作品タイトル不明
86「美脚の神とかやばくね!?」②
「待ちたまえ、少年。あまり興奮するものではないよ」
「そ、そうよ。あまり大きな声出さないで」
「あ、はい。すみません」
美脚の神たちに嗜められ、一登は冷静さを取り戻す。
「安心してくれて構わないよ。少年が三原一登くんであることも、そちらの幼いが不思議な貫禄のある少年が神無義政くんであることも承知している」
「――っ」
「新たな神々も情報収集を頑張ったのだよ」
「その結果、私たちがやりたくもない任務をやらされているんだけどぉ」
美脚の神の言葉を拾った義政が問いかける。
「あなたたちは夏樹さんと戦うつもりはないと?」
「そうだね。戦いたくはなかった」
「ならば」
「だけどぉ! 戦わないといけないのよぉ!」
美脚の女神がヒステリックに叫ぶ。
どこか追い詰められている雰囲気さえある。
一登は義政と目配せする。
美脚の神たちに何か事情があるのではないかと考えたのだ。
異世界で数多の経験を培った一登と義政は、美脚の神たちから明確な殺意や敵意がないことを察していた。
だが、彼らから「戦う」という決意がひしひしと伝わってくる。
「何か事情でも」
「残念ながら、君たちと必要以上の会話をするつもりはないのだよ」
「ゆ、由良夏樹ぃ、私たち新たな神々の仲間になる? ならない? どっち!?」
美脚の女神が声を振るわせて問う。
だが、夏樹から返事はない。
「…………」
「……ちょっと!?」
「――ん?」
より大きな声を出されて、ようやく夏樹が美脚から目を離した。
「あっぶねぇ、小梅ちゃんと銀子さんの美脚チラを日頃経験している俺じゃなかったら、虜になっていたね!」
「……夏樹くん、十分すぎるほど虜になっていたと思うよ」
「ガン見でしたものね」
夏樹は一登と義政のツッコミに、ちょっとだけ苦い顔をするが、すぐに切り替える。
「俺は確かに美脚が好きな勇者だが、我慢強い勇者でもある!」
「……マモンさんみたいなこと言い出した」
「シャラップ! んで、美脚の神様が俺になんだって?」
夏樹は自然体で美脚の神たちに尋ねた。
もう美脚に目はいっていない。
彼らの顔をきちんと見ている。
「……この子、まったく話きいてないじゃないっ!」
「由良夏樹くん、君を仲間に迎えたい。報酬はいくつか用意してあるが、我々の美脚も好きにしていいと約束しよう」
「ふっ、勇者に誘惑とは片腹痛い!」
「……えー。さっきまで興味津々だったじゃん」
「一登くん!? 千手さんみたいにつっこまないで!?」
一登のジト目に夏樹がたじろぐ。
咳払いをして、仕切り直す。
「勇者は誘惑には屈しない!」
「そうか、残念だよ」
「俺を勧誘したければ、美脚百人連れてきやがれ!」
「……おや? それで構わないのかな?」
「え?」
「え?」
「え?」
美脚の神は、少し拍子抜けしたようだ。
「我々新たな神々と契約する人間、与する人間の中から選りすぐりの美脚を用意しよう。百人、でいいのだね?」