軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あと三週間

如月の申し出を聞いた瞬間、悠太の脳裏には大輝の傲慢な顔が浮かんでいた。

正直なところ、初めは断るつもりだった。大輝の相手は何かと面倒くさい。顔を合わせれば煽られ、からかわれ、そのたびに嫌な思いをさせられる。なぜそんな奴らのために力を貸さなければならないのか。

だが、如月の次の言葉が悠太を繋ぎ止めた。

「ガルーダは私たちが今まで出会ったどんな魔物よりも狡猾だった。一人で挑むのは、あまりに危険すぎる」

悠太は少しの沈黙の後、昨日第五階層のボスを一人で撃破したことを打ち明けた。

「実は昨日、ジャイアントウルフを倒したんだ。だから、今の自分の実力がどれくらいかは、ある程度分かってる。ソロの危険性もね……」

それを聞いた如月は目を輝かせる。

「ソロで、あの大きな狼を? すごい! 想像以上の成長だね。それなら尚更、甘露寺くんの力が必要だよ。お願いだから、力を貸して」

普段は冷静な彼女にそこまで熱っぽく褒められ頼み込まれると、悪い気はしない。

悠太が死力を尽くしてようやく手にした勝利に対し、如月たちは第五階層のボスなど大した苦労もせず、通過点として撃破していたのだ。

そんな彼女らが完敗した相手に、今の自分一人が挑んで勝つイメージがどうしても持てなかったのも事実だった。

「大輝たちは俺が参加することに何て言ってるの? あいつ、俺のこと見下してるだろ」

悠太が懸念を口にすると、如月は少しだけ視線を泳がせる。

「……実は、まだ伝えてないの。でも、これから必ず説得するわ。彼らもあの敗北で自分たちの限界を痛感しているはずだから」

「説得……か」

前途多難な予感はしたが、ガルーダを安全に攻略できるなら自分にも大きなメリットではある。悠太は「考えさせてほしい」と告げて帰宅した。

結局、一人で無謀な挑戦をするよりは、癪だが大輝たちと協力するほうが自分にとっても賢明な判断と考え、SNSで参加の意思を伝えた。

「チームプレーを経験しておくのもいいかもしれないしな」

その日の午後は第六階層には行かず、調整を兼ねて第五階層での作業に没頭した。

今の悠太にとって最も重要なのは火力のコントロールだ。

『ウッルの目』の威力変更はあくまで倍数でしか行えない。二十パーセント、三十パーセントのような微調整は不可能。魔素消費もそれに応じて、二倍、三倍と極端に跳ね上がる。

(通常時は少し不便だけど、やっぱりこの火力差は大きいな)

林の中に潜むグレーウルフに向けて、出力を二倍に設定した瞳を向ける。

かつて一回の発動では倒せなかった大型のグレーウルフが無音の衝撃を受け、次々とその巨躯を光の粒子へと変えていった。

(おかげで効率は劇的に上がった。これなら、発動時間の延長と合わせてかなりの数を捌ける)

以前は倒しきれずに逃げ回る時間が長かったが、今は構築さえ終われば一回で駆逐が終わる。結果として、一戦あたりの時間は大幅に短縮された。

しかし、ここで新たな問題にも直面する。

(敵がいない)

あまりの効率の良さに、自分の周囲五十メートル以内の個体を瞬時に狩り尽くしてしまう。

倒したそばから次が現れるわけではなく、火力が上がったことで、今度は次の標的を探して林の奥深く、もしくは林から林へと移動する索敵の時間が目立つようになっていた。

(贅沢な悩みだけど、効率が上がりすぎたせいで探す時間が増えるとはね)

汗を拭いながらスーパーネズミシューズのグリップを確かめ、次の獲物を求めて駆け出す。

一人での淡々とした作業に慣れきった自分に、果たしてパーティープレイが務まるのかだろうか。一抹の不安を掻き消すように悠太は索敵に集中した。

自宅に戻ると、如月から連絡が入っていた。

『大輝くんたちもガルーダ討伐共闘作戦に賛同してくれた。だけど、帰還石が全員分なくなってしまったから、また四つ揃え直さないといけないの。決行は三週間後にしようと思ってる』

と告げられる。

三週間。百二十万円もの大金を揃えるためには確かに必要な時間だった。

前回は瀬戸の好意により格安で手に入れられたので、今回はそれ以上の出費になるかもしれない。

『その前に、お互いのスキルを確認しましょう。甘露寺くんはまだ第六階層に行ったことがないから、まずは第五階層で初練習しない? 明後日なんて、どうかな?』

「初見殺しとの戦いまで残り三週間かぁ。まだ第六階層にも行ってないのに如月さんも無理言うなぁ」

でも三週間あれば、さらなるスキルポイントを稼げる。

大輝たちとの共闘に不安はあるが、この期間で自分をどこまで高められるか。

明後日の初回練習に了承を伝え、悠太は自分のベッドへと横たわった。