軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第120話 その方が速いからな

美久ちゃんネルとのコラボ配信で、新ダンジョンを攻略したことはその日のうちにネットニュースになった。

そのせいか、その配信のアーカイブ動画の再生回数は伸びに伸びて、すでに1000万を超えている。

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ケンちゃん食堂@立川

マツタケ定食、明日から始めます! 一日限定1000食まで!

#期間限定 #1650円 #マツタケ尽くし #中目黒ダンジョンのボス

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さらにダンジョンのボスだった巨大マツタケ――シュルームオ―クというらしい――を食材に、新しい期間限定の定食を提供することになった。

ボスはその濃厚な香りからして明らかに美味しそうだったが、実食してみると最高級のマツタケに勝るとも劣らない品質で、俺はすぐに店で出すことに決めた。

もちろんボスを倒したのは金本美久と恋音だったため、二人の許可を取ってある。

その代わりマツタケ定食をごちそうすることになったので、近いうちに一緒に店に食べに来てくれるという。

そして翌日、相変わらず朝から大行列ができ、開店と同時に次々とマツタケ定食のオーダーが入った。

「マツタケ定食、マツタケ定食、マツタケ定食……かかかかっ、もうほとんどがマツタケ定食でござるな。儂の魔眼など要らぬのではないかのう」

俺はひたすらマツタケを調理しまくった。

なお、マツタケ定食の中身は、マツタケの炊き込みご飯、マツタケのすまし汁、マツタケの天ぷら、マツタケの茶碗蒸し、とマツタケ尽くしである。

「「「うめええええええええええええええええっ!?」」」

お客さんの絶叫をBGMにしながらマツタケと格闘し続け、やがてお昼のピークを越えた頃。

「ケンさん! 恋音ちゃんこっちに来てないですか!?」

血相を変えていきなり店に飛び込んできたのは金本美久だった。

「え? 来てないが……恋音に何かあったのか!?」

「昨日から寮に帰ってきてないみたいなんです!」

「何だって!?」

お客さんの中には俺の配信を見てくれている人も多い。

このやり取りに店内が騒然となった。

「途中まで一緒に帰ったんです! 寮のすぐ近くで別れて……そのときは変わった様子もなかったのに……」

俺は慌ててスマホを確認する。

仕事中はまったく見ていなかったのだが、何か恋音から連絡が来ているかもしれないと思ったからだが、あったのはマネージャーの加賀麗華からの着信だけだった。

どうやら俺との連絡が付かなかったため、金本美久が直接この店まで来たのだろう。

「……電話に出ないな」

「私からも連絡してみたけど、電話はもちろん、ラインの既読も付かなくて……親御さんからも連絡が取れないから、今、麗華さんが警察に捜索願を出してくれています……」

「そうか……」

嫌な想像が頭を過る。

何かの事件に巻き込まれたのか……それとも事故か……。

だが恋音は探索者だ。

しかも今やCランクである。

そこらの変質者程度は軽く撃退できるはずだし、交通事故に遭ったところで大した怪我は負わないだろう。

「こうしてはいられない……っ! すいませんが、今日はこれで営業を終了させていただきます!」

すでに注文を受けている料理だけ提供し、店の外に並んでいた人たちには申し訳ないが事情を伝えて帰っていただくことにした。

そうしてすぐに店を閉めると、俺はすぐに目黒へと向かう。

「え、電車で行かれないんですか?」

「ああ、俺は走っていく。その方が速いからな」

「電車より速い……」

電車で目黒に向かうという金本美久と別れ、俺は全力疾走する。

普通の道路を走ると危険なので、隠密スキルで姿を隠し、線路の上を走った。もちろん線路内への侵入は違法なので、良い子は真似をしないように。

そうして十分ほどで目黒に辿り着くと、俺は探知系のスキルを使用した。

「領域把握」

特定の範囲内の情報を、すべて把握することができるというレアスキルだ。

ダンジョン内で使うと魔物やトラップの場所どころか、見た目や強さ、能力までをも知ることが可能だ。

ただ、俺はこのスキルを普段のダンジョン探索ではまず使わない。

というのも、一度に大量の情報が飛び込んでくるため、めちゃくちゃ酔うのである。

なるべく範囲を絞れば軽減できるが、それなら自分の目や耳や鼻といった五感を駆使し、直接確認した方が早いしな。

ただ、もし恋音がこの目黒区内のどこかにいるのだとすれば、このスキルで見つけ出すことができるかもしれない。

「っ……相変わらず使い勝手の悪いスキルだ」

襲いくる猛烈な頭痛と吐き気を耐えながら、俺は必死に恋音を捜索する。

だが一向に恋音の情報を見つけることができなかった。

「おえ……ダメか」

金本美久の話だと、彼女と別れる前は間違いなく目黒区にいたはずだが――そもそもダンジョンを後にするまでは俺も一緒だった――生憎とこのスキルでは、過去の情報までは得ることができないのだ。

目黒区内にはいないのだろう。

ならばもっと範囲を広げるか。

単純に探知する範囲を広げてしまうとさらに酔うため、近くの区に移動し、順番に捜索していくことに。

「品川、目黒、世田谷と探してみたが、やはり見つからない……23区外、あるいは都外に出てしまっていたとしたら、さすがにこのスキルでも簡単には見つからないぞ……」

そのとき着信があった。

加賀麗華からだ。

恋音が見つかったという連絡かもしれないと期待したが、残念ながら違った。

警察が捜索願を受理してくれたという報告だった。

金本美久と合流しているという彼女に、俺はこっちの状況も伝える。

『そんなスキルが……ですが、それでも見つからないとなると、一体どこに……』

「俺はひとまず23区すべてを探してみることにするが、恐らく警察なら監視カメラで過去の映像を追えるはずだ」

『はい、無論すでにやらせています。蹴り飛ばしてでも、目黒中の監視カメラを確認させるつもりです』

「そうしてくれ」