作品タイトル不明
間話「まもんまもんな怨霊じゃねね?」
――青森某所。
「まもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもん!」
「……なんだよ、マモン。なんで半泣きで全力ダッシュしてこっちくるんだよ!」
「まもんまもんまもんまもんまもまもまもまもまもん!」
「ああ? 先日、寄り合いで撮った写真が心霊写真だったって!? おまっ、七つの大罪の魔族が心霊写真にびびってんじゃねえよ! お前の方がおっかないだろうが!」
仕事を終えて長靴を脱いでいたさまたんの元に、スーツの上に割烹着を身につけたマモンが半泣きで駆け寄ってスマホの画面を見せてきた。
「……あー、こりゃ本物だ。なぜかはまったくわからないけど、周平の股の間に女の霊が顔を出してるな。つーか、この霊なんでピースしてるんだよ! 陽キャか!」
畑で働く青年周平が笑顔でピースしている姿がある。そんな彼の股の間から、髪が長い女性がピースしているというなんとも言えない心霊写真だった。
「こわいでまもんまもん」
「怖い要素がねえよ!」
「どうして日本の幽霊はまもんまもんと独特な怖さがあるんでまもんまもん?」
「お前に独特とか言われたくねえだろうなぁ! あと、もう一度言うけど怖くねえから!」
さまたんだって魔族だ。
その辺にいる幽霊を見ることがある。
普段は鬱陶しいので魔力を限界まで絞ることで、幽霊などを見えないようにしていた。
幽霊たちは見えると助けを求めてくる。
さまたんには、幽霊を消し去る力はあっても、救う力はないのだ。
「しゅ、周平になにかあったらどうするんでまもんまもん!」
「じゃあ、幽霊消し飛ばしてこいよ。魔力ちょっとぶっ放すくらいで消滅だろ」
「まもんっ! 無理でまもんまもん!」
「だからなんでだよ!」
「その幽霊は周平の股の間に常にいるのでまもんまもん!」
「なんでぇ?」
「知りまもんまもん! 万が一ですよ、万が一、まもんまもんと力加減を謝ったら……」
「周平の周平が消し飛んじゃうな」
「大事件まもんまもん!」
確かに大事件だ。
未来ある青年に万が一があっても困る。
「ふふふ、ここは私の出番みたいねん!」
「――っ、誰でまもんまもん!」
「いや愛ちゃんだろ! 声でわかるじゃん! なんだかんだいって帰らねえじゃん!」
玄関には、なぜかもんぺを装備して腕を組んでカッコつけている愛ちゃんがいた。
「まさか、愛ちゃんが周平の周平をなんとかしてくれるのでまもんまもん?」
「そっちじゃねえよ! 幽霊の方……私が見る限り、陽キャの怨霊ね」
「陽キャの怨霊ってなんだよ! 恨みを抱いた幽霊が陽キャとか意味わかんねえよ!」
「任せなさい! この愛の女神愛ちゃんのラブラブハリケーンビームで一発よ!」
「名前だっさ!」
「名前めっちゃまもんまもん級にかっこいいでまもんまもん」
「嘘だろ!?」
愛ちゃんのネーミングセンスもだが、マモンの感性にも改めて驚く。
まともなのは私しかいねえ、とさまたんは泣きそうになった。
「晩御飯までには帰ってくるわ!」
特撮に出てきそうなポージングを決めた愛ちゃんは颯爽と怨霊退治に向かった。
――一時間後。
さまたんが風呂から上がり、マモンがそろそろ夕食を完成させる頃、
「ふぇええええん! 陽キャ怖いよぉぉおおおおおおお!」
陽キャの怨霊に返り討ちになった愛ちゃんが泣きながら帰ってきた。
――今日の青森は平和ではないかもしれない。