軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第383話:手繋ぎ電車と、春色に染まるお着替えタイム

土曜日の午前中。

今日はいつものショッピングモールではなく、電車に乗って少し離れた隣町まで足を伸ばすことになっていた。

お目当ては、メンズとレディースを幅広く取り扱う大型のアパレル専門店と、その近くにある緑色の大型家具専門店だ。

「……ふふっ、なんだか小旅行みたいだね」

休日の少し空いた車内。

横並びの座席で俺の隣に座る凛が、嬉しそうに瞳を細めた。

ガタン、ゴトンと心地よい一定のリズムで電車が揺れるたび、俺たちの肩と肩、そして座席に置かれた手が、触れ合っては離れる。

(……ええい、もどかしいな)

俺は少しだけ周囲の視線を気にする素振りをしつつ、そっと自分の手を滑らせ、凛の小さな手をギュッと握り込んだ。

「……あっ」

「……はぐれないようにな」

座席に座っているのだから、はぐれるわけがない。

そんな苦しい言い訳を口にする俺に対し、凛は顔を真っ赤にしながらも、握り返す手にキュッと力を込めてくれた。

そして、コテンと俺の肩に頭を預けてくる。

「……うん。絶対に、離さないでね」

シャンプーの甘い匂いと、伝わってくる彼女の体温。

車窓から差し込む春めいた日差しよりもずっと温かい空気に包まれながら、俺たちは隣町までの甘い時間を満喫した。

駅を降りて数分歩き、目的の大型アパレル専門店へと到着した。

店内はすっかり春の装いに切り替わっており、パステルカラーの軽やかな生地や、柔らかな花柄のアイテムがズラリと並んでいる。

空間全体がキラキラと輝いているようで、見ているだけで気分が明るくなってきた。

「わぁ……可愛い服がいっぱい……!」

「ほんとだな。春物は色合いが明るくていいな」

「朝陽くん、一緒に選んで! 私、朝陽くんに可愛いって思ってもらえる服が着たいな」

上目遣いでおねだりしてくる凛に、俺は「任せろ」と力強く頷いた。

そして、ここから『氷の令嬢』による、俺のためだけの春服ファッションショーが幕を開けたのである。

まずは一着目。試着室のカーテンが開く。

「ど、どうかな……?」

「……すごい。ペールピンクのカーディガンと白のチュールスカートか、めちゃくちゃ似合ってる。ピンク色が凛の漆黒の髪にすごく映えてて、まるで春のお姫様みたいだ」

「おひめっ……!? も、もう、朝陽くんったら……!」

俺が素直な感想を口にすると、凛は照れ隠しのように両手で顔を覆ってしまった。

続いて二着目。

「こっちは、ミントグリーンのシフォンブラウスと、テーパードパンツなんだけど……」

「おっ、いつもより大人っぽくてドキッとするな。凛はスタイルが良いから、こういうシュッとしたパンツ姿もすごく様になる」

「えへへ……朝陽くんにドキッとしてもらえたなら、大成功だね」

嬉しそうにはにかむ凛。

三着目は、淡いブルーのデニムジャケットに、小花柄のワンピース。

「……これは、反則級に可愛い。そのまま手を引いてピクニックに連れて行きたくなるような、王道のデート服って感じだ」

「っ〜〜! ほんとにピクニック連れて行ってくれるなら、これ着てお弁当作る!」

四着目は、ラベンダーカラーの薄手トレンチコート。さっと羽織るだけで、一気にお姉さんっぽい雰囲気になる。

「これもすごくいい。凛の琥珀色の瞳とラベンダー色がすごく合ってて、なんだかモデル顔負けだぞ」

「モ、モデルなんて……言い過ぎだよぉ……」

そして五着目。

オフホワイトのリブニットに、裾がふんわりと広がるマーメイドスカート。

体のラインが適度に出る、清楚でありながらどこか色気を感じさせる組み合わせだった。

「…………」

「あ、朝陽くん? 変、かな……?」

「いや……似合いすぎてて、言葉を失ってた。……正直、他の男にはあんまり見せたくないくらい綺麗だ」

思わず独占欲がポロリとこぼれてしまった俺の言葉に、凛の顔は今日一番の赤さに染まった。

「……っ! あ、朝陽くんのバカっ……!」

顔を真っ赤にしてカーテンの奥へと引っ込んでしまった凛。

俺は少し反省しつつ、メンズコーナーで見つけた春色のオーバーシャツを手に取った。

「凛、これもどうだ? ユニセックスのシャツなんだけど。これ、二人で色違いで着たら絶対可愛いと思うんだよな」

「……っ! お揃い……着る!」

カーテンの隙間から、顔を真っ赤にした凛が勢いよく顔を出して頷いた。

結局。

「朝陽くんが選んでくれて、似合うって言ってくれたやつ……全部買う!」

俺の褒め言葉の連発にすっかり気を良くした(?)凛は、試着した服をすべてお買い上げすることになった。

いくらなんでも買いすぎじゃないかと止めたのだが、そこは売れっ子イラストレーター。

資金力は潤沢らしい。

「ふふっ、大満足!」

「荷物、半分持つよ。……それじゃあ、次は家具屋だな」

「うんっ! 私たちの特等席、探しに行こっ!」

両手に春服の入った紙袋を提げ(俺もしっかり半分持っている)、ホクホク顔の凛は、俺の腕にギュッと自分の腕を絡ませてきた。

春の足音が近づく陽気の中、俺たちは次なる目的地である家具専門店へと向けて、弾むような足取りで歩き出した。