軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第91話 聞いたことのないワード過ぎて草

北条政子がアルバイトに加わった結果、彼女目当ての客が爆発的に増えた。

お陰で深刻な人手不足は未解決のままだ。

店内も『マイルーム』を使ってさらに拡張させた。

もはや市民体育館とかの広さである。

厨房部分も広くした。

コンロなどを増築させたとかではなく、単純に俺の作業スペースを確保した形だ。

そもそもコンロやグリルは元から使っておらず、とっくに取っ払っている。

とてもではないが普通の調理器具では大量の注文に追い付かないし、俺が魔法で焼いたり煮たりした方が早い上に、細かい調節が可能なので美味しくできあがるからな。

「というわけで、今回は京都にやってきました」

〈どういうわけ?〉

〈おおっ、京都いいなー〉

〈ここまでの遠出は初めてでは?〉

〈もしかして日帰り?〉

〈ニシダは定休日が一日しかないからな〉

〈もうちょっとゆっくりしていこうよ〉

〈新しいアルバイト探しかな?〉

〈京都は偉人が多いから〉

「はい、その通りです。またここでアルバイトの英霊をゲットしようかなと」

〈アルバイトの英霊www〉

〈聞いたことのないワード過ぎて草〉

〈どこのダンジョンだろ?〉

〈京都には四つあるんだっけ?〉

〈なんか公園みたいなところだな〉

〈御所じゃない?〉

「そうです、京都御所のある京都御苑です」

東京駅から始発の新幹線に乗って2時間と少しで京都駅に着くと、そこから軽くランニングしながら烏丸通を北上。

そこに存在する広大な緑地に、そのダンジョンはあった。

「京都御苑ダンジョン……クラス6のダンジョンですね」

御苑の一角、かつては児童公園として利用されていた場所にダンジョンの入り口が出現し、現在は武骨な建物が立っている。

〈それにしてもちょうど重要な建築物を避けるようなとこにダンジョンできたよなw〉

〈ダンジョンくんお利口で草〉

〈御所ってことは、もしかして歴代天皇の誰か?〉

〈色んな方面で物議を醸しそうだぞ〉

〈さすがにアルバイトなんてさせられんやろw〉

「実は大学時代に割と近いところに住んでいたので、よく潜っていたダンジョンでもあります」

〈ニシダを育てたダンジョンか〉

〈ホームダンジョンってやつ?〉

〈ニシダ京大出身説〉

〈同志社じゃね?〉

〈府立大の可能性も〉

〈同志社女子かもしれんぞ〉

「さすがに女子大ではないです。まぁ、時間も限られているので早速潜っていきましょう」

「はい、地下30階にあるボス部屋の手前まで来れました」

〈相変わらずの爆速〉

〈退屈しなくて済むから助かる〉

〈もうあんまり驚かなくなってきたわ〉

〈逆に時間かかった方が驚くかもなw〉

「はは、京都御苑ダンジョンの特徴は熟知してるので。もちろんボスとも何度も戦ったことがあります」

そう話しつつ、俺はボスの部屋へと足を踏み入れる。

〈深層ボスだけど、また瞬殺されるんだろうなぁ〉

〈間違いない〉

〈ここのボスってどんなやつ?〉

〈鬼じゃなかったっけ?〉

「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」

部屋の中で待ち構えていたのは、身の丈およそ10メートル、立派な角と赤く屈強な身体を持つ一体のオーガだった。

〈怖っ〉

〈強そう〉

〈酒呑童子ってやつ?〉

〈なんか京都っぽくていいな〉

〈正確には鬼じゃなくてオーガな〉

京都御苑ダンジョンのボスは、オーガの上位種であるクリムゾンオーガだ。

灼熱の炎を操る強敵で、初めて挑んだときはまったく歯が立たずに撤退した相手である。

ザンッ!

……もっとも、それから大きくレベルアップしているので、長いブランクがあっても首を斬り落とすくらい簡単だった。

〈はい瞬殺〉

〈きっとボスも何が起こったか分かってないwww〉

〈こいつは食べれないボスかな?〉

〈さすがに食えんやろ〉

〈お前らニシダに毒され過ぎだろ〉

パンパカパンパカパーンッ♪

「倒せたみたいですね。さて、今回は誰が現れるのか……」

〈わくわく〉

〈誰が出るかな? 誰が出るかな?〉

〈また美女かな?〉

〈有り得るw〉

期待しながら待っていると、突然、俺の周囲で紙吹雪が舞った。

「なんだ?」

よく見るとその紙は一枚一枚が人のような形になっていて、何やら文字が書かれている。

直後、紙が見る見るうちに巨大化していったかと思うと、先ほどのボス、クリムゾンオーガとよく似た姿の魔物へと変貌する。

〈え、ボスは倒したはずだよな?〉

〈どうなってんの?〉

〈英霊はどこ?〉

〈延長戦かな〉

大きさはクリムゾンオーガよりずっと小さいが、全部で十二体もいて、それぞれが武器や防具を身に着けていた。

俺を完全に取り囲んでいたそれらが、一斉に躍りかかってくる。

次々と繰り出される攻撃を包丁で捌きながら、

「えーと、何が起こっているのかよく分からないですが、攻撃されているのでとりあえず反撃した方がよさそうですね」

〈完全に包囲されてるのに余裕で草〉

〈これ英霊の仕業じゃね?〉

〈だとしたら何でニシダ襲ってんの?〉

〈ニシダ拒否られてるのか〉

猛攻を凌ぎつつ隙をついて一体を包丁で斬り捨てると、先ほどの紙切れに戻ってひらひらと宙を舞った。

やはりこれは魔物ではなさそうだ。

「この人型の紙……もしかして式神ってやつか?」