軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第79話 ソロでも何度か倒したぞ

キングレオタウロスが本気モードに入った。

凄まじい雄叫びを轟かせながら、全身が黄金のオーラに包まれていく。

『もう!? は、早すぎる……っ! 西田様、お気を付けください! キングレオタウロスはこの状態になると格段に強くなります!』

「ああ、覚えている」

キングレオタウロスは、いくらかダメージを受けると力を解放し、ステータスが大幅に増す。

俺の記憶ではもう少し猶予があったはずだが……統率者がいる影響かもしれない。

金色のオーラに覆われると共に、鬣が逆立ち、筋肉が一気に膨張する。

そしてまるで人間のようにニヤリ、と口端を吊り上げて不敵に笑ったかと思うと、先ほどまでとは比較にもならない瞬発力で加速し、挨拶代わりとばかりに棍棒を叩きつけてきた。

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

地面が大きく凹み、隕石でも落ちたようなクレーターができる。

同時に発生した衝撃波も強烈で、俺は数メートルほど吹き飛ばされた。

〈やべええええええええええええええええええええええええ〉

〈これが地下45階ボス……〉

〈さすがのニシダも一人じゃ厳しいんじゃねぇか!?〉

「に、西田さん!? ぼ、ぼ、僕たちもっ……」

「大丈夫だ」

恐怖で顔を引き攣らせながらも、勇気を振り絞って加勢しようとしてくれる一ノ瀬新之助。

だが俺は彼を制し、

「俺一人でやれる」

彼の申し出は非常にありがたいが、残念ながら足手纏いだからな。

治癒魔法や補助魔法なんかのサポートなら歓迎するが、生憎とそれが可能な四谷幸助はボスの威圧感を前に魂が抜けたようになってしまっている。

「ででで、でも相手は地下45階のボスですよ!?」

確かにかつて初めてこいつに挑んだときは、パーティでも大いに苦戦させられた。

「けど、せっかく地下45階まで来たんだからって、リポップを待って何度も戦ったからなぁ」

あの当時はまだ転移トラップ法を見つける前だったので、地下45階に辿り着くだけで何日もかかったのだ。

「だ、だからって、ソロでは無理ですよ!?」

「いや、ソロでも何度か倒したぞ」

「えっ?」

〈ソロで地下45階ボスを倒した?〉

〈これがニシダ〉

〈当時まだ大学生だろヤバ過ぎ〉

〈いったん探索者引退したの日本の損失過ぎて草〉

馬体を躍動させ、再び襲いくるキングレオタウロス。

さすがに本気状態の棍棒は、先ほどのように包丁で受けると大ダメージを喰らってしまうので避けるしかない。

幸い棍棒は常に大振りだ。

その猛烈な攻撃の隙間を縫うように、俺は反撃を入れていく。

狙いはキングレオタウロスの頭。

ここがやつの弱点だ。

しかも何度かダメージを与え続けると、

「オアアアアアッ……」

「よし来た」

一時的にスタン状態になる。

その隙に俺はキングレオタウロスの背中に跨った。

〈え?〉

〈乗った?〉

〈そんなんあり?w〉

〈ニシダの王子様〉

そのまま後頭部を包丁で滅多斬りしてやる。

〈容赦ねぇw〉

〈これは痛い〉

〈なんか可哀そう〉

〈一部分だけ切り取ったらニシダは殺人鬼のそれ〉

「オオオオオオオオッ!!」

あっという間にボスがスタンから回復してしまう。

馬体を跳ね上げ、俺を振り落とそうとしてくるが、こちらもそうはさせまいと片手で鬣を掴みながらさらに攻撃を加えていく。

〈へー、あそこに乗られるとボスから攻撃できないんだ〉

〈ボスの簡単攻略法〉

〈これなら誰でも倒せるな〉

〈無理ゲーで草〉

〈どこが簡単なんだよwww〉

〈凶悪過ぎるロデオ〉

「ヴアアアアアアアッ……」

そしてついにダメージが許容量を超えたのか、四つ足を折りたたむようにしてボスがその場に倒れ込む。

「あ、あたくしが苦戦した地下45階のボスを……ソロで撃破してしまいましたわ……しかも本気を出した状態を……まさか、これほどだなんて……」

『キングレオタウロスを、たった一人で……門山碧ですら、パーティの力を借りてようやく討伐できるボスだというのに……』

エルザが悔しそうに呻き、ドローンの向こうからは呆然とした声が聞こえてくる。

「……ふぅ、久しぶりだからどうなるかと思ったが、どうにか倒せてよか――」

正直俺は油断していた。

地下45階の凶悪なボスを十何年ぶりにソロで倒すという、極限まで緊張感のある状態から解放された直後で、すっかり気を抜いてしまっていたのだ。

ブオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

突如として吹いた暴力的な風。

俺はそれを回避することができず。

「っ!?」

気づけば完全に呑み込まれ、空中へと舞い上がっていた。

〈ニシダあああああああああっ!?〉

〈ニシダあああああああああっ!?〉

〈ニシダあああああああああっ!?〉

『西田様っ!? っ……ま、まさかこの風はっ……門山所長の!?』