興味はない。だからといってわざわざ公衆の面前で恥をかかせるのもかわいそうなので、俺はお世辞を言った。

「ええ! そうなのです! 自慢の娘でして!」

「そ、そうか……」

気を良くしたのか、ハンスは娘自慢をしてくる。しかもこの娘さんも満更ではないようで、ほのかに顔を赤らめている。

「英雄様、果実水でよろしいでしょうか?」

「ああ、頼む」

「かしこまりました。レーア、用意しなさい」

「はい、お父様」

娘さんはそう言うと俺に向かって一礼し、下がっていくのだった。