作品タイトル不明
10「モスマンさんたちって謎じゃね?」③
「すみません、少し冷静を欠いてしまいました」
月読はお茶を飲み終えると、夏樹たちに謝罪した。
「夏樹くん」
「うっす!」
「私は討伐対象の新たな神々以外は基本的に無介入です。今の私はあくまでも人でしかないので、できることにも限界があるのです」
「その辺は仕方がないんじゃないかなと」
「ありがとうございます。昨晩は、橋と道路の破壊と、橋姫から夏樹くんが苦戦していると聞いたので駆けつけましたが、本来は静観でした。申し訳ありません」
「いえいえ、月読先生には月読先生の理由があるんでしょうし、俺はきにしませんよ。新たな神々だろうと、なんだろうと、敵対する奴は鏖殺です!」
迷いないまっすぐな夏樹の言葉に、月読は若干頬を引き攣らせたが、微笑んだ。
「ときどき君が羨ましくあります。いえ、忘れてください」
「月読命、お前は頭が固すぎるんだよ」
「魔王サタン、あなたは柔軟すぎます」
「それが俺のウリだからな」
「私も何かと個性的な姉弟を持つと頭は固くなるものです」
サタンの言葉に月読は笑顔で返す。
「しかし、魔王サタンともあろう方が……なぜフリフリのエプロンを身につけているのですか?」
「はっ、愚問だな。それは、俺が――由良家の主夫だからだ!」
月読は苦い顔をしてサタンから視線を逸らし、夏樹に向ける。
「いいんですか?」
「ちらない!」
「……最悪、鬱陶しくなったら言ってください。知り合いの神と魔族を総動員して魔王をこの家から追い出して見せましょう」
総動員しなければこの家から追い出せないのはさすがサタンというべきか。
「さて、そろそろお暇しましょう。ホームルームも始まってしまいます」
「んじゃ、俺も」
「一登くん」
「はい」
立ち上がった月読は一登の肩にそっと手を置いた。
「心配していましたが元気そうで何よりです」
「ありがとうございます。学校もそろそろ行こうと思っています」
「そうですね。三原優斗くんに関していろいろ言われる可能性があって嫌かもしれませんが、今だからこそ復学のタイミングですよ」
「え?」
「誰とは言いませんが、問題児……というと少し違いますが、彼の方が話題になっていますから」
「……あー、なるほど」
「今は、萌乃萌葱先生も話題ですから。というわけで、今がチャンスだったりします」
そう言って苦笑する月読と一登。
夏樹は、問題児とは誰なんだ、と首を傾げた。
「さて、最後にモスマン・忍さんに忠告を」
「お聞きしましょう」
名を呼ばれ、モスマンが爛々と目を輝かせる。
「問題を起こすようならば、私が対処します。いいですね」
「無論です。私もなっちゃんと交友を結べたので満足しているので何か問題を起こすつもりはありませんよ。今夜サタンさんと一緒に廃トンネルで肝試しにくる大学生を驚かして遊ぼうとするくらいです」
「――それを問題と言っているんですよ! 日本でモスマンの目撃例があったらいろいろまずいでしょう!」
駄目と言われてしまい、モスマンとサタンがしょんぼり肩を落とした。
「まあまあ、モスマンさん。こういうのはあとでこっそりやればいいから。バレなければいいんだって」
「……夏樹くん。私の前でそれを言ってしまうのは、お馬鹿さんなのか、度胸があるのかどちらんでしょうね」
「――あ、なっちゃんうっかり!」
「はぁ。ほどほどに。……本当に、ほどほどに! お願いしますね!」
「うぃっす!」
「…………いいでしょう。では、学校へ戻りましょう」
「はーい! じゃあ、再び行ってきまーす!」
夏樹と月読は学校に戻った。
数分後、職員室。
「…………本当にモスマンいるとは思いませんでした。えぇぇ、UMAってどう扱えばいいんですか? ちょっと知り合いに連絡を……誰に聞けばいいんでしょうか? というか、モスマンがいるのならチュパカブラとかいるんでしょうか? スカイフィッシュとか。……サインもらっておけばよかった」
生徒の前なので気を張っていたが、実際はかなり動揺していた月読だった。