軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第251話:甘い尋問と、広がる繋がり

「全部言うまでは、絶対ここから逃がしてあげないからね」

真上から覗き込む凛の瞳は、本気だった。

柔らかい太ももの感触と、俺の頬を挟み込む小さな手のひらの温もり。

こんな至近距離で真っ直ぐに見つめられてしまっては、隠し事なんてできるはずがない。

「……わかった。降参。ちゃんと話すから、ほっぺた離してくれ」

「ん。よろしい」

凛が手を離し、代わりに俺の髪を優しく撫で始めた。

俺は天井の照明をぼんやりと見上げながら、三日間ずっと一人で抱え込んでいた思いを、ポツポツと言葉にし始めた。

「……率直に言うとさ。俺、自分でお金を稼げるようになりたいんだ」

「お金?」

「ああ。週末の焼肉の時とかさ……やっぱり、親からの仕送りじゃなくて、ちゃんと自分の力で稼いだお金で、お前やみんなに美味しいものを作りたいなって思って」

俺がそう言うと、髪を撫でていた凛の手がピタッと止まった。

「でも、コンビニとかで普通のアルバイトを始めたら、毎日の買い出しとかご飯を作る時間がなくなっちゃうだろ。それに何より……凛と一緒に過ごす時間が減るのは、絶対に嫌だったんだ」

少し照れくさくて視線を逸らすと、頭上から「ふぅーっ」と、凛が深く安堵するようなため息が聞こえた。

「……なんだぁ。私、朝陽くんに何か嫌われるようなことしちゃったのかと思って、すっごく心配してたんだよ」

「えっ、そんなこと思ってたのか? 違う違う、全然違うから!」

「ん、今はわかった。……それで? バイトに出るのは嫌で、どうやって稼ごうとしてたの?」

再びサラサラと髪を撫でられながら、俺は本題を切り出した。

「最近、スマホで料理の動画をよく見ててさ。俺たちと同じように一人暮らしをしてる高校生で、自炊したくても難しい人って結構いると思うんだ」

「うんうん」

「そういう人たちのために、俺がいつも作ってるような、誰でも簡単に作れる料理の動画を配信したいなって思ったんだよ。家でできるし、凛との時間も減らないから」

そこまで一気に話して、俺は恐る恐る凛の顔を見上げた。

「そんなの無理だよ」と笑われるかもしれないという不安が、ほんの少しだけあったからだ。

でも、凛の反応は俺の予想を遥かに超えていた。

「……っ、すっごくいいと思う!! 大賛成!!」

パァッと花が咲いたように目を輝かせ、凛が身を乗り出してきた。

「朝陽くんのご飯は本当に美味しいし、手際もすっごくいいもん! 絶対たくさんの人の役に立つよ! 私が保証する!」

「そ、そうか? ありがとな。……でも、俺もやろうと決めたのはいいんだけど、動画の撮り方も編集の仕方も機材も、何もかも分からなくてさ。それで三日間、ずっと一人でスマホ見て悩んでたんだ」

「もう、そういうことなら早く言ってくれればよかったのに! 水くさいなぁ」

凛はツンッと俺の鼻先を指でつついた。

「ごめん」と謝りながらも、一人で抱え込んでいたモヤモヤがすーっと晴れていくのを感じた。

やっぱり、凛に話してよかった。

「動画の編集とか機材かぁ……。あっ、そうだ!」

何かを閃いたように、凛がポンと手を打った。

「朝陽くん、動画のこと、私の知り合いに相談してみない?」

「知り合い?」

「うん! 私、イラストの依頼で何回かやり取りしてる人がいるんだけどね。その人、動画の編集をしてる人なんだ」

「へえ、そうなのか」

「でね、その人の彼氏さんが、動画で使うBGMを作ってる人なんだって。二人で一緒に動画制作のお仕事受けてるみたいで、オンラインでの打ち合わせもすっごく優しくていい人たちだったよ!」

動画編集者と、BGM制作者のカップル。

まさに今の俺が喉から手が出るほど欲しい知識を持っている人たちだ。

「え、でも……仕事で知り合った人に、いきなり俺みたいな素人が相談なんかして迷惑じゃないか?」

「大丈夫だよ! 次のイラストの打ち合わせの予定が入ってるから、その時に『彼氏が動画作りたくて悩んでて……』って私から聞いてみる! だから安心して!」

「私が全力でサポートするからね!」と、凛が頼もしく胸を張る。

その言葉が本当に嬉しくて、俺は思わず彼女の手をきゅっと握った。

「……ありがとう、凛。すごく助かる」

「えへへ、どういたしまして。クリエイターとしては、私の方が先輩だからね! いつでも頼ってよね」

「ああ、頼りにしてるよ」

自分一人では暗闇の中を手探りで歩いている気分だったのに、凛のおかげで、一気に明るい道が拓けた気がした。

「今度、そのお二人に連絡取って紹介するね。だから、もう一人で難しい顔するのは禁止!」

「わかった。もう隠し事はしないよ」

凛の柔らかい太ももに頭を預け、優しく髪を撫でられる心地よさに身を委ねる。

やっぱり、この子には一生敵わないな。

そんなことを思いながら、俺の胸の中は、これから始まる新しい挑戦へのワクワクで満たされていた。