作品タイトル不明
9「モスマンさんたちって謎じゃね?」②
月読の言葉を受けて、夏樹は震えた。
「え? いますよ、ウチに。モスマンさん、ウエストバージニア州ポイントブレザントから来てくれたんですけど」
「ですから……モスマンなんていませんよ」
「あ、あれ? じゃあ、ウチにいるモスマンさんはどのモスマンさん? ちょっと、俺、家に戻りますね」
「お待ちなさい。私も行きましょう。まさかUMAを騙り由良家に入るとは恐ろしい。もしかしたら新たな神々かもしれません」
月読は部屋から出ていくと、権藤と萌葱に声をかけて夏樹と共に職員室を出た。
しばらくして、
「うわぁああああああああああああ! 本当にモスマンがいるぅううううううううう!」
月読の絶叫が由良家に響いた。
「だから言ったじゃん! モスマンさんいるって! よかったモスマンさんがモスマンさんでほっとモスマンさん!」
「い、いいい、いや、まさかモスマンが存在するなんて……都市伝説かなにかだと思っていましたよ」
「わかるぜ、月読。俺も叫んじゃった」
「……魔王サタンが叫ぶのもわかります。あの、爛々とした瞳を見ていると、こう、未知なる恐怖が這い上がってきますね」
由良家の茶の間で動揺を隠せない月読が、一登が出したお茶を飲んでなんとか落ち着こうとしている。
そんな月読の目の前にはきちんと正座しているモスマンの姿があった。
「ウエストバージニア州ポイントブレザントからこんにちは。まさか魔王サタン殿と、月読命殿に驚いていただけるとは、このモスマン・忍――UMA冥利に尽きるというものだよ」
「モスマン・忍って」
「お名前あるんですね」
体格が二メートルを超えているため、正座していても存在感があるモスマンは、驚かれていることを不快に思うことなどなく、むしろ喜んでいる。
彼は夏樹たちにも言ったが、UMAとして驚かれることが嬉しいようだ。
「それにしても、よくアメリカから日本に来ることができましたね」
月読のもっともな疑問に、モスマンが笑った。
「一応は人の姿になれるんですよ。それに、我々UMAは人間社会に溶け込んでもいます」
「――な」
「あなた方の知り合いの中にも、もしかしたらUMAがいるかもしれませんね」
月読は口をぱくぱくと動かすが、声が出ないようだ。
まさかUMAが人間社会に溶け込み、神や魔族に認知されずにいるとは思わなかったらしい。
「それに、協力者もいるのです。今回は飛行機に乗って日本へ来ました」
「そ、そうでしたか、ようこそ日本へ。ただ、できれば、問題は起こさないようにお願いしますね」
「もちろんです」
「月読先生、モスマンさんは俺に助けを求めにはるばるウエストバージニア州ポイントブレザントから来たんだ」
「助け、ですか?」
「新たな神々に、新たな神話に加われって」
「――――っ」
「先生?」
息を呑んだ月読の変化に気づいた夏樹が声をかけると、彼は振り絞るように苦しげな声を出した。
「新たな神々が気づいていたのに、私はUMAに気づけなかった。……おのれ」
「気にするところそこ!?」