作品タイトル不明
11「女の子はいつだって全力じゃね?」①
「たまにはお昼にコンビニのサンドイッチっていうのもありだね!」
校舎の屋上で、夏樹はビニールシートを敷いて優雅にランチをしていた。
クラスメイトの片岡くんたちに昼食を一緒に食べようと誘われたが、まだクラスメイトと馴染めず断ってしまった。
申し訳ないことをしたと思っている。
異世界では食事を取らなかったし、食事に毒が入っているなんて定番だ。
片岡たちがそんなことをするわけがないとわかっているのだが、信頼できない相手であるため、つい身構えてしまうのだ。
昼食くらいのんびりしたいと思うのは、仕方がないことだ。
「でも、なんでみんな屋上に来ないんだろう?」
天気の良い日は気持ちがいい屋上だが、一応は教師たちから「不必要に屋上に行かないように」と注意はされている。
「えっと、なんだっけ、屋上にはやべー奴がいるからみんな怖がって行かないってどこかで聞いたんだけど……やべー奴ってどこにいるんだよ」
屋上には夏樹しかいない。
異世界に召喚される前の、「やべー奴」と会ったことなどない。
「一登は休みだし、都さんも花子さん関連で忙しそうだし、あーあ、寂しいなぁ!」
サンドイッチを食べ終えて、コーヒーゼリーを手に取りフィルムを開ける。
一口食べるとコーヒーの苦味とクリームの甘さが口の中に広がって幸せだ。
コーヒーは得意ではないが、コーヒーゼリーは大好きだった。
「……由良、あんたなに学校でデザート食べてんの? 根性ありすぎでしょ」
「んんん?」
夏樹のいる屋上に現れたのは、髪を茶色く染めた女子生徒だった。
スマホを持つ指にはネイルが施されている。
さすがに夏樹もクラスメイトであると気づいた。
「えっと、確か………………白百合さん」
「――森ですけど! 誰よ、白百合さんって! そんな子、私たちのクラスにいないじゃない! ていうか、由良と私は小学生もなんなら幼稚園も一緒なんですけど!」
「森? も、もしかして、森山田さんと親戚とか?」
「なんで急に山田が合体するのよ! あー、もうっ、本当にあんたは昔からこんな感じで疲れる!」
森と名乗った少女は、地団駄踏む。
「はぁはぁはぁ……久しぶりにあんたと会話したけど、まったく変わんないわね」
「…………申し訳ないです」
「ていうか、私のこと絶対覚えてないでしょう!」
「ソンナコトナイヨー」
「はぁ、もういいわ。一応、言っておくけど、あんたのお母さんとは私よく話すから。そのことを頭に入れてもらった上で、話があるわ」
「話? なあに?」
「――萌乃萌葱のことよ」
夏樹は表には出さなかったが、内心動揺した。
もしかして森さんもファンタジーの住人で、自分や萌乃萌葱こと学校の神のことを知っているのではないかと身構えた。
「あんたも知ってるでしょう。あの女、最初の挨拶であんたを更生させるなんて言ったんだから」
「更生って……俺のどこに更生する必要があるの?」
「…………それはさておくとして」
「おかないでよ!」
「おくのよ! あの女、片岡くんに色目使いやがったのよ!」
「色目って……まさかそんな」
と、言いながら、屋上から見える「伝説の木」に視線を向ける。
いつか生徒から告白されるために植えた萌乃萌葱の行動力を見る限り、森さんの言葉も間違っていないのではないかと考えてしまった。
「――詳しく聞こうか」
「さっすが、由良。面倒ごとはあんたに任せておけば間違いないわね!」