軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タイトル未定2025/04/08 16:06

午前七時半。

五稜郭公園では相変わらず激戦が繰り広げられていた。

高橋竜牙が加勢に駆けつけてから数分後には、札幌からの応援チームも到着した。

その中にはAランク探索者も少なくなく、お陰で現在は溢れ出す魔物を完璧に抑え込むことができていた。

「はぁはぁ……ぼ、僕の活躍のお陰で……ぜぇぜぇ……どうにか、落ち着いてきたので……ハァハァ……い、いったん、休憩させてもらうとしよう……っ!」

〈めっちゃ疲れてるw〉

〈そりゃずっと戦いっぱなしだからなぁ〉

〈引っ切り無しに魔物が出てくるし〉

〈高出力な反面、持続力に欠けるタイプの竜牙にはキツイ戦いだよ〉

もちろん魔物は途切れることなく姿を現し続けており、この戦力でいつまでも持つとは思えない。

そして何より、近いうちに深層の魔物が現れ始めるだろう。

〈下層より強力でしかも数も多いとか……〉

〈どう考えても今の戦力じゃ耐え切れんやろ〉

〈全国からの応援が必須やな〉

〈早く来てくれ~~〉

そのときだった。

ドオオオオオオオオンッ、という凄まじい音と共に、管理施設の建物が宙へと吹き飛んだ。

〈は?〉

〈え?〉

〈なに?〉

〈ちょっ〉

代わりにそこから姿を見せたのは、これまでの魔物とは桁違いに巨大な魔物である。

〈いきなりデカすぎじゃね?〉

〈あれが深層の魔物?〉

〈下層とあんなにサイズ違うん?〉

〈どう普通の深層の魔物じゃないだろ!〉

三つある首は狼か犬のそれ。

二足歩行の筋骨隆々の体躯で、尾は鋭い牙を剥く大蛇だ。

〈ってか、こいつケルベロスじゃね……?〉

〈ケルベロスって……まさか〉

〈五稜郭ダンジョンのボス!?〉

〈このタイミングで!?〉

それは本来ならここ五稜郭ダンジョンの最下階、地下40階に待ち構えているはずのボスモンスター、ケルベロスだった。

「「「ワオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」」」

三つの首が同時に咆哮を轟かせると、その圧倒的な威圧感に探索者たちが言葉を失う。

さらにボスが引き連れてきたのか、足元には深層の魔物の姿もあった。

「は、早すぎるっ……まさか、もうボスが現れるなんて……っ!」

想定を大きく上回る早さでのボスの登場に、高橋竜牙が頬を引きつらせる。

〈やばいやばいやばい!?〉

〈深層の魔物だけならともかく、ボスまで出てくるとか……〉

〈地下40階のボスなんてAランク探索者でもキツイ相手だろ!?〉

〈竜牙、自分の身の安全が第一やで? 体力も消耗してるし、ここはいったん退避して態勢を整えた方がいい〉

〈逃げても誰もお前を責めないぞー〉

〈その代わり函館市民に死者が出るけどなw〉

〈Aランクの責任を放棄するわけね〉

〈←のやつらマジでウザいな〉

〈どう育てられたらこんな醜い性格になるんだろ〉

〈けど、竜牙はこう見えてAランクでも上位の実力者だ。逃げたら士気にかなり影響すると思うな……〉

直後、深層の魔物が殺到してきた。

ダンジョン入り口が存在するのは、半月堡と呼ばれ、周囲を濠で囲まれた三角状の地帯だ。

現在、探索者たちはその半月堡とは濠を挟んだ対岸に前線を築いており、そのため魔物は必ず濠を通っていかなければならない。

「「「グルアアアアアアアッ!!」」」

しかし巨体ぞろいの深層の魔物たちだ。

人間の侵入を防ぐための濠など、いとも簡単に突破してしまう。

「くっ……僕はっ……逃げないっ! 応援が来るまで戦うぞ……っ!」

そう宣言した高橋竜牙は、電流を帯びた剣で、濠から飛び出してきたばかりの深層の魔物に強烈な一撃をお見舞いする。

〈さすが竜牙〉

〈意外と熱いやつなんだよな〉

〈井の頭ダンジョンのボスに権蔵がやられたときもブチ切れてたし〉

〈けど、マジでボスはどうすんの? こんだけの深層の魔物と同時に、ボスまで相手するのは無理だろ?〉

「「「オオオオオオオオオオンッ!」」」

〈言ってる傍から動き出した!?〉

〈しかも竜牙のいるこっちに向かってくるぞ!?〉

〈って、飛んだあああああっ!?〉

〈濠を軽いジャンプで飛び越えてきた!? あんなにデカいのになんて跳躍力だよ!〉

〈竜牙っ、マジで逃げろって!〉

「はあああああああっ!」

視聴者のコメントなど、すでに彼は見ていない。

ただ己の信念に従い、勇敢にも凶悪なボスに躍りかかっていく。

「ニシダ師匠っ……見ていてくださいっ! あのときあなたの凄さを目の前で見てから、僕は自分を鍛え直し、強くなった……っ! その力を、今ここで――」

「シャアアアアアッ!」

「へ?」

気づくと足に巨大な蛇が噛みついていた。

そのまま物凄い力で引っ張られ、宙づりにされてしまう。

〈いつの間に!?〉

〈尻尾の大蛇が!〉

〈これは痛そう!〉

「っ……こ、このっ!」

慌てて剣で斬りつけようとしたが、その前に天高く放り投げられていた。

しばらく宙を舞った後、やがて盛大な水飛沫を上げながら濠に落下する。

ザバアアアアアンッ!!

〈竜牙あああああああああああああああああっ!?〉

〈竜牙あああああああああああああああああっ!?〉

〈竜牙あああああああああああああああああっ!?〉

〈竜牙あああああああああああああああああっ!?〉

〈真っ先に離脱してて草〉

〈だから逃げろって言ったのになー〉