作品タイトル不明
13「いつるさんの事情じゃね?」①
「クラスが森さんと片岡くんのカップル成立で賑わっているのが微笑ましかったなぁ。一部の男女がめっちゃ舌打ちしていたけど、俺は何も見なかったし聞かなかった!」
学校では、森さんの片岡くんへの告白イベントがあったものの、その他は概ね平和だった。
片岡くんは学校の神こと萌乃萌葱に好意は抱いていたが、恋愛感情ではなかったようだ。
最初はときめいたらしいが、通常の言動を見ているとキャラが普通に好きというだけだったらしい。
夏樹が煽ったことをきっかけに森さんが告白したが、あとで森さんから聞いた話だと片岡くんはモテるようで何人か狙っていたらしい。
(片岡くん普通にモテそうだもんね。俺にも気軽に話しかけてくれたし、一登タイプだもんなぁ)
そんな森さんと片岡くんはさっそくふたり仲良く一緒に帰っていった。
「――素敵な学園生活ですね」
「あ、いつるさん」
校門から出てしばらくすると、電信柱の影からいつる・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星が現れた。
パンツルックのいつるは昨日と変わらず良い美脚をしている。
昨日はショートパンツだったが、今日は足のラインがよく出るスリムパンツだ。
これもこれで素晴らしい。
「――視線が気持ち悪いんですけど」
「あ、すみません。思春期なので、つい。南無南無」
「……足を拝まないでください」
「ごめんなさい、思春期のせいで」
「君、思春期って言えば許されると思っていませんか?」
「…………」
「黙秘しないでください。まあいいです」
いつるはため息をつくが、気持ちを切り替えて夏樹に真剣な視線を向ける。
「夕方は時間がありますか? 晩御飯までには終わる予定ですが」
「えっと、今日は家でモスマンさんが待っているんですけど」
「モスマン? もしかして、アメリカ、ウエストバージニア州ポイントブレザントで目撃情報がある、モスマンのことですか?」
「イエス!」
「……君は言動がおかしいと思っていましたが、かわいそうな子だったのですね。モスマンなんているわけがないのに、心の中で空想の産物がいると信じてしまい……」
「ちょっとぉ!? 俺をかわいそうな子扱いするのやめてくれますぅ!?」
「ですが、安心しなさい。これからは共にギャラクシー流を学ぶ者です。君がどんなにかわいそうな子でも私は決して見捨てません」
「だーかーらー!」
いつるはまったく話を聞いてくれない。
夏樹だって今朝までモスマンが存在しているとは思っていなかったので疑う気持ちはわかるのだが、実在すると知ってしまった以上、信じてもらえないのがもどかしい。
いっそ家に連れて行きたいが、いつるの存在を明かしていいものかどうか悩んだ。
星槍さんを破壊すると言っているし、やはり無条件に信頼はできない。
「君のことは追々どうにかしていきましょう。その前に、私たちはお互いを知らなすぎます。そのため、話をしたいのです」
「それは、はい。俺も思っていました」
「ありがとうございます。私の身の上を話す過程で、君が気になっている私が星槍を破壊しなければならない理由も語りたいと思っています」
「――っ」
想像していたよりも早く、いつるの行動理由が知れることに驚く。
もっと隠すと思っていた。
幸いというべきか、今は星槍さんはいない。
事情を聞くなら、今だ。
「どこかゆっくり話ができる場所にきましょう」