軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.悪役令嬢は対面を果たす

(門が世界を分かつ、と言うのは大袈裟ね)

警ら隊員や施設の従業員は毎日この門を行き来しているのだ。

クラウディアにとっても感慨はなかった。

長方形の建物には装飾がなく、四角い石を置いただけのようにも見える。

入館手続きを終わらせ、案内に従う。

実用性が重視された施設内には無駄なものが一切なかった。

窓から入る日差しが宙に舞うホコリを視認させるが、汚れたところはない。

「もっと物々しいところを想像していました」

「そうね、貴族用の棟だからかしら」

申し訳程度に絨毯が敷かれているだけだが廊下は広く、鬱塞とした雰囲気とは無縁だ。

全体的に清掃が行き届いているのは、こうしてクラウディアのような人間が訪れる機会があるからだろう。

平民用の拘留場所が別にあることは施設の案内図に描かれていた。

「こちらがウェンディ・ロイドの部屋です」

警ら隊員監視の下、部屋へ入る。

室内にはウェンディを見張るための警ら隊員も待機していた。

面会の間、拘留者は手枷と足枷を着けられ行動を制限される。

床には線が引かれ、面会者は線を越えて拘留者には近付けない。

ウェンディはすっかり憔悴して見えたが、クラウディアへ向ける眼光の鋭さは衰えていなかった。

ギラギラとした瞳に、深窓の令嬢と呼ばれた頃の面影はない。

「き、来たわね! この悪女が!」

「挨拶もなしにあんまりではありませんか?」

「わたくしがあなたと和やかに言葉を交わすとでも!?」

「ですが面会を認めてくださりましたよね?」

ウェンディの許諾なしに面会は通らない。

「それは、わたくしが! ここであなたの悪事を暴くためよ!」

「わかりました、先にお話しください」

クラウディアの目的は、ウェンディから直接事情を聞くことだ。

誰かに曲解されたものでない彼女の本音を。

「ふ、ふんっ、余裕ぶっていればいいわ。そうやって人を騙すのよね」

わかってる、わかってるんだから、とウェンディは小声で繰り返す。

「トーマス伯爵の件も、わたくしを捕まえるためにあなたが仕組んだのでしょう!」

「何をどう仕組んだとおっしゃるのです?」

「手下を使って、わたくしの計画を狂わせたのよ! 本当ならここにいるのは、あなたのはずだったのに!」

「そのウェンディ様の計画というのは、トーマス伯爵殺害の件で間違いありませんか?」

「あなたがっ、あなたが! わたくしにトーマス伯爵を殺させたの! それもこうしてわたくしを捕まえるためでしょう!?」

ウェンディが計画したのなら捕まるのは道理だ。

無理のあるこじつけに、見張りの警ら隊員も呆れた表情を見せる。

(ウェンディ様がトーマス伯爵を殺害するよう、わたくしが意図的に仕組んだと言いたいのでしょうけれど)

どうしてそういう考えに至ってしまうのか。

(何か理由があるはずだわ)

心配そうに視線を送ってくるヘレンに大丈夫だと頷く。

「ウェンディ様はわたくしの悪事を暴くとおっしゃいました。ならば順を追ってお話しください。まずどこでわたくしが怪しいと思われたのですか?」

「……」

クラウディアが聞く姿勢を見せると、ウェンディは黙り込んだ。

視線の動きから考えを巡らせているのがわかる。

「それを聞いてどうするつもりです」

「わたくしはウェンディ様のお考えが知りたいだけですわ。話されたくないのなら強くは求めません」

「わたくしが掴んでいる情報を聞きだそうという魂胆ではないの?」

「ウェンディ様が話しても大丈夫だと思われる範囲で結構ですわ」

「わたくしは、わたくしは、あなたを捕まえたかった。だけど、どうしてわたくしが捕まっているの? それも貴族派の事件までわたくしの犯行にされているわ!」

噛み合っているようで、噛み合わない会話が続く。

けれど少し進展があったように思えた。

貴族派が強盗殺人に遭った事件について、ウェンディは自分ではないと主張しているのだ。

「わかっているの、あなたが仕組んだことでしょう!? わたくしがあなたの犯行だと突き止めたから、わたくしに罪を被せようとトーマス伯爵を殺させたの!」

「ウェンディ様は貴族派の事件に関与されていないのですね?」

「そうよ! ずっとそう言っているわ!」

「トーマス伯爵の件も、わたくしの犯行だと主張されていましたが、実際はウェンディ様の計画でしたわ」

「あなたを捕まえるための計画よ! 貴族派の事件と一緒にしないで!」

傍から見ればウェンディの証言に信憑性は得られないが、彼女の中では筋が通っているようだ。

「貴族派の事件はあなたが依頼したことだって突き止めているわ! 今から手下を送っても遅いわよ!」

実行犯はウェンディが匿っていると語る。証人として保護するため、居場所は彼女しか知らないと。

警ら隊員に驚いた様子はない。事前に聴取済みのようだ。

(こちらの件は警ら隊に任せましょう)

裏付けを取るために彼らも動く。

ウェンディの証言通り実行犯が匿われているなら捕まえるはずだ。

(ただ嫌な予感がするのは何故かしら)