軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第27話 怒れる本隊の進軍と、こだわりの外構工事

「おのれェェェッ!! なにが『ゴミ捨てライン』だ!! なにが『粗大ゴミ』だッ!!」

地上の探索者ギルド周辺にある、悪徳クラン『黒い毒蛇』のアジト。

その最上階で、クランマスターであるガルドの怒号が響き渡った。

分厚い大理石のテーブルが、彼の拳によって粉々に砕け散る。

ルミナの配信を通じて、世界中に無様な姿を晒された先遣隊のバルカスたち。

彼らの敗北は、単なる部隊の損失にとどまらず、『黒い毒蛇』という巨大クランの悪行の暴露と、社会的信用の完全な失墜を意味していた。

「ギルド本部が我々の査問委員会を開く準備を進めているだと!? ふざけるな! こうなったら、何が何でもあの最下層の利権と、女と、あのふざけたおっさんを力ずくで確保する! それ以外に我々が生き残る道はないッ!」

ガルドは血走った目で、アジトに待機していた数百人の精鋭たちを睨みつけた。

「全軍、武装しろ! 対城塞用の『魔導攻城砲』もすべて持ち出せ! これより本隊がアビスへ進軍し、あのログハウスを木端微塵に包囲・制圧する!!」

クランの存亡とメンツをかけた、数百人規模の重武装集団。

彼らは国境警備隊の極秘ルート(これもまた賄賂で得たものだ)を強引にこじ開け、過去に例を見ない大軍勢で最下層への侵攻を開始したのである。

***

一方その頃。

当の『目標』であるログハウスでは。

「いやぁ、ルミナちゃん。さっきは本当にごめんな。俺としたことが、家づくりに夢中になるあまり、大事なことをすっかり忘れてたよ」

ケントは、ウッドデッキの前に広がる殺風景な紫水晶の荒野を見渡しながら、腕組みをして深く反省していた。

「だ、大事なことですか?」

「ああ。『 外構(エクステリア) 工事』さ。立派な家を建てても、庭や塀がしっかりしてなきゃ、今回みたいに泥棒猫や野良犬……というか『害獣』が、土足で上がり込んできちゃうからな」

ルミナのドローンカメラが、反省顔のケントを映し出す。

『いや、さっきの害獣、人間(極悪クラン)だったけどな』

『おっさんの中では、ただの野良犬扱いww』

『外構工事って……まさか、アビスに「お庭」を作る気か?』

『今、黒い毒蛇の本隊が数百人で最下層に向かってるってネットニュースで大騒ぎになってるぞ! お庭作ってる場合か!!』

リスナーたちの悲鳴交じりのツッコミを他所に、ケントはアイテムボックスから巨大な『黒い大木』を何本も取り出した。

「前に採掘エリアで見つけた『アビス・トレント』の原木だ。これを使って、まずは敷地の境界線をはっきりさせる『外周フェンス』を立てるぞ」

ケントが愛用の金槌をコンッ、と大木に叩きつける。

すると、巨大な丸太が一瞬にして、美しく加工された『黒檀風の木製フェンス』へと変貌し、ログハウスを囲むようにズラリと地面に突き刺さった。

「よし、ただのフェンスじゃ味気ないからな。このアビス・トレントの『魔力を吸って枝を伸ばす』っていう特性を活かそう。……ルミナちゃん、ちょっとそこの魔石のクズをフェンスに投げつけてみてくれ」

「え? こ、こうですか?」

ルミナが小さな魔石をポイッと投げた瞬間。

バチンッ!!

フェンスから目にも止まらぬ速さで鋭い木の枝が鞭のように飛び出し、空中の魔石を完璧に粉砕した。

「ひゃあっ!?」

「うん、自動迎撃の感度も良好だな。悪意のある魔力や物理的干渉を感知すると、自動で枝が『お引き取りください』って追い払ってくれる、 生垣(いけがき) 風の全自動防衛フェンスだ」

『お引き取りください(物理)』

『近づいただけで串刺しにされる凶悪フェンスじゃねえか!!』

『アビス・トレント(Sランク魔獣)をただの生垣にするなww』

「フェンスができたら、次は『アプローチ(玄関までの道)』だな。景観を良くするために、家の周りにちょっとした『お堀』みたいな池を作ろう」

ケントは今度は、スコップを手に取り、ログハウスの周囲をぐるりと掘り進め始めた。【超速クラフト】の恩恵か、土をすくう動作一つでダンプカー一台分ほどの土砂が消え去り、あっという間に幅三メートル、深さ二メートルの立派な『堀』が完成する。

「ただの水じゃつまらないし、ボウフラが湧くからな。そうだ、さっきの『ゴミ分別タンク』で使ってた【ハイスライム】をここに流し込もう」

ドプン、ドプン……。

透明で弾力のあるハイスライムのゼリー液が、堀のなかにたっぷりと満たされる。見た目は涼しげな水路のようだが、その実態は「足を踏み入れた瞬間にすべてを絡め取り、物理的に絶対抜け出せなくなる超高密度の粘液トラップ」である。

「どうだルミナちゃん。洋風のお城の『水堀』みたいでオシャレだろ? ここに可愛い橋を架ければ、完璧なエクステリアの完成だ」

ケントは額の汗を拭い、爽やかな笑顔でサムズアップした。

「す、すごい……! 本当にリゾート地のお庭みたいになりましたね!」

ルミナも純粋に景観の良さに感動して拍手をしている。

『……いや、ルミナちゃん騙されないで』

『これ、軍事用語で「絶対防衛要塞」って言うんだよ』

『Sランクの自動迎撃フェンスに、絶対脱出不可能なスライムの堀』

『攻城戦の準備が完璧すぎるwww』

『本隊が数百人で来るらしいけど、これ絶対中に入れないだろwww』

かくして。

怒り狂う『黒い毒蛇』本隊が、最下層のログハウスに辿り着いた時。

そこには、ただの小屋ではなく、ミリ単位の施工不良も許さない一級建築士が遊び心(DIY)で作った、史上最悪の『全自動迎撃・からくり庭園』が待ち構えているのであった。