作品タイトル不明
85「美脚の神とかやばくね!?」①
夏樹は一登を制して前に出た。
「いるんだろ、出てこいよ」
河川敷の遊歩道に向かい、夏樹が声をかける。
すると、男女がひとりずつ闇夜から現れた。
「……よく私たちに気づいたね」
「うぅ、戦いなんてしたくないよぉ」
夏樹に向かい少し驚いた顔をして声をかけたのは、スマートながらに程よく筋肉がついた競泳水着を身につけた金髪を坊主にした青い瞳を持つ青年だった。
Vカットタイプの競泳水着に、白いTシャツを身につけ、足元はシャワーサンダルだ。
これからプールで泳ぐんですか、と問いたくなる格好だった。
もうひとりはなぜか半泣きしながら鼻を啜る女性だった。
青年と同じ二十歳ほど美女だ。
金髪を伸ばしポニーテールにした女性は、青年同様競泳水着を身につけて赤いTシャツを着て、シャワーサンダルを履いている。
肉体は細く、無駄を全て削ぎ落としたように引き締まっている。
――ふたりともびっくりするくらい美脚だった。
「と、とんでもねえ、美脚だぜ。美脚大天使の小梅ちゃんと同等、いや、それ以上。――お前たち、まさか美脚の神か!?」
「夏樹くん!? いくらなんでもそんな神様がいるわけがないでしょう!」
「――さすが、由良夏樹と言ったところか。察しの通り、私たちは美脚の神だ」
「本当に美脚の神だった!?」
想定外の出来事に、一登が叫んでいるが、夏樹はそれどころではない。
(や、やばい、なんと理想の美脚だ。男の方は、いつかこんな美脚になりたいと誰もが願う夢のような美脚だ。生まれ持った骨格はもちろんのこと、無駄のない脚線美。生まれ変わったらこんな美脚になりたい。女の方は――なんかえっちだ!)
美脚から目が離せない。
幼い頃、美脚の女性に出会ったときのことが脳裏に浮かぶ。
瞬きすることさえ躊躇ってしまう。
「少年たちにご挨拶をしよう。私たちは新たな神々に属する美脚の神」
「ううっ、私たちの任務は由良夏樹の勧誘、もしくは始末よぉ。でも戦いなんてしたくないから、仲間になってくれると嬉しいわ」
美脚から目を離すことができない夏樹の代わりに一登が驚いた。
「なんだって!?」
「おそらく、夏樹さんの強さを脅威に感じた新たな神々が……夏樹さん対策として美脚の神を送り込んできたのでしょう」
「ちょとまって、それって夏樹くんの美脚好きが敵勢力に知られちゃってるってことじゃないの!?」
「間違いなく伝わってますね」
やれやれ、と義政が肩をすくめた。
「……夏樹くん、確かに前にPCの隠しフォルダーを覗いた時に脚しか出てこないなって思ったけど! 思ったけども!」
「安心してください、一登さん。夏樹さんも足だけではなく、競泳水着にも興味津々のようです。思春期ですね」
「男の子だからそういうことが好きなのは俺だってわかるし否定しないけど、敵サイドに対策立てられてピンポイントで美脚の神が送られてくるって、安心できる状況じゃないでしょう!?」