作品タイトル不明
4「UMAのいる朝食じゃね?」
「ジャパニーズライス! ミソスープ!」
「……流暢に日本語を話していたモスマンさんが、急に初めて日本に来た観光客みたいになってしまって動揺を隠せない」
丸テーブルを中心に、夏樹たちは簡単な朝食をとっていた。
作ったのは、夏樹と一登だ。
昨晩のうちにお米は朝炊き上がるようにタイマーをかけていたので、味噌汁とベーコンエッグ、納豆といった感じにささっと用意した。
夏樹たちと一緒に箸を握るモスマンは無駄に威圧感があった。
「私も初めて日本に来たのだがね。それにしても、おいしいよ、なっちゃん、一登くん」
「ありがと」
「ありがとうございます……って、俺はネギを刻んで豆腐を潰していれただけですけどね」
味噌と出汁を入れて味を整えたのは夏樹だ。
ベーコンエッグも夏樹が慣れた手つきで作っている。
母ひとり、子ひとりの生活をしていれば、焼き魚だって焼けるし、もう少し手の込んだものを作ることができたのだが、あまり時間をかけている暇はなかったので簡単なものだけにした。
モスマンは初めての日本の、それも一般家庭の朝食をご一緒できてご満悦だ。
先ほどよりも、瞳が爛々と光っている気がする。
「しかし、お米が違うね。噛んでいて甘い。また食感も違うね」
「そうなんだ? 海外のお米はあまり食べたことがないからわからないけど、おいしいならよかったよ」
ちなみに、本日のお米はマモンがキャベツと一緒に持ってきてくれたものだった。
戦いでは勝ったが、農業では勝てる気がしない。
「このお醤油も気に入ったよ。ぜひお土産で買って帰りたいね。これがあれば自然界のなんでも食べられそうな気がするよ」
「……確かに、カレーと醤油は無敵だよね」
どう土産を持って帰るのだろうか、そもそもどうやってアメリカから日本に来たのか気になる。
おそらく人の姿になって来たのだろう。そう勝手に納得しておくことにした。
「ところで、夏樹さん」
「なぁに、義政先生?」
「本日は、学校へは?」
「行くさ! 優等生だもん!」
「……夏樹くん、優等生とか関係なく学生は毎日学校に行くんだよ」
「まあ、他の土地だとそうらしいね」
「向島市でもそうだからね!?」
一登が頭痛を覚えたように額に手を当てて、首を横に振った。
「そうなると、モスマンさんはどうしましょうか? 個人的にはすぐにすぐ新たな神々も接触してこないと思います。というよりも、美脚の神が昨晩夏樹さんと戦ったばかりなので余程の愚か者でなければ向島市に、それも夏樹さんの近くに来ることはないと思いますが」
「……よほどの愚か者の可能性の方が多い気がするんだけど」
「その場合は、仕方がないですよね」
残念だが、新たな神々は愚か者ばかりの気がする。
そうなると夏樹も学校に行かず、モスマンと一緒にいるべきかと悩んだ。
(月読先生に美脚の神がどうなったのか聞きたいし、たぶんいつるさんも接触してくるかもしれないし。あ、いつるさんにモスマンさん護衛を……してくれないよなぁ、なんかあの人わがままそうだし)
さてどうしようか、と夏樹はお茶を入れながら考える。
すると、魔王サタンが帰ってきた。
「たっだいまー!」
「軽いノリの魔王ってなんか嫌だなぁ」
「いやー、悪い悪い。朝食までには戻ってこようと思っていたんだがな、思いのほか盛り上がっちまってな。朝ごはんをちゃんと食べてるな、よし、えらいえらい。朝食は一日の活力だからしっかり…………あれぇ? 俺、まだ酔っ払ってるのかなぁ?」
サタンは夏樹から湯呑みを受け取ると一気にお茶を飲み干した。
そして再び茶の間に目をやる。
「おはようございます、お邪魔しています」
サタンは湯呑みを夏樹に手渡すと、大きく息を吸った。
「いやぁあああああああああああああああああ! 俺の家に目を爛々と輝かせている怪物がいるぅうううううううううううううううううう! なにこれぇええええええええええええ! 怖いぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「いや、あんたの家じゃないから」