軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第46話 鬼の現場監督、怒りの突貫工事

「エリート君! 自転車部隊に伝えろ、ここから魔力消費が跳ね上がる。死ぬ気で漕げ! ここを乗り切ったら『特別危険手当』として、明日のまかないは特S級ステーキとジェラートの食べ放題だ! 割増賃金もきっちり出すぞ!」

「「「うおおおおッ! 一生ついていきます親方ァァァ!!」」」

ケントの破格のボーナス宣言に、特務部隊の屈強な男たちが歓喜の雄叫びを上げる。

東雲(しののめ) 霞(かすみ) がドン引きして悲鳴を上げる中、彼らはエアロバイク型魔力ジェネレーターのペダルを、脚が千切れるほどの猛烈な勢いで漕ぎ始めた。ギュイィィィンと要塞の魔力タンクが限界突破の音を立てて充填されていく。

ケントの瞳が青く発光した。

メインモニターに映る、要塞を噛み砕こうとする超巨竜の姿が、ケントの脳内で『青いワイヤーフレームの立体設計図』へと変換される。

「ふん、全身アダマンタイトで固めてるつもりだろうが…… これだけの超質量を支える骨格の 接合部(ジョイント) に、明らかな構造的歪みが出てるぞ。 目地(めじ) の処理も甘いし、重さの逃がし方もガバガバだ。自然発生した魔獣だから仕方ないが、完全な設計不良の欠陥住宅だな」

ケントはツールベルトから、予備の『氷の魔石』と、先ほど解体したばかりのSランク魔獣の心臓部をまとめて取り出し、コンソールの上にドンッと並べた。

そして、己のスキル【超速クラフト】の真髄を解放する。

「解体プラン、決定。粗大ゴミがデカすぎてシュレッダーに入らないなら――『 杭(パイル) 』で打ち抜く。総員、衝撃に備えろ!!」

トンッ!!

ケントの愛用の金槌が、コンソールの予備回路を叩いた。

ガシャンッ! ゴォォォォォンッ!!

要塞の地下区画で、これまで眠っていた巨大な油圧ジャッキが急展開する。ケントの思考と要塞のOSが直結し、その場で新しい防衛プログラムが突貫工事で書き換えられていく。

要塞の正面装甲が観音開きに割れ、そこからせり出してきたのは、一本の巨大な鋼鉄の柱だった。

「う、嘘でしょ!? 要塞の内部に、あんな超巨大な『パイルバンカー(ロマン兵器)』を隠し持っていたなんて……!」

霞がアニメや漫画でしか見ないような兵器の姿に絶望まじりに叫ぶが、ケントは呆れたように鼻を鳴らした。

「エリート君、アニメの観すぎだぞ。アレはパイルバンカーじゃねえ。この要塞を建てる時に、岩盤に基礎を打ち込むために使ったただの『重機(杭打ち機)』だ」

本来は真下を向いているはずの土木設備を、ケントはスキルの暴力と魔獣の素材を使って、強引に『特Sランク解体用の水平撃ちモード』へと魔改造していたのだ。

「事前に仕様書はしっかり読んでから来いッ!!」

ケントがコンソールの起爆スイッチを力強く叩き込む。

巨竜が咆哮を上げ、要塞を噛み砕こうとさらに力を込めた、その瞬間。

――ドォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

要塞全体が浮き上がるほどの爆発的な衝撃波が放たれた。

超高圧で圧縮された魔力推進によって撃ち出された巨大な杭が、アダマンタイト・ドラゴンの眉間――建築力学によって導き出された『唯一の脆弱な接合部』へと、寸分の狂いもなく突き刺さった。

「グ、ギ……ッ!?」

核魔法すら弾く最高硬度の鱗が、ピキピキと音を立て、まるで薄いガラス細工のように粉々に砕け散る。

杭はそのまま巨竜の脳天を完全に貫き、地殻を揺らすほどの圧倒的な運動エネルギーをその巨体へと流し込んだ。

どれほど神話級の防御力を持っていようと、一級建築士が計算し尽くした『最短の解体ルート』に抗う術はない。

ズズズ、ズゥゥゥゥゥゥン……。

山のような巨竜が、要塞の投入口に頭を突っ込んだまま、ゆっくりと崩れ落ちて絶命した。

『え……?』

『ウソだろ、アダマンタイト・ドラゴンがワンパン……?』

『だからおっさんの建築スキルはおかしいって言ってるだろwww』

配信画面のコメントすら一時停止するほどの、完全なる沈黙。

人類を滅ぼすはずだった天災が、たった一撃の「土木工事」で処理されたのだ。霞も特務部隊も、腰を抜かしたままもはや言葉を発することすらできない。

ケントはふぅと短く息を吐き、歪んだヘルメットの鍔を指で弾いた。

「よし、障害物の撤去完了だ。おいエリート君、ボーッとするな。ラインを再稼働させるぞ」

ケントは平然と振り返り、モニターに映る巨竜の「死骸」……否、「超弩級の最高級建材」の山を見つめた。

「しかし……これだけの量の特Sランク素材。普通に処理して倉庫に突っ込むだけじゃ、流石に勿体ないな」

ケントの目が、狂気的なDIYの光を帯びてギラリと光る。

彼はタブレット端末を取り出すと、新たな設計図(青写真)を画面に表示させ、ニヤリと笑った。

「ちょうどいい。この特Sランク素材を骨組みにして、明日は『アレ』を建てるぞ。エリート君たち、明日は『特別休日出勤(割増賃金200%+極上温泉入り放題)』だ!」

「「「よっしゃあああッ!! 喜んで働かせていただきます親方ァァァッ!!」」」

「「「よっしゃあああッ!! ……って親方! 俺たち防衛省の人間なんで、親方からお給料もらう口座とか無いんですけど……まさか空手形ッスか!?」」」

「馬鹿野郎、俺がそんなブラック企業みたいな真似するわけないだろ。ほら、今日の『日払い(手渡し)分』だ」

ケントは無造作に、先ほど砕け散ったアダマンタイトの破片(拳大)と、Sランク魔獣の魔石をポンッと特務部隊の男たちに投げ渡した。

「ひぃぃっ!? こ、これ、市場に出せば一つで数十億円レベルになる国宝級素材じゃねえかァァァッ!?」

「端数はジュース代にしとけ。明日はそれの倍出すぞ」

「「「一生ついていきます親方ァァァッ!!(号泣)」」」

霞がドン引きする中、国家の最高戦力は、圧倒的な『金払い(現物支給)の良さ』によって完全に買収された。

そんな筋肉たちをよそに、霞が恐る恐るその画面を覗き込む。そこには、巨大なパイプ群と広大な浴場、さらには遊園地のような娯楽施設までが一体となった、常軌を逸した複合施設の図面が描かれていた。

次の瞬間、霞は今日一番の――鼓膜が破れんばかりの悲鳴を上げた。

「ちょっと待って! アビスの最下層で、なんてモノを建てる気よぉぉぉぉっ!?」

――特Sランクの天災すらも「建材」として扱う一級建築士。彼の次なる「狂気の建築計画」とは!?