軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第121話 これが魔族殺しの英雄か

23区すべてで領域把握のスキルを使用したが、結局俺は恋音を見つけ出すことはできなかった。

一方で加賀麗華からは監視カメラの確認状況について進捗を聞いたが、なぜか恋音の寮に近い監視カメラがすべて壊れていたらしい。

しかもそれは、恋音が金本美久と別れる直前に行われていたものであったため、撮影と同時に録画データが送られるクラウドサーバーにも、肝心の動画が残っていなかったそうだ。

明らかに何者かが意図的に行ったのは間違いなく、組織的な犯行ではないかと警察は見ているという。

「恋音が何者かに誘拐された……それも探索者である彼女を拘束できるような、力のある探索者を抱えている組織が……」

俺は愕然としながら頭を抱えていた。

すでに日は暮れている。

このままさらに23区外にまで捜索範囲を広げていこうと考えていたとき、再び加賀麗華から連絡がきた。

『目撃証言が得られました』

「本当かっ?」

『はい。問題の時間の前、道路脇に停められていた怪しいワンボックスカーがあったと、近隣の住民からの情報提供があったようです。そして再度監視カメラの動画を確認したところ、それらしき車が首都高速に乗ったことが確認できました』

「首都高速に?」

『現在は高速道路のカメラを追いかけてもらっています』

高速なら必ず監視カメラがあるため、車を追うことも難しくないはずだ。

その怪しいワンボックスカーが犯人の車かどうかは定かではないが、恋音が連れ去られた先が分かる有力な情報かもしれない。

練馬区にいた俺はいったん目黒に戻ることにした。

新たな情報次第で、捜索すべき場所が変わるかもしれないからだ。

そうして俺がやってきたのは、あらかじめ詳しい住所を聞いていた目黒にある恋音が暮らしているマンションである。

「この通りを歩いて家に帰ろうとしていたはず……」

都心だけあって夜でも割と人通りが多い。

加賀麗華からの連絡を待ちながら、行き交う人々を眺めているときだった。

俺の目の前に現れたのは東南アジア系の男だった。

しかし意外にも流暢な日本語で、

「随分と捜したぞ。てっきり立川の店の方にいるとばかり思っていた」

「……何者だ?」

魔力を抑えているが、探索者であることは明らかだった。

それもかなりの実力者だろう。

「お前の姪のことで話をしたい。ついてきてくれるか?」

その瞬間、俺の頭に血が上り、気が付けば男との距離を詰めてその胸倉を掴むと、そのまま強引に地面に叩きつけていた。

ドオオオオオオオオンッ!!

轟音と共に道路に無数の亀裂が走る。

「~~~~~~~~っ!?」

「恋音をさらったのはお前か……っ!?」

俺は男の胸倉を掴む手にさらに力を込めた。

道路が陥没し始める中、男は俺の腕を必死に引き剥がそうとするが、ビクともしない。

「(なんという力だ、この男っ!? 化け物か!?)」

男が慌てて叫ぶ。

「ま、待てっ……彼女に危害を加えるつもりはないっ……だ、だから、落ち着いてくれっ……」

「……恋音は無事なんだな?」

「か、神に誓って!」

俺は少しだけ力を緩めた。

もちろんまだ男を解放するつもりはない。

とそこへ、四方から複数の気配が殺到してきた。

恐らくこの男の仲間たちだろう。

「それ以上近づいてみろ……殺すぞ?」

「「「~~~~~~~っ!」」」

俺が殺気をぶつけると、そろって足を止めた。

「(凄まじい殺気っ……こ、これが魔族殺しの英雄かっ……)」

「俺はお前と一対一で話をしているんだが?」

「わ、分かった! お前たちは下がっていろ!」

男が慌てて命じると、仲間たちが一斉に後退していく。

「で、どこに行けばいい?」

「っ……あ、あそこに車が停まっている! あれに乗って詳しい話をしよう!」

「分かった」

俺は男の身体を持ち上げると、男が示したワンボックスカーの方へと向かう。

壊れた道路は土魔法で修復しておいた。

車に近づくと自動でドアが開いた。

俺は男を車内の奥に放り投げ、それから自分も乗った。

ゆっくりとドアが閉まる。

「い、いいのか?」

「何がだ?」

「いや、やけにすんなり車に乗ってくれたなと……普通はもっと警戒するはず……」

「お前らごときに俺をどうこうすることなんて不可能だからな。それより早く目的を教えろ」

俺の方も少し冷静になっていた。

向こうの方からわざわざこちらに接触してきてくれたのだから、考えようによっては恋音を取り返す絶好の機会とも言えるだろう。

「あ、ああ。だがその前に車を出すぞ。お前の姪がいる場所へと連れていく。安心しろ。必ずどこかで連絡を取らせる」

「……」

俺が無言で頷くと、運転手が車を走らせた。

やがてインターチェンジから首都高へと入る。

この時間、やや渋滞気味だったが、なぜか周りの車が勝手に避けてくれたため、意外と早く首都高から降りることができた。

「羽田出口……?」

そこからどこをどうやって通ったのか、気づけば車は羽田空港の敷地内を走っていた。

そうして車が停車したすぐ傍には、小型の飛行機が停まっていた。

「ここからはこれに乗って移動してもらう」

「まさか」

「単刀直入に言うと、お前の姪はもう国内にはいない」

……どうやら恋音は海外にまで連れていかれたらしい。