作品タイトル不明
12「女の子はいつだって全力じゃね?」②
「――なるほど。つまり片岡くんは、萌乃萌葱先生に一目惚れしてしまったと。……それ色目使ってなくね?」
「使ってんだよ!」
森さんから説明を聞いたが、ただ彼女が萌葱に嫉妬しているだけだった。
「令和の時代にいないようなキャラ作りして生徒のご機嫌とろうとしているだけで、もう色目使いまくってんじゃん!」
「キャラ作りは色目じゃないって」
「駄目だ、由良は使えなかった。やっぱり繊細な女心は由良じゃわからないか」
「し、失礼な。俺だってわかりますとも!」
「……じゃあ、女性にプレゼントするなら何?」
「――ビール!」
「は?」
「六缶セット渡せば、大喜びだよ。ちょっとお高いウイスキーなんて渡せば大好きって言ってくれるもん!」
「――それ女じゃねえよ。酒が好きなおっさんだよ。ウチのパパじゃねえか」
「そうだね、大人の女性と中学生だと違うもんね」
「ウチのママもお酒は飲むけど、そんなんじゃないけどなぁ」
森さんは女性へのプレゼントがビールであることに対して疑問を覚えたようだ。
しかし、夏樹の同居人である青山銀子はビールを送られたら絶対に喜んでくれる。
おそらく、大人の女性と、女子中学生とは感覚が違うのだろう。
「ていうかさ」
「なによ」
「そんなに片岡くんが好きなら、告白すれば?」
「――っ、それができれば苦労しないっつーの」
「なるほど。だけどさ、別に良くね?」
夏樹はビニールシートの上に寝転ぶ。
「どうせ中学生の恋なんて本気じゃないっしょ。高校に進学したらまた新しい出会いがあって心変わりするだろうし、大学に行って、就職すればまた違う人と出会うでしょう。今は好きって感情が強くても、大人になればスペック的なことを気にするようになるんだし、時間の無駄じゃね?」
「……由良、あんた……めっちゃ寂しい奴だな!」
「ひどい! だって、別に結婚するわけじゃないじゃん! 運命の人なわけないじゃん!」
夏樹としては、学生時代の恋愛が青春の一ページになることはわかっているし、なんやかんやと長続きして結婚することだってあるだろう。大人になって付き合い、別れるカップルだっている。
なので、人それぞれだとは思っている。
だが、伝えるべき感情は伝えた方がいいと思っているのだ。
生きているのなら、いつか死ぬ。それが今日かもしれないし、明日かもしれない。
異世界では、「俺、この戦いが終わったら恋人にプロポーズするんだ」と言った奴から死んでいったことを見ているからこそ、森さんが本気であれば思いを伝えるべきだと思い、発破をかけてみた。
そして、それは成功だった。
「見ていなさい、由良夏樹。私が、女を見せてあげるわ。――今から告白してくるから」
「え、ちょ」
さすがに行動が早すぎる。
驚いた夏樹が起き上がるよりも早く、森さんは走っていってしまった。
「あちゃー」
少し言いすぎたかもしれない。
「森さんの告白が成功しますように」
夏樹はそう祈って目を瞑った。
――しばらくして、校舎から大歓声が上がった。
「ありゃりゃ、成功したんだね。おめでとう、森さん」
――その森さんは、放課後失踪した。