作品タイトル不明
74「さすがに変わりすぎじゃね?」①
――結論から言うと、夏樹が我慢できずにジムに張られている結界ごと扉を蹴り破った。
「ギャラクシー警察だ! 手を頭の上に! 余計なものに触るようなら、撃つぞ!」
「……撃つって、夏樹くん何も持ってないじゃん」
一登のツッコミを無視しつつ、夏樹はジムの中に立てこもる天使ルシファー・花子を見つけた。
「――なるほど」
小梅と雰囲気と魔力は似ているが、微妙に違う。
(心なしか、天使の花子さんのほうが小梅ちゃんより力が強い気がするけど、小梅ちゃんもなんらかの理由から抑えているしなぁ)
「な、なによ、この子たちは……って、親父!」
「……長女にも親父扱いのサタンさんは号泣しても許されると思うんだけど、どう思う?」
「泣いていいと思うよ」
サタンが悲しそうな顔をするが、花子は知ったことではないと吠えた。
「――そう、そうなのね。私の美貌に当てられて、同人誌みたいに酷いことするんでしょう!」
「……いや、普通に無理っす」
「なんですって!?」
「普通に嫌!」
「この」
「美脚でもないし」
「はぁ!?」
「さっきからきーきーうるさいし」
「このくそ」
「なんかきもい」
「このくそがきぃいいいいいいいいいいいいいいい!」
髪を振り乱して飛びかかってくる花子は、天使というよりも怨霊だった。
しかし、夏樹も勇者だ。
このくらいでは怯えない。
「――魔王バリアー!」
「ぎゃぁああああああああ! 加齢臭がぁああああああああ!」
「――酷すぎる!」
サタンが手で顔を覆って泣き始めた。
「……マジカオスっすね。小梅さん、あなたのお姉さんなんっすからなんとかしてくれませんっすかね?」
「――俺様の、姉?」
「まだそこで脳がフリーズしているっすか!? チョップしたら治りますっすかね!?」
「俺様の頭は一昔前のテレビか!」
銀子のチョップが小梅に何度も繰り出される。
しかし、小梅の記憶は花子を思い出せずにいた。
「……小梅? 小梅!? こぉおおおおおおおおおおおおおおおうぅううううううううううめぇえええええええええええええええっ!」
「こわっ! この人こわっ!」
サタンを盾にしていた夏樹が、鬼の形相で手を伸ばして掴もうとしてくる花子が吠えたことでびくりと怯える。
花子は動きを止めると、ようやく小梅の姿を見つけて呪いのごとく叫んだ。
「お前がぁあああああああああああ! お前が年下の可愛らしい少年とイチャラブ写真を送ってくるからぁあああああああああ!」
「どっせい!」
「ぼげっ!?」
「馴れ馴れしく俺様の名前を呼ぶんでない。つーか、本当に誰じゃおどれは!?」
小梅に殴られた鼻を抑えた花子は、操り人形のような歪な立ち上がり方をすると、小梅を睨んだ。
「あんたの姉の、ルシファー家長女の花子よぉおおおおおおおおおおおお! なに忘れてんのよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「いや、マジで意味がわからんのじゃが……俺様のお姉ちゃんはこやつじゃぞ?」
そう言って小梅が懐から写真を一枚取り出すと、そこには元気いっぱいにピースサインをする小梅と一緒に、長い三つ編みの大きな眼鏡をかけた穏やかそうな文学少女が一緒に写っていた。
「これが俺様のお姉ちゃん、花子じゃ! うちのお姉ちゃんは、そんなイケイケな格好して年収の高い男探したりせんわい! おどれは誰じゃぁああああああああああ!」