作品タイトル不明
16「いつるさんの事情じゃね?」④
「そこからのことは私が語らずとも君の方がよく知っているでしょう」
「……よくは知らないよ。俺が師匠と出会ったとき、余裕なんてなかったし、態度も結構ひどかったと思う」
「見ず知らずの世界に飛ばされ、戦うことを強要されてしまった挙句、元の世界に帰れるのかどうかわからない状況では仕方がないことではないでしょうか? おじいちゃんもそのくらいのことでは怒るような人ではありません」
「そうだね。師匠と再会したけど、とても優しい人だったよう」
「さすがおじいちゃんです」
師匠が人格者であり優しい人であったことはよく知っている。
一度目の出会いは決して良いものではなかった。
異世界人は、いつるのように夏樹の境遇を考えてくれるどころか、自分たちのために戦えとしか言わないため、精神がすり減っていた。
二度目の出会いは、仲間たちが一緒だったのでいつもの夏樹でいられた。
正直、二度目の出会いをきちんとできたことはよかったと思う。
「さて、おじいちゃんが異世界にいた理由ですが、少し触れましたが、聖剣となり二振りに別れた蒼穹の星槍の看守です。とはいえ、おじいちゃん的にはやんちゃな娘を見守っている感じだったようですが」
「そうだったね。なんというか、自分の故郷を滅ぼした相手に、寛大というか、なんというか」
「おじいちゃんは星槍を憎んだことも恨んだこともなかったそうです。ただ哀れだったので止めた、と」
「哀れ?」
「事情はしりません。君が、蒼穹の星槍の使い手であるのなら、いずれ知ることがあるでしょうね」
「そう、だね。いつか話してくれるといいな」
星槍さんの過去を知らずとも、関係はかわらない。
良き相棒である。
ただ、もし過去を話してくれれば、嬉しいなとも思う。
ただ夏樹から尋ねることはしない。
星槍さんは星槍さんなのだ。
「そんなおじいちゃんは以前よりスローライフに憧れていました」
「んんん?」
「転生してスローライフを送りたいと口癖のように言ってました」
「師匠ぉ?」
「気持ちはわかります」
「わかっちゃうんだ?」
「わかりますとも。城はギスギスしていますからね」
「城ぉ? 城ってなぁに?」
急に出てきた情報に夏樹は困惑する。
しかし、いつるは「はて?」と首を傾げると、さも当たり前のように言った。
「おじいちゃんは国王なのでお城に住むのは当たり前でしょう?」
「師匠って……キングだったの!?」
「わざわざキングと呼ぶ必要が……いえ、構いません。おじいちゃんは星々を巡りながらおばあさまたちとラブコメりました。生き残った者たちはおじいちゃんのカリスマに惹かれ集まってきたのです。そう誘蛾灯のごとく!」
「たとえぇ!」
「そこからなんやかんやあって、星槍を封印後、未開拓の星に皆で移住し、開拓をしました。国ができ、おじいちゃんが王となるのは自然なことでした」
「さすが師匠!」
「ですが、それが幸せであり不幸でもあったのです」
悲しげに目を伏せるいつるだった。