軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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午前の探索を終えた悠太はマウンテンバイクのペダルを軽快に漕ぎ、愛着の湧き始めた我が城へと急いだ。

今日の収穫は初討伐を含めて計十体のロンリータートル。手に入れた魔石をダンジョン内のショップで換金し、二万五千円の報酬を得た。一見すれば悪くない金額だが、その内容を振り返り、悠太は少しだけ溜息をつく。

十体を狩るのに要した時間は五時間ほど。

計算すると、罠を設置してトドメを刺すまでの討伐時間はわずか三分足らず。残りの二十七分、つまり一日の大半は、広大な草原をあてどなく彷徨う索敵に費やされていることになる。

(……効率がいいのか悪いのか、よく分からないな)

ただ、これは静岡ダンジョン特有の悩みというわけでもなかった。東京にいた頃も状況は似たようなものだ。魔物が密集する人気エリアには必ずと言っていいほど大手ギルドや効率重視のパーティーが陣取っている。他人と競い合うのが苦手で、かつ『罠』という広範囲干渉スキルを持つ悠太が選ぶのは必然的に魔物の少ない不人気エリアになる。

ひたむきに努力を続ける悠太にとって、魔素の増加速度では並の探索者にも引けを取らない自負があったが、こと収入面に関しては常に他の探索者と比べて恵まれない傾向にあった。

「ただいま……って、誰もいないけど」

リフォームされたばかりの綺麗な部屋に戻り、悠太は真っ先に撮影記録の確認作業に入った。

瀬戸から借りた超高額の最新ドローンは撮影技術だけでなく編集機能も異次元だった。

専用のアプリで「ハイライト重視」「◯分構成」などと設定しておけば、AIが戦闘シーンを自動で繋ぎ合わせ、テロップまで入れてダンチューブにアップロードしてくれる。

悠太は冷蔵庫から麦茶を取り出し、ドキドキしながらタブレットの画面を開いた。

「さて!反響はどうかな?」

しかし、画面に表示された数字は冷酷だった。

【同時接続数:0】

【動画再生数:3】

「3? さっき自分のスマホで確認したのが三回だから……実質、俺しか見てないってことじゃん」

分かりやすく肩を落とす悠太。

「ま、まぁ、最初は誰でもこんなもんでしょ。別にダンチューバーになって稼ぎたいわけじゃないし。あくまでメインは防犯であって…」

自分に言い聞かせるように独り言を漏らすが、目の前の「0」という数字が突きつける現実は思っていた以上に悠太の心をチクりと刺した。

誰にも見られていない、世界から隔絶された戦い。罠使いという孤独を改めてデジタルな数字で突きつけられた気がした。

少しだけへこんだ悠太は数時間の仮眠を取り、午後の部を少し遅めの深夜一時に設定した。

静まり返った夜の静岡ダンジョン。

先ほどの「再生数3」のショックをバネに、悠太は少し趣向を変えてみることにした。ただ落とし穴に落とすだけでは、地味すぎて画面映えがしないと考えたのだ。

「こいつを使って派手さを演出したらどうかな。『バネ床』!」

突進してくるロンリータートルの軌道上に反発魔素を込めた罠を仕掛ける。

ズドォォン! と音を立ててバネ床を踏み抜いた巨大な亀は「ぐぅ!」と呻き声を上げながら夜空高くへと派手に跳ね上げられた。

通常の消費魔素ではグラつかせる程度の威力しかないため、魔素を大量に消費して出力はかなり上げている。

「おっ、いいアングル」

さらに、着地してひっくり返り、四肢をバタつかせてジタバタするロンリータートルを、あえてすぐには仕留めない。ドローンのカメラをぐっと近づけさせ、情けない亀の姿をしばらく放置し撮影してから、起き上がろうとしている地面に『落とし穴』を発動させて奈落へと落とす。

「これなら少しはバラエティ感が出るだろ!タイトルは『空飛ぶ巨大亀』とかかな」

工夫を凝らした撮影をこなし、いつものルーティンを終え朝日を浴びながら家に帰ると、期待を込めて再び再生数をチェックする。

【再生数:4】

「1増えた?……いや、一回リロードしたから、これも俺か」

ベットに腰掛けた悠太の溜息が室内に虚しく響く。

「現実はこんなもんか。誰も見てくれないって辛いなぁ」

富士の麓でのソロ探索者生活は想像以上に地味で、そして静かな戦いになることを予感させた。