作品タイトル不明
エピローグ「パパが帰るんじゃね?」
七森家当主七森康弘は、千手の部屋から出ようとしていた。
「――千ちゃん、パパは今日は帰るね」
「……そのキャラで最後まで貫いたのは褒めてやるよ」
「きっとこの後、夜の大運動会だろうからパパは気を利かせて退散するね」
「大運動会って何だよ!? 待て、言うな。説明はいらねえ」
「もうお父様ったらっ、サッカーの試合ができる人数産んでみせます!」
「虎童子、お前も黙ってろ。十一人とか正気か!?」
「ダーリン、試合をするんだから二十二人にきまってるじゃん!」
「相手チームもかよ! 子沢山ってレベルじゃねえだろ! ていうか、大運動会しないから! おい、クソ親父、わかってるみたいな顔すんな! また停止すんぞ!?」
しっし、と追い払うように手を振る千手に、康弘は真面目な顔をした。
「英智はこれからもちょっかいを出してくるだろうが適当にあしらってくれ」
「いや、止めてくれよ」
「問題は敦也の方だ。妻がいろいろ強いたせいで、不満が溜まってしまっている。突っかかってくるかもしれないが、お兄ちゃんパワーでなんとかしてくれ」
「……いや、だから、あんたの方で止めろよ」
「長女の百恵が行き遅れのようだが、もしかしたら突撃してくるかもしれないが、寛大な心で対処してくれ」
「嫌だよ! だからそっちで何とかしろって言ってんだろ!」
「パパはこれから分家と仲直りして、妻の悪巧みに乗っていた奴らを粛清しなきゃいけないの! ちょっと悪いパパモードにならなきゃいけないから、子供たちに構ってられないの!」
「側近がいるだろ! あんたとべったりの悪党側近!」
「……森山田か。奴は、婚活モンスターだった姉に急に婚約者ができたとかで、きっと結婚詐欺に遭ったに違いないと慌てふためいてしまって使えん」
「本当に使えねえな! 素直に祝福してやれよ!」
千手のツッコミが響くが、康弘は気にせず虎童子に頭を下げた。
「このように千ちゃんからは嫌われていて、良き父親ではないが、息子のことを何卒よろしくお願いします」
「――はい! ダーリンはあたいが幸せにするから安心してくれ!」
「二十二人頑張って!」
「おうよ! 名前考えておけよ!」
「いや、何普通に挨拶してんの? なんで握手してんの? 照れてねえよ、まじで不思議なんだよ。おい、こら、何で気を使うように帰ろうとしてんだよ、別に大運動会は始めねえって言ってんだろ! おい、こら!」
「じゃあねん! 千ちゃん! 初孫は女の子がいいな!」
「うるせぇえええええええええええええええええええ!」
千手が蹴り飛ばそうとするが、ひょいと避けて靴を履いて部屋から出て行ってしまう。
息を切らせていた千手は、ソファーにどかっと座るとイラついた様子でテーブルに置かれた電子煙草を加える。
「ったく、クソ親父が。最初から最後までウザすぎだろ」
「でも、ダーリンったらちょっと嬉しい感じ?」
「それはねえよ。まあ、昔も言うほど酷いことをされたわけじゃないがな。俺が嫌いなのはあくまでも七森家だ。いや、あのウザすぎるおっさんも嫌いだが」
「もう素直じゃないなぁ!」
「素直だよ!? 心底本心から言っているからね!?」
出すものを出してスッキリしてしまった父親と、ノリが良すぎる虎童子に千手は心底疲れてしまった。
「……俺はシャワー浴びて寝る。お前は好きにしてくれ」
「え? じゃあ、夜の大運動会を」
「しねえからぁああああああああああああああああ!」