軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第26話 害獣駆除システム作動と、完璧な『ゴミ出し』

「ルミナちゃん、危ないからサンルームの中に避難して。……今からちょっと、『大掃除』を始めるから」

ケントが足元の木製ペダルを踏み込んだ瞬間。

リーダーのバルカスは、下劣な笑い声を上げた。

「はっ! 大掃除だぁ? 罠でも仕掛けてあるつもりか! 俺たち『黒い毒蛇』を誰だと思って……」

だが、バルカスの言葉が最後まで紡がれることはなかった。

『黒い毒蛇だと!?』

『おい、マジかよ! ギルドの公式掲示板見てみろ!』

『救出部隊からの緊急通信!【中層にて悪徳クラン『黒い毒蛇』に魔物寄せのアイテムを投げ込まれ、部隊半壊。奴らは我々を囮にして下層へ向かった】って!』

『ふざけんな! 国境警備隊の命を肉の盾にしてここまで来やがったのか!』

『クズ中のクズじゃねえか! ルミナちゃん逃げて!!』

ドローンカメラのコメント欄が、瞬く間に怒りと憎悪で埋め尽くされる。

他者の命を踏みにじり、強欲のままに最下層の利権を貪ろうとする外道たち。

その事実を知ったルミナは血の気が引き、バルカスたちは「バレたか」と舌打ちをして、殺意を剥き出しにして剣を振り上げた。

「チッ……配信されてるなら都合が悪い。お前ら、あの女もろともカメラごと叩き斬れ!!」

三人の部下が、一斉にケントとルミナに向かって跳躍する。

Sランクの武具で武装した彼らの動きは、常人には目で追えないほど速い。

――しかし、ここはケントが『ミリ単位』で構築した絶対防衛区域(からくり要塞)である。

プシュゥゥゥンッ!!

鋭い排気音がログハウスの庭に響き渡る。

風の魔石で極限まで圧縮されていた空気が、ケントのペダル操作によって一気に解放されたのだ。

ウッドデッキの床板がパカッと開き、そこから弾丸のような速度で『何か』が射出された。

「なっ……がはっ!?」

「なんだこれ! 抜けねぇッ!」

空中で三人の部下を完璧に捕らえたのは、ケントが先日『パッキンの材料』として採集していたAランク植物【人喰いツタ】を編み込んだ、特製の捕獲ネットだった。

鋼鉄の鎧すら容易く引きちぎる凶悪な弾力を持つツタは、獲物が暴れれば暴れるほど、その万力のような力で締め上げていく。

わずか数秒で、三人の精鋭たちは手足の骨を軋ませながら、床に転がって無様なイモムシと化した。

「お、おい! お前ら何やってんだ!!」

バルカスが驚愕に目を見開く。

彼らが装備しているのは、数千万円を下らない一級品の魔法装甲だ。それが、ただの『草の網』に手も足も出ないなど、あり得るはずがない。

「はぁ……。最近の『害獣』は本当にタチが悪いな。土足で人の家のウッドデッキに上がり込むなんて。床のワックスがけ、大変なんだぞ」

ケントは完全に「庭を荒らす野良犬」を見るような、呆れた目でバルカスを見ていた。

「ふ、ふざけるなァァァッ!!」

プライドをズタズタにされたバルカスは、激昂して自慢の『魔剣』を振りかぶり、ケントの首めがけて突進した。

直線的な、しかしAランク探索者の全魔力を乗せた必殺の一撃。

だが、ケントは慌てる様子もなく、手元にあった『もう一つのスイッチ』をポチッと押した。

「そっちは『ダストシュート(ゴミ捨て用の穴)』だぞ」

カコンッ。

バルカスが踏み込んだ瞬間の、ウッドデッキの床板。

それはシーソーのようにクルリと回転する『落とし 穴(トラップドア) 』になっていた。

「あ……?」

魔剣を振り下ろす体勢のまま、バルカスの体が宙に浮く。

そして次の瞬間、彼は床下に広がる真っ暗なパイプの中へと吸い込まれていった。

「う、うおおおおおおおっ!?」

床下のパイプ——それは、ケントが生活ゴミや魔獣の解体残骸を自動で屋外へ捨てるために作った『空気圧式・全自動ゴミ回収ライン』である。

ハイスライムの粘液で摩擦ゼロにされたパイプの中を、圧縮空気の力で時速百キロ以上の猛スピードで押し流されていくバルカス。

ズボォォォォンッ!!

数秒後、ログハウスの外れに設置された『特大の透明なタンク』の中に、バルカスは勢いよく吐き出された。

「がっ……ごぼっ!? な、なんだここは……体が、動か、ない……っ!」

彼が落とされたのは、ケントがヒノキ風呂の浄水システムで使っている【ハイスライム】の分離タンクだった。

超高密度のスライムゼリーの中に頭まで完全に沈められ、窒息はしないものの、指一本動かせない『完全な生き埋め状態(標本)』にされてしまったのだ。

「よしよし。空気圧の射出タイミングも、ダストシュートの滑り具合も完璧だな」

ケントは満足げに手をパンパンと払い、サンルームの中で腰を抜かしているルミナに振り返った。

「驚かせてごめんな、ルミナちゃん。でも安心してくれ。うちの『不審者・大型害獣用・自動分別システム』は、どんな凶暴なやつでも一瞬でパッケージングできるから」

『…………』

『…………え?』

『終わり?』

『救出部隊を壊滅させた極悪クランが、わずか十秒で「燃えないゴミ」として処理されたんだが……』

『最強のからくり屋敷www』

『剣すら抜いてない。ただ「ボタン」と「ペダル」を押しただけ』

『ハイスライム漬けにされたリーダーの顔面がアホすぎて草』

『ざまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』

『最高のカタルシス!!! おっさん万歳!!』

他者の命を奪ってでも富を得ようとした傲慢な探索者たち。

彼らの野望は、ケントの「日常のインフラ整備」の前に、文字通り『ゴミ扱い』されて呆気なく終わりを迎えたのだった。

「さて。この『ゴミ』、どうしようかな。とりあえず、後でギルドの人が来たら、粗大ゴミとして引き取ってもらうか」

ケントは転がっているイモムシ(部下)たちをヒョイと持ち上げると、ログハウスの隅にある「ゴミ集積所」へと放り投げた。

剣と魔法の世界の常識は、またしても一人の建築バカな男のDIY技術(と生活の知恵)によって、木端微塵に打ち砕かれたのである。