作品タイトル不明
91「ようやく一日が終わるんじゃね?」
夏樹はそろそろ睡魔が限界だった。
濡れてしまったのでまたお風呂に入らないといけないし、服もスニーカーもびしょびしょだ。
「……月読先生、あのさ、俺……そろそろお家帰りたいんですけど」
「夏樹くん、君すごいですね。この状況で、結末を見ずに帰宅できますか!?」
「――できる!」
きりっ、とした顔をする夏樹に、月読は目眩を覚えたように額を押さえた。
「確かに教師として、いつまでも中学生を夜遅くまで外出させておくのはまずいですからね」
そう言った月読が何かを引っ張る動作をした。
次の瞬間、
「え? え?」
「これは、移動したのでしょうか?」
一登、義政、美脚の女神がこの場に現れた。
「……すごいな、月読先生のスーパー満月移動」
「……あの、本当にそういう名前やめてくれませんか? 身体から力が抜けてしまいます」
残念ながら月読は夏樹のネーミングセンスに満足できないようだった。
「――無事だったのね!」
自身に何が起きたのかわからず、ぽかん、としていた美脚の女神だったが、美脚の神と末の妹が無事であることを見つけてかけより涙を流す。
「月読先生、俺からも美脚の神様のことをお願いします」
「ええ。制限はつけさせていただきますが、悪いようにはしないと約束しましょう」
「よかった。万が一、美脚の神様をどうにかするようなら、俺は月読先生と戦わなきゃいけなかったよ」
「そこまでですか!?」
「そこまでだよ!」
夏樹の決意はさておき、他に新たな神々は近くにいない。
これで今夜のイベントはもう終わりだろう。
「美脚の神? は、私が預かります。今後の話と、枷をつけるので時間をもらいますね」
「お願いします」
「幸いというべきか、まだ害らしい害はなかったので、問題ありませんよ。むしろ、攻撃されたのが夏樹くんなんですが、気にしていないようですし」
「美脚の神様の蹴りは美しかった。蹴っていただけて光栄です!」
「……ほどほどに」
月読は苦笑いしながら指を鳴らす。
月読と美脚の神を光の円が包んだ。
「教師としては、このまま真っ直ぐ帰宅してくれることを願います」
「はい! あ、でもコンビニでアイスを」
「……そのくらいなら目を瞑りましょう」
「うっす!」
「では、明日学校で」
「はーい!」
元気よく返事をする夏樹に、美脚の神たちが声をかけた。
「由良夏樹くん! 君に、感謝を! 大きな借りができてしまった! 必ず返すと約束する!」
「気にしなくていいっすよー!」
「ありがとぅ、由良夏樹……本当に、ありがと」
「うっす!」
「あ、あの、助けてくださってありがとうございました」
「いえいえー!」
美脚の神が感謝を伝えると同時に、月読と共に消えた。
「――ふう。良い美脚だった」
「夏樹くん、ブレないなぁ!」
「夏樹さんらしいといえばらしいと思いますが……それにしても、美脚の神は強かったですね」
一登が夏樹に突っ込んでいる中、義政は眼鏡に月明かりを反射させて美脚の神の強さを思い返す。
「正直、やばかった。星槍さんいないのに殺し合ったら、ちょっとまずかったよね」
「夏樹くん対策って美脚だけじゃなくてマジで強かったってこと?」
「……多分」
「やれやれ。新たな神々というのは、わからないものですね。一見すると戦いとは無縁に思える神が強いとは……興味深いです」
「ま、とりあえず、今日のイベントは終わったはずだし、コンビニでアイス買って帰ろうぜ!」
夏樹たちは、コンビニでアイスを買って帰宅する。
眠かったはずが、シャワーを浴びたらすっきりしてしまい、アイスを堪能しながら三人でゲームをした。
最初に義政が寝落ちし、夏樹と一登も眠りについたのだった。
――由良夏樹のレベルがあがった。
「Ko jūs domājat《どういう意味ですか 》!?」
夢の中で、誰かの声が聞こえて夏樹は叫びながら起きた。