作品タイトル不明
間話「トラウマなまもんまもんじゃね?」
――青森某所。
「――っ、この気配は」
畑で野菜の成長を確認していたさまたんは、顔を上げた。
「これはまた面倒臭いのが向島市に来たようだな」
「さまたん様、さまたん様、緊急事態でまもんまもん!」
「なんだ、マモンも気づいたのか」
「まもん! ツチノコ用に張った罠から餌だけが綺麗に抜き取られていまもんまもん!」
「……いや、そうじゃねえから。あと、ツチノコなんて冷静になったらいないってわかるからさ。この間も、お前たちが酔っ払っていただけだよ」
「何か」に気づいたさまたんに対し、マモンは違うことで騒いでいた。
はぁ、と大きく嘆息する。
「そういえば、太一郎くんの娘の小梅ちゃんを名ばかりの婚約者として利用しようとしたマモンくん」
「……急になにをまもんまもんと過去のことを」
「まだ一ヶ月も経ってねえのに過去とか言うんじゃねえよ。まあ、それはさておき、なんで小梅ちゃんだったの?」
「このマモン、強欲な魔族ですが優しい魔族でもありまもんまもん。本当の意味で利用できない相手を選んだのでまもんまもん」
「どういうこと?」
「ルシファー・小梅は本来の自分を否定しているので力をすべて使うことができまもんまもん。天使の力だけでも十分すぎるほど強いまもんではありますが、否定している力が足をひっぱりまもんまもんしているので、このマモンの方が強くありまもんまもん。正直、まもんまもんなマモンとしては小梅のようなまもんまもんには同情してもいるのです」
「最後よくわかんない!」
いくら「まもんまもん」に精通するさまたんであっても、勢いよく「まもんまもん」を連呼されても意味を汲み取ることは困難だ。
「ていうか、長女の花子はなんでスルーだったんだ? って、おい、マモン……めっちゃガクブルに震えてるじゃねえか。どうしたの!?」
「や、奴はやばいでまもんまもん」
「そんなにやばかったっけ?」
「このマモンの知るルシファー・花子は文学少女なまもんまもんでしたが、数年前に利用しようと声をかけたところ……年収二千万以下なら声をかけるなと言われ、泣きまもんまもん」
「あれー? そんなこと言う子だったっけ?」
サマエルの記憶の中の花子像とだいぶかけ離れている。
「当時のマモンは金や資産はかなりまもんまもんでしたが、年収という意味ではありまもんまもんでした。そのことを素直に伝えると、舌打ちをされて彼女は結婚相談所に向かいました。マモンはショックでまもんまもんと膝から崩れ落ち、三日三晩泣きました」
「……メンタル弱いな。よく太一郎くんに叛逆しようとしたな」
「しかし、なぜさまたん様はルシファー・花子のことを急にまもんまもんと尋ねてきたのでしょうか? ――っ、まさかさまたん様も結婚相談所に!?」
「いかねーよ! そうじゃなくてさ、向島市に花子ちゃんが降り立ったぞ」
「――まもん!?」
「生まれたての子鹿のようだな。どれだけ花子ちゃんにトラウマ与えられるんだよ」
「し、しばらく向島市には近づいてはいけまもんまもんですね」
「その前に、お前は青森から出ちゃいけないんだけどね!」
(それにしても、穏やかでいい子だった花子ちゃんに何があったんだか)
――青森はちょっと平和だった。