軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談第20話 元町人Aは魔物の駆除の準備をする

ヴィーヒェンでの仕事をアナに任せ、俺は今ヴァイセンハーフェンにやってきている。先遣隊がすでに到着しており、事前の準備を整えてくれていたためスムーズに村長に会うことができた。

「英雄様、ようこそお越しくださいました。わたくしめが村長のハンスでございます」

そう自己紹介をしてきた村長の顔には深い皺が刻まれており、かなり高齢のようだ。しかもかなり痩せているうえに日焼けもしており、この村の生活があまり豊かではないことが一目でわかる。

「アレンだ。よろしく頼む」

俺は村長と握手をした。その手はごつごつしており、この年齢でもなお野良仕事に従事しているだろうことが伝わってくる。

「忙しかったのだろう? すまない」

「いえいえ。ご領主様……ではありませんでしたな。国王様が冒険者様を送って魔物の駆除をしてくださるということで、大変感謝しております」

そう言ったものの、村長の表情は晴れない。

「どうした? 何か不安があるのか?」

「……その、お恥ずいのですが、実は蓄えがあまりなく……」

「食料のことなら心配しないでいい。麦は運んでくるし、狩った魔物の肉で余った分は村の者たちにも分ける予定だからな」

「……ですが、お支払いできるお金は……」

「宿代の代わりとでも思っておいてくれ。今回はお金のことは気にしないでいい」

すると村長はホッとした表情を浮かべた。

「村長、どういうことだ? まさか、彼らに金を要求されたのか?」

そう言って俺は同席している先遣隊の役人たちのほうをちらりと見た。すると村長は気まずそうな表情を浮かべながら彼らのほうを見遣り、すぐに申し訳なさそうに視線を 逸(そ) らした。

「クラウス、どういうことだ? 今回は王国が費用を持つと伝えておいただろう?」

「ええ、そのように村長にもお伝えしていますよ。そうですよねぇ?」

「は、はい……」

「じゃあ、さっきのはどういうことだ?」

「さて……」

クラウスはじっと考え込むような仕草をする。

「ああ、もしかすると」

「なんだ?」

「最初に村長が提示してきた食料支援の量が、人数から計算すると半年分でした。ですが、英雄殿の計画では三か月でした。ですので三か月を超える分は実費を支払うようにと伝えました。三か月を超える分は実質的にこの村の備蓄になってしまうでしょうから」

「……村長?」

「そ、それは……その……」

「ああ、あとは……」

「まだあるのか?」

「いえ、あるというか想像なのですが、魔物の肉という話は初耳でした。ですので、もしかするとそれが三か月分の食料支援に含まれていないのだと勘違いしたのかもしれません」

「……村長、どうなんだ?」

「そ、そのとおりでございます」

村長はクラウスの言葉に同意したが、渡りに船とばかりに嘘をついて誤魔化したのだろうということは明らかだ。

やれやれ。仕方ないな。

汚職を野放しにしたくはないが……今のところは未遂に終わっている。魔物の駆除のほうが優先だろうし、一旦は見なかったことにしておこう。

「そうか。そういうことなら気にしなくていい。さっきも話したとおり、冒険者たちが駆除した魔物の肉の余りは村の者たちにも無償で分け与えるつもりだ」

「はい。ありがとうございます」

それからも俺は村長に話を聞き、村の周囲の情報を確認するのだった。

◆◇◆

村長の家を出た俺はクラウスたちに案内され、村内の少し外れた場所にある空地へとやってきた。そこには木材や石など数多くの建築資材が山積みにされている。また、近くには荷物運びを手伝ってもらうために集まってもらった村人たちがおり、さらに大勢の子供たちまで集まっている。

子供たちはもちろん野次馬だろう。

そういえば、イエルシュドルフに行ったとき (※) は村の子供に魔法を見せてくれって散々せがまれたっけな。

「さて、やるか」

俺は用意してきた魔法陣を建築資材を囲うように地面に描いていく。

「なんだ?」

「あれは何をやってるんだ?」

「わかんねぇが……」

「魔法じゃねぇか?」

「えっ!? 魔法!?」

「あのお兄ちゃん、魔法が使えるの!?」

「すごい!」

「いいなぁ」

大人たちの会話を聞いていた子供たちが魔法という言葉に反応し、キラキラした目でこちらを見てくる。

ああ、あのときもこんなだったっけ。懐かしいな。

とはいえ、感傷に浸っている暇などない。さっさとやってしまおう。

「錬成!」

魔法陣が 眩(まばゆ) い光を放ち、一瞬で石造りの洋館が出来上がる。

「おおお……」

「これが英雄殿の……」

「すげぇ~」

「何あれ!?」

「魔法って家ができるんだ!」

「すごいすごい!」

「お兄ちゃん! もっ――」

「コラ! あのお方はお貴族様だぞ! そんな不敬なことをするんじゃない!」

俺のほうに駆け寄ろうとした子供たちを周囲の大人たちが血相を変えて止めている。

ああ、そうだよな。俺も立場が変わったんだ。

寂しいけれど、あのときのようにふるまうわけにはいかないんだ。

「じゃあ、搬入を始めよう。みんな、作業を開始してくれ」

「「「はっ!」」」

俺の号令で、集まった村の大人たちは次々と家具を搬入していくのだった。