軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第60話:最強兵器の解体と、空から降ってきた不憫な客

超巨大コンクリートミキサーの下部から吐き出されたのは、ピカピカに磨き上げられた金属パーツ(元・最新鋭パワードスーツ)と、目を回して倒れているアンダーウェア一丁のエリート兵士たちだった。

その光景を見たケントは、湯上がりのフルーツ牛乳を腰に手を当てて飲み干しながら、プハァと満足げな息を吐いた。

「いいか筋肉たち。これはただ洗濯機で回しただけじゃない。ゴミ処理場でよくやる『風の力を使った分別作業』の応用だ」

ケントの呑気でマイルドな声が、呆然とする一同に響き渡る。

「重い鉄屑は外側に飛ばして、一番柔らかくて軽い『人間』は、真ん中の風の渦に乗せて安全な場所へとフワッと落とす。材料と不純物を傷つけずに綺麗に分ける、現場の 基本(リサイクル) だな」

「国家の最終兵器を、空き缶とペットボトルみたいに 分別(リサイクル) したの!?」

ヘルメット姿の 東雲(しののめ) 霞(かすみ) が、その理不尽すぎる『お片付けシステム』に戦慄してツッコミを入れる。

「おおっ、親方! こいつら、まだ息があるッス! さっそく安全帯を着けて、遊園地の基礎工事(コンクリ流し込み)に放り込みましょう!」

すっかり 親方(ケント) の忠実な現場作業員と化した特務部隊の筋肉たちが、倒れた元・同僚たちを容赦なく引きずり起こそうとする。だが、ケントはピシャリとそれを制止した。

「バカ野郎。洗濯機で回されて目を回してる奴を、そのまま現場に出せるか。 労災(ケガ) でも起きたらどうする! まずはしっかり休ませろ!」

「お、親方……! なんて労働者に優しいんだ……!」

そのケントの『安全第一(ゼロ災)』のホワイトすぎる精神に深く感銘を受けた霞は、愛用のスパナを握りしめたまま、倒れているエリート部隊(かつての自分の上官や同僚たち)の前にズンッと立ち塞がった。

「お前ら! 現場で労災を起こすんじゃないわよ! 親方の迷惑になるだろうが! 少しは安全確認(KY活動)を徹底しなさいッ!」

エリート研究員だったはずの霞が、完全に「現場のお局様」のノリで国家の最高戦力を怒鳴りつけている。

『霞ちゃん、完全に現場の女になってて草』

『元同僚に対して「親方の迷惑になるだろうが」は強すぎるww』

『国家の最終兵器、まさかの労災(体調不良)扱いで大草原』

『ブラック企業出身の親方、労基の遵守にはマジで厳しいの推せる』

ルミナのドローンがそのカオスな光景を映し出し、同接200万人のコメント欄は今日も大爆笑の渦に包まれていた。

***

「まったく。怪我がないならいいが、高所作業には気をつけないとな……ん?」

空の牛乳瓶を置きながら、ケントがふと上を見上げた、その直後だった。

「ぎゃあああああああああっ!!!」

機動部隊が巻き起こした乱気流と、巨大ミキサーが吹き上げた凄まじい『排気(上昇気流)』に巻き上げられ、やたらと長い滞空時間を経て、ようやく『謎の人影』が最下層へと落下してきた。

その人影――頭にアクションカメラを取り付け、ボロボロの迷彩服を着た『サバイバル系不憫配信者・泥水ススル』は、死を覚悟してぎゅっと目を瞑った。

(終わった……! ダンジョン最下層に落下なんて、絶対に全身ミンチになるぅぅッ! 俺の夢見るタワマン生活がぁぁぁ!!)

ザバァァァァァンッ!!

「……ぷはっ!? え……お湯? しかも、なんだこの人間を完全にダメにする『絶妙なナナメの角度』の背もたれは……極楽……?」

彼が落下したのは、死の針山でも煮えたぎるマグマでもなく、ケントが現場の知恵とパズル感覚で石を組んで作った『極上の寝湯』のど真ん中であった。

「って、なんで人類最悪の魔境の底に、こんな完璧なスーパー銭湯ができてるんだよぉぉっ!? どう見てもただの極楽リゾートじゃねえか!!」

死を覚悟したススルの、涙目と混乱が入り混じったツッコミが、平和なアビスの空に虚しく響き渡った。

***

一方その頃。

ミキサーから分別排出され、安全帯の代わりに毛布にくるまれてようやく目を覚ましたパワードスーツ部隊の隊長は、信じられない光景を前に呆然としていた。

「あ、あんたは……テロリスト……!?」

「お、目が覚めたか。まあ、現場で倒れた後は、しっかりまかない(飯)を食って休むのが一番だ」

人の良いマイルドな笑顔を浮かべるケントの手には、大きな熱々のどんぶりが握られていた。

特Sランク魔獣の霜降り肉を、甘辛い特製ダレで限界までトロトロに煮込んだもの。

隊長の目の前に、暴力的なまでの湯気と食欲を狂わせる匂いを立ち昇らせる『究極のダンジョン牛丼(特盛)』が、ドンッと置かれたのである。

「な、なんだこの肉は……! 一口食っただけで、脂の甘みと濃厚なタレが脳天を突き抜ける……ッ! う、美味すぎる……!」

ガツガツと牛丼を掻き込みながら、国家の命運を背負っていたはずのエリート隊長は、ボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。

「俺の……俺の今までの 軍隊生活(レーション) は何だったんだ……! こんな美味い飯が食えるなら、俺も今日からこの現場で働かせてくださいッ!!」

「ふむ……なんじゃこの肉の脂とタレが織りなす香りは……! 人間、吾輩にもその牛丼をよこすのじゃ!」

横ではコア公が、目を輝かせてよだれを垂らしていた。

死を覚悟して落ちてきた不憫な配信者と、牛丼一杯で寝返った国家の最強部隊。

新たなる迷子(労働力)たちを迎え、アビス最下層の極楽リゾートは、さらなる飯テロとカオスへと突き進んでいく――!