軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第100話 乗り遅れの定義よ

函館で発生した迷宮崩壊のニュースを見ながら、俺は呻く。

「うーん、これはちょっと暢気に仙台城ダンジョンに潜ってる場合ではなさそうですね」

〈暢気にってw〉

〈クラス7のダンジョンなのにな〉

〈もしかしてニシダ救援に向かう?〉

〈ニシダ来たら百人力やろ〉

迷宮崩壊の恐ろしさは、昇格試験のときに発生した迷宮暴走の比ではない。

なにせダンジョン内にいる魔物が一体残らず外に出てくるのだ。

ダンジョンを探索するとき、すべての魔物を掃討しようなどと考える探索者はいない。

なぜならダンジョンの各階は恐ろしく広大で、そこに凄まじい数の魔物が徘徊しているからだ。

上層や中層までならまだいい。

広さはたかが知れているし、魔物の強さもさほどではない。

だが下層、さらには深層ともなると話は別だ。

上層中層より遥かに凶悪さを増し、数でも遥かに上回る……下手をすれば、日本中の探索者を集結して対応しなければならないレベルだろう。

「しかも迷宮暴走と違って、ボスを倒したところで崩壊が収まるわけじゃない」

〈おいおいおい、マジでやばい状況じゃねぇか〉

〈五稜郭だけで抑え込めるレベルではないってことね……〉

〈深層の魔物が街に溢れ返るとか大災害じゃん〉

〈むしろ函館どころか、北海道全域の危機〉

〈さ、さすがに本州まで来ないよな?〉

「とにかく、急いで函館に向かおうと思います」

〈幸い仙台にいるしな〉

〈いや仙台から函館は遠いぞ?〉

〈それ。今からじゃ急いでも余裕で三時間以上はかかる〉

〈飛行機ならどうや?〉

〈仙台空港と函館空港があるしな〉

〈直行便が出てないだろ〉

〈応援を送るための輸送機とか出るんじゃね?〉

と、そのときである。

どこからか、ゴオオオオオ、という音が聞こえてきたのは。

音の方へと視線を向けた俺が見たのは、仙台空港から飛び立ったばかりで、こちらの仙台市方面に向かってくる飛行機だった。

「……あれだ」

〈は?〉

〈あれって?〉

〈まさか〉

〈おいおいおいおい?〉

〈あれだ、じゃねぇよwww〉

〈あら、ちょうどいいところに飛行機くん〉

「仙台空港から北に向かう便となると、行先はほぼ北海道のはず。さらにその大半は、恐らく札幌から近い新千歳空港……」

〈新千歳空港に向かうなら函館の近くを通るね!〉

〈あの飛行機に乗れば一時間ちょいで着けるかも〉

〈さすがニシダ、賢い〉

〈いやいやいやいや〉

〈なるほど、完璧な作戦っスね。不可能だという点に目をつぶればよぉ~~〉

〈知ってるか、ニシダ? 飛行機って途中搭乗できないんだぜ?〉

「ちょっと急ぎますね。乗り遅れそうなので」

〈普通はもう完全に乗り遅れてますけど?〉

〈乗り遅れの定義よwww〉

〈飛行機って時速800キロとかで飛んでるんだろ? 無理だって〉

〈いや離陸直後はもっと遅いはず〉

俺はドローンを掴むと、思い切り跳躍した。

飛行魔法を前回にしつつ、同時に空中を蹴ってさらに加速する。

〈あっという間に地上が遠ざかってく……〉

〈これなら間に合う?〉

〈飛行機も高度を上げつつあるからなぁ〉

〈接近できたとしてどうやって乗るんだろ?〉

「このままだとさすがに間に合わないので、これを使います」

〈結晶系のアイテムだ〉

〈補助結晶やな〉

〈どういう効果?〉

〈あの色……多分、一時的に敏捷値を上げるやつ〉

補助結晶で敏捷値が20%上昇する。

さらに俺は腕輪を装着した。

〈シルフの腕輪じゃん〉

〈装備すると敏捷値が上がるレアアイテム〉

〈しかも二つあるぞ〉

〈同時装備で最大30%敏捷値が上がるんだっけ?〉

ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

〈速すぎワロタ〉

〈ドローンじゃ絶対追いつけない〉

〈飛行機がどんどん近づいてくる!〉

〈乗れるか!? 乗れるのか!?〉

豆粒ほどの大きさだった飛行機が、あっという間に目の前に迫ってくる。

すでに高度は十分なので、俺は向きを変え、飛行機と平行に飛んでいる。

さすがに飛行機の方が速いが、どうにか機体の上に降りることができそうだ。

〈これ乗客に見つかったらパニックになるんじゃ……〉

〈それで仙台空港に戻る羽目になったり〉

〈有り得るな〉

〈飛行機の途中搭乗なんて初めてだろうから対応難しそう〉

〈想定外すぎてなwww〉

〈機長さん、お疲れ様です〉

「ちなみに隠密で姿を隠しているんで見つかる心配はないはずです」

〈対応済みでしたw〉

〈さすがニシダ〉

〈この配信がバレたら場合は?〉

〈緊急事態だから仕方ないんじゃない?〉

「っと、かなり滑りますね。摩擦を極限まで少なくしているからでしょう」

機体の上に着地しようとしたが、緩くカーブしている上に、表面がつるつるしている。

これでは掴まっていることができない。

〈ダメじゃん〉

〈どーすんの?〉

〈万事休す〉

「こいつを使いましょう。よっと」

俺が取り出したのは、以前、井の頭ダンジョンで手に入れたアラクネクイーンの女王蜘蛛の糸腺だ。

球体をしたこれを軽く押せば、蜘蛛の糸が飛び出して機体に接着する。

〈すげぇ粘着力〉

〈ついに飛行機に乗ったぞ!〉

〈飛行機に途中搭乗した歴史的な瞬間〉

〈けど、このままこんなところに乗って北海道まで行く気?〉

〈乗り心地最悪だろwww〉

「さて、それでは到着までマイルームに入っていますね。糸で内外を接続しておけば、乗っている状態と認識されて一緒に移動できるはずですので」

〈何そのチートw〉

〈意味わからんくて草〉

〈とりあえず到着まで休めそうでよかった〉