作品タイトル不明
75「さすがに変わりすぎじゃね?」②
「え? なにこの文学美少女!」
「……大正ロマンな感じがする!」
小梅が掲げた写真に、思春期二人が食いついた。
セピア色の写真に映る小梅は今と服装こそ違く、袴をはいていた。とてもよく似合っている。
そんな小梅の隣で柔らかく微笑むのは、小梅と似た雰囲気を持ちながら優しく穏やかな三つ編みと大きな眼鏡をかけた美少女だった。
「え? え? え?」
「うん? えっと、あれ?」
夏樹と一登は、小梅の持つ写真に写る文学少女と花子に視線を行き来させる。
何度か繰り返したあと、ふたりは顔を見合わせて、頷いた。
そして、花子に向かって謝罪する。
「――申し訳ございませんでした!」
「――ごめんなさい!」
「何の謝罪!? ねえ、今、何に謝られたの!?」
急に謝罪された花子は困惑気味だが、文学少女が婚活モンスターになってしまった事実に夏樹たちも困惑だ。
どういうきっかけで、変わり果ててしまったのか、気になると同時に関わりたくない。
「……あの、小梅さん?」
「なんじゃ、銀子」
「さっきからお姉さんはいないと言っているっすけど、ちゃっかり夏樹くんとのイチャイチャ写真を送ってるじゃないっすか!」
「俺様のおねえちゃんは死んだんじゃ!」
「いや、そこにいるっすよ! ピンピンしているっすよ!」
「あれは平成のことじゃった」
「説明始めちゃったっす!」
「素敵な文学少女なお姉ちゃんの元に俺様は定期的に会いに来ていたんじゃ。ついでにお小遣いをせびりにのう!」
「……まあ、末っ子らしくていいすけど」
「じゃが、ある日! お姉ちゃんは死んでしまったんじゃ! 以来、俺様は、亡きお姉ちゃんのSNSにメッセージを送っておったんじゃが、まさかこのよくわからん女が覗き見ておったとは思わんかった! アカウント乗っ取りじゃ! 成敗してくれるわ!」
小梅の独白に、銀子は頭痛を覚えたようにこめかみを揉んだ。
夏樹と一登、そして義政も「あー」という感じになった。
察するに、気づいたら変わり果ててしまった姉を姉と受け入れられず、小梅は花子を死んだことにしたのだろう。
いろいろツッコミどころはあるが、少なくとも小梅の中で今の花子は姉じゃないようだ。
「……本当っに失礼な妹ね! 私のどこが変わったって言うのよ! 今も読書好きよ! ま、まあ、逆ハーものしかよまないけどね!」
「黙れ偽物ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「本物よぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
拳を握りしめた姉妹がお互いに殴りかかろうとした。
だが、その間に義政少年が割って入った。
「――落ち着きましょう」
両者の拳が義政に触れるか触れないかの場所で止まる。
お互いに最低限の理性は残っているようだ。
夏樹と一登は、急な義政の行動に心臓をバクバクさせてしまう。
「ちょっと、危ないでしょう!」
「俺様のルシファーパンチを喰らったら、いくら義政とはいえ爆散じゃぞ!?」
「ふっ、僕は暴力には屈しません」
きりっ、とした表情を浮かべて眼鏡をいつもより多めにくいくいする義政に、花子と小梅が気押される。
「話をしましょう。会話ができるのであれば、やはり言葉で解決したいです。暴力はそのあとでいいでしょう」
「……なっちゃん、耳が痛いな!」
義政少年は、バトルではなく言葉の解決を提案する。
他意はないのだろうが、夏樹は耳が痛かった。
バトルが止まったことに水無月茅が胸を撫で下ろす。
「征四郎おじさんの名にかけて、この場を仕切らせていただきます」
「征四郎おじさんって誰!?」
征四郎を知らない花子が叫んだが、それは仕方がないことだった。