軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第93話 なんの参考にもなりませんでした

「どうも、ケンちゃんネルのケンです。本日は奈良にやってきました」

〈英霊シリーズ第三弾だ!〉

〈今度は奈良だってよ〉

〈京都に続いて古都やな〉

〈奈良はダンジョン二つしかないはず〉

〈後ろに山が見えるってことは〉

「はい、ご推察の通り三輪山ダンジョンです。三輪山は古くから我が国で神聖視されている山でして、この山の頂上にダンジョンへの入り口が存在しています」

山の上に武骨な建造物を作るわけにはいかず、そのため管理庁の窓口は麓の神社に置かれている。

窓口を経由せずにこっそりダンジョンに潜ろうと思えば簡単にできてしまうのだが、まぁ仕方のない話だろう。

「ちなみに山中は撮影が禁止されているそうなので、ここでいったん映像を切りますね」

〈へー、そうなんや〉

〈さすがご神体〉

〈ダンジョン内は撮影OKなんだ〉

まずは窓口へ。

「三輪山ダンジョンに入りたいんですが」

「えっ、もしかしてニシダさん!?」

窓口の職員が俺を見て驚く。

〈さすがニシダ〉

〈こんな田舎でも知られているのか〉

〈そりゃ管理庁の職員だから知ってるだろ〉

〈しかしまさかトップ探索者が奈良まで来るとは思わないよな〉

〈三輪山ダンジョンってクラス4で、遠方から探索者が来るようなダンジョンじゃないし〉

受付を無事に済ませると、そこから三輪山の頂上までは登山だ。

俺はカメラをオフにしたまま、

「標高467メートルのそれほど高くない山ですが、片道およそ90分かかると言われています」

〈ニシダなら一瞬やろ〉

〈5分かな〉

〈3分でいける〉

〈いやいや1分で十分〉

「では登ってきましょう」

俺は地面を蹴って跳躍すると、一気に周囲の木々を見下ろせる高さへ。

「今、ジャンプして高いところまで来ました。このまま空中を走って頂上を目指そうと思います」

〈登るとは?〉

〈斬新な登山で草〉

〈なるほど、それなら最短距離で登れて時短になるわけか!〉

〈さすがニシダ。みんなぜひ真似するといいぞ〉

〈真似できるわけないwwwwwww〉

〈なんの参考にもなりませんでした〉

そうして山の頂上に着地した。

注連縄を巻かれた岩々と、小さな祠があるだけの場所だが、その付近に漆黒の穴が開いている。

「はい、山頂に着きました」

〈記録は……20秒!〉

〈一分もかからなかったかw〉

〈三輪山は神聖な山です。途中に祈りを捧げる場所もありますので、心を清めながら登拝してください。あなたのような登頂の仕方ではご神体が驚かれます〉

〈ニシダ怒られてるぞ〉

〈神様からしたら玄関じゃなくて窓から急に入ってこられたような感じか〉

「……申し訳ありませんでした」

〈ニシダ反省してるwww〉

〈謝れる偉い子〉

〈あんまり茶化してるとお前らも怒られるぞ?〉

祠でしばし祈りを捧げてから、俺はダンジョンへと足を踏み入れた。

カメラをオンに。

「というわけで、三輪山ダンジョンに入りました。クラス4で地下20階までしかないダンジョンですし、サクッと攻略していきましょう」

三輪山ダンジョンは中層まではよくあるフロアが続いた後、下層に入ると巨岩や奇岩がゴロゴロ転がっている岩石地帯になる。

岩に擬態しているロックリザードマンが数多く生息していて、一定の距離まで近づくと猛スピードで襲いかかってくる。

ザンッ!

〈はい瞬殺〉

〈日常の光景〉

〈食材にならない子に用はない〉

〈ロックリザードマンは岩に擬態してるだけじゃなくて、岩並みに鱗が硬いはずなんやが〉

〈ニシダの包丁からすれば木綿豆腐よ〉

〈普段どうやって料理してるんだろな? まな板どころか調理台まで斬れるんじゃね?〉

〈確かにwww〉

〈繊細さも兼ね備えてるんだろ〉

「おっ、どうやらこの先がボスの部屋のようですね」

〈そして相変わらずのRTA〉

〈都内から日帰りで奈良のダンジョン攻略して帰れるのニシダぐらいだろ〉

〈頑なに定休日を増やさないニシダ〉

〈もう少し休め(定期)〉

ボス部屋に足を踏み入れると、待ち構えていたのは巨大なロックリザードマンだ。

「マザーロックリザードですね。周囲に転がっている大量の丸い岩はこいつの卵らしく、ボスを倒さないとそこから無限にロックリザードマンが湧いてくるそうです」

〈早速、卵が割れて中から出てこようとしてるぞ〉

〈無限にって、卵は有限だろ?〉

〈あの巨大トカゲが延々に卵を産み続けるらしい〉

〈ボスは攻撃してこないそうだが、防御力が高くて簡単にはダメージを与えられないとか〉

俺は孵化中のリザードマンを無視し、ボスに接近する。

ザンッ!

「アアアアアアアッ!?」

「おっ、さすがに硬いですね」

〈鱗がぱっくりw〉

〈母トカゲ絶望〉

〈防御力が高くても、それ以上の攻撃力があれば関係ないんだよなぁ〉

ザンザンザンッ!

何度か包丁で巨体を斬っていると、やがて断末魔の叫び声と共にボスが絶命する。

パンパカパンパカパーンッ♪

〈まだ卵から一体も出てきてないのにwww〉

〈孵化が止まった?〉

〈ボスが死ぬと停止するのか〉

〈生まれる前に死んだトカゲたち……〉

〈それよりどんな英霊が現れるか楽しみ〉

〈今までその土地と馴染みのある英霊だったからな〉

〈となると、今回は……〉

〈まさか古代史最大の論争に終止符が打たれる?〉

〈九州派涙目〉